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緩くけだるい雰囲気の中のかすかな緊張感

2011-06-10 10:31:00 | 音盤ノート
Jon Hassell / Brian Eno "Fourth World Vol. 1 ; Possible Musics" EG, 1980.

  アンビエント。非西洋の民族音楽を消化した瞑想音楽とでも言おうか。ジョン・ハッセルは米国1937年生まれのトランぺッターで、シュトックハウゼンに師事した由緒正しい現代音楽家である。ミニマルミュージックを世に知らしめたレコードであるTerry Riley "In C" (CBS, 1968)の録音にもその名が見える。このアルバムは三枚目のリーダー作となる。

  音楽は、控え目で激しさの無いリズム隊──Nana Vasconcelosらによる──と静かなシンセ音がループする中、尺八のように音を電気的に歪めたトランペットがうねうねとソロを取るというもの。ドラマチックに盛り上がったり、メロディが琴線に触れる瞬間はまったく無い。けだるい雰囲気の中で、トランペットが動物の鳴き声や虫の羽音のようにまとわりついて聴こえてくるだけである。全体としては弛緩しているのだが、かすかな緊張感もあり、そこが奇妙な魅力となっている。

  ハッセルの音楽は、登場してしばらくの間、需要も少なくフォロワーもいないような孤高の音楽スタイルだった。ところが、1990年代以降、Nils Petter MolvaerやArve Henriksenといったエレクトロニクスを採り入れた北欧のジャズ・トランペッターにそのあからさまな影響がうかがえるようになっている。今でも聴く人を選ぶ音楽だが。
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