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映画「武士の一分」

2007-01-08 13:33:00 | 映画

Bushino1 映画「武士の一分」
★★★★☆’:85点

山田洋次監督の藤沢周平・時代劇三部作のフィナーレを飾る映画です。正月に実家に帰った際、母や姉たちが観て良かったと聞き、道頓堀の角座へ出かけました。

(「隠し剣 鬼の爪」の感想はこちら)

原作は、剣客小説(短編集)・「隠し剣 秋風抄」に収録されている「盲目剣 谺返し(こだまがえし)」です。以前原作を読んだときは、全9編中4、5番目の出来と評価していました。映画を観てから改めて原作を再読したのですが、映画の方が、より感動的になっていたと思います。特にラストシーンは原作を読んでいない方でもまあ想像できる幕切れなのですが、映画での描き方の方が素直で素晴らしいと思いました。
また、所々に挿入されたクスッと笑えるシーン、つがいの文鳥、妻・加世の襷といった原作にないモチーフなども印象的で、見事な映画化だと思います。

母や姉たちの話では、妻・加世役の檀れい、老中間・徳平役の笹野高史が特に良かったとのことでした。元宝塚・娘役の檀れいさん。中国公演で”楊貴妃の再来”と話題になったそうですが、いやー、綺麗でした。絶世の美女。こんな女優さんがおられたのですね。知りませんでした。

しかし、妻・加世は美しいだけはでなく、働きものです。夫の冗談に笑い、徳平とも心が通いあい、決して楽ではないであろう暮らしの中で夫を助けて精一杯生きています。夫を想う気持ちにあふれたその姿が美しい。また、芯の強さもあります。
そんな彼女が、無責任な親類の勧めもあってやむなくとった行動。夫のためとはいえ、そこから始まる悲劇。夫に言えない隠し事をしている”背徳の美”もありました。

前二作では神戸浩が演じた中間役。この人も絶妙な味わいがあったのですが、徳平役の笹野高史も見事でした。新之丞を幼い頃から知っており、主従の間柄とは言え二人の間にあるユーモア感もいい感じです。果たし合いのシーンでは、自分は何もできないものの鉢巻きを締め、新之丞の勝利を願う気持ちがよく表れていました。

私が最も驚いたのは、悪役・憎まれ役の上司・島田藤弥役を演じた坂東三津五郎です。顔立ち、姿勢、立ち振る舞い、話し方などに上級武士としての貫禄が感じられ、見事でした。さすが歌舞伎役者さんです。悪役なのですが、気品あり。
てっきり緒形拳が色好きの憎まれ役を演じるものとばかり思っていましたが、剣の師匠役とは!

パンフを読んで、今回はこれまでと違って自然描写や風景描写が殆どなかったことに気づきました。確かに、その分、画面にちょっと明るさや伸びやかさが欠けた面はあるかもしれません。

えー、主演の木村拓哉は・・・目の表情などが良かったと思います。殺陣も見事。妻や徳平にかける冗談の言葉なども面白かったです。でも私は脇を固める役者さんの方に惹かれました。桃井かおりや、おなじみの小林稔侍も良かったですし。

参考ブログ(追加):アイリスさんの”To be continued.”
            柚布さんの”まろ茶らいふる”