ストロボ(新潮文庫)
★★★★’:75点
この小説は、主人公であるカメラマン・喜多川が50歳のときの物語である第五章から始まり、以降、第四章(42歳)、第三章(37歳)・・・と過去に遡っていくスタイルとなっているのがユニークだった。小説として全くの新趣向ということはないと思うが、物語に深みと余韻を与えることに成功していたのではないか。
第五章 遺影 50歳
第四章 暗室 42歳
第三章 ストロボ 37歳
第二章 一瞬 31歳
第一章 卒業写真 22歳
読んだ直後は70点としたのだが、実はこの物語がすべて主人公と、ある女性との人生を振り返るドラマになっていたとの著者の「あとがき」を読んで5点アップとした。大きな秘密ではないが、なかなか巧い描き方。そして、各章には更に小さな謎が設定されていたとのこと。
男女の機微などを描くこの手の小説はあまり読まないのだが、作者のうまさもあって結構面白く読めたと思う。ただ、読了してから20日以上経っているので、かなり忘却の彼方なのが残念だった。
全編を通じて、魅力的な女性が次々と(でもないか・・・数年おきに)現れるのですが、カメラマンという職業自体、そういうことが多い・起きやすいのですかねえ。ええなあ。。。一介のサラリーマンとして若干羨望のまなざしで読んでいました。これは蛇足。
***************** Amazonより *****************
内容(「BOOK」データベースより)
走った。ひたすらに走りつづけた。いつしか写真家としてのキャリアと名声を手にしていた。情熱あふれた時代が過ぎ去った今、喜多川は記憶のフィルムを、ゆっくり巻き戻す。愛しあった女性カメラマンを失った40代。先輩たちと腕を競っていた30代。病床の少女の撮影で成長を遂げた20代。そして、学生時代と決別したあの日。夢を追いかけた季節が、胸を焦がす思いとともに、甦る。
内容(「MARC」データベースより)
キャリアも積んだ。名声も得た。だが、俺に何が残されたというのか。過ぎ去った時、遠い出会い、苦い別れ。閃光が灼きつけたせつない記憶。50歳のカメラマン喜多川の脳裏によみがえる熱き日々を描く連作小説。
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◎参考ブログ
苗坊さんの”苗坊の読書日記”