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楽しげで暖かみのある演奏で「らしくない」ながら良作

2011-06-22 08:24:39 | 音盤ノート
Steve Kuhn Quartet "Last Year's Waltz: Live in New York" ECM, 1982.

  ジャズ。1981年の録音で、ニューヨークのジャズクラブFat Tuesdayでのライブ。カルテットのメンバーはSteve Kuhn (p), Sheila Jordan (vo), Harvie Swartz (b), Bob Moses (ds)で、"Playground"(参考)と同じである。

  このアルバムでは、静謐で張りつめた雰囲気のある"Playground"とはうって変わって、楽しげでリラックスした演奏を聴かせる。全編でキューンは抑制する気を見せずにピアノを弾きまくっている。A面では、最初の二曲でオリジナルを演奏した後、3曲目でシーラ・ジョーダンがふざけはじめ、4曲目のスタンダード"I Remember You"でノリの良い4ビートを聴かせる。B面ではオリジナルのバラードで客席を静かにした途中から、スタンダードの"Old Folks"のフレーズに移行し、すぐさまモンク作の"Well You Needn't"が演奏として完結しないままに繰り出される。直後に4ビートでチャーリー・パーカー作"Confirmation"が演奏され、その上をジョーダンが酔っぱらいのようになってスキャットする。最後のSteve Swallow作"The City of Dallas"では「ディナーが美味しいといいな」のフレーズをメンバー全員で合唱である。このように、ECM作品として例をみないほどユーモラスでくだけており、CD化されずに放置されたままになっていることに納得がいくだろう。

  そのようなわけで、キューンのキャリアにおいてもレーベルのカタログにおいても異色作であるが、米国的なジャズの典型を記録した聴く価値のある作品である。今ではプレミアが付くような価格でしか入手できないのが残念だが。
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