全く予備知識なしで読んだのだが、不思議な味わいの小説だった。
刑事の九野が出てきたときは、うん?刑事物か?と思ったのだが、読み進むうちに、どうもそうではないと感じた。この小説はどういったジャンルに含められるのだろうか?ミステリーでも犯罪小説でもないような気がしたのだが。
平凡ながらも幸福だった家庭がとある事件をきっかけに少しずつ崩壊していく物語。家族の交通事故の後、神経症にかかり不眠症に悩まされてきた刑事が実は既に壊れていて(?)、最後に救われる(?)物語。この2つの物語がクロスしていたということかな?
夫(及川茂則)は放火事件の後、何もせずに何もできずに堕ちていき、妻(及川恭子)はのたうちまわって堕ちていく。男はもろくて弱く、女は強くたくましいということか。しかし、それにも限界があり、更なる事件へと繋がっていく・・・。
夫に愛想をつかした妻が放つ言葉は痛烈で、言葉つきまでがコロッと変わったのには驚いた。
「~するんだよ!」「耐えろって言ってるの」「あんた死ねば」
あー、おっとろしー(ああ恐ろしい)。
読んでいる最中、九野の義母はちょっと不思議な感じの人物だなあと思っていたが・・・。ミステリアスな味わいもありましたね。「おぬし」というえらく古風な表現を使う同僚の佐伯。若い刑事・井上。九野のことを気遣い、助け、かばう彼らも印象的だった。
好きなタイプの小説ではないのだが、なかなか凄い作品だったとも言える。
◎参考ブログ
本を読もう(2007-04-27追加)