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村八分を恐れて人は意見を変えるという、ネガティヴ動機からのバンドワゴン効果論

2013-11-08 08:57:50 | 読書ノート
E.ノエル=ノイマン『沈黙の螺旋理論:世論形成過程の社会心理学 / 改訂復刻版』池田謙一, 安野智子訳, 北大路書房, 2013.

  メディア論。著者は世論調査機関を主宰していたドイツ人である。原著初版は1980年刊でその日本語訳が1988年刊、1993年の原著第2版の邦訳が1997年に発行されていたが、長らく品切れ状態だった。今年になっての出版社を代えての再刊は、おそらくもともとの訳書版元のブレーン出版が2011年に倒産して版権が移ったためだろう。

  内容についてはメディアの効果研究に関連づけられてよく言及されているが、読んでみたらけっこうまとまっていない印象である。冒頭では、選挙における投票先について、被験者が支持する党と、世間が支持していると「被験者が考える」党について尋ねた結果をパネルデータにまとめ、後者についての認識が実際の投票数に近づいてゆくことを発見する。このようないくつかの調査から、世論形成過程においては、声の大きい主張が反対者を沈黙させてその支持者に変えてゆくという現象が起こるのだという仮説を立てる。その後は、世論概念を定義するために古典に分け入ったり、調査に戻ったりという記述の流れで、「考えながら書いた」のがありありとうかがえる。難解というわけではないが、読み難い。

  そもそも「他人に影響されて意見を変える」という現象は特に驚くようなことではないと僕なんかは感じるのだが、個人主義が至上価値であるドイツではそうではないのだろう。向こうにおける本書の位置付けは、みんな口では「他人のことには関心がない」と言ってるけど実際は影響されてるのだよ、とわざわざ指摘するようなものか。
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