ひろの東本西走!?

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はぐれ牡丹(山本一力)

2005-05-09 20:45:00 | 17:や行の作家
hagurebotanはぐれ牡丹(角川春樹事務所)
★★★☆~★★★★’:70点~75点

私自身、5冊目の山本作品です。
これまでに浸ってきた山本ワールドとはちょっと雰囲気が異なっていました。

大店の跡取り娘でありながら、好きな人と一緒になるために家を捨て、股引をはいて野菜の棒手振りまでやってしまう主人公の一乃。元気で明るく、考えついたら即行動するおきゃんな妻・一乃は新キャラでした。夫・鉄幹とのやりとりも面白く、夫婦漫才といった雰囲気も。
全体的には良い意味で明るくライト感覚、言い換えればやや深みに乏しかったでしょうか。
非常に読みやすく、あっという間(2時間半くらい)に読み終えてしまいましたが、個人的にはもうちょっとゆったりとした”しみじみ系”が好きですね(^_^)
好きなシーンを一行一行かみしめるようにして読むのが山本ワールドでの至福の時間ですし・・・。

物語の序盤、墓前で夫が小紋柄を着た女と並んでひざまずいているのを見て涙をこぼした一乃。
おおっ、山本ワールドの始まり始まりと期待したのですが・・・。
分厚くなっても良いから、もう少し各登場人物について書き込んで欲しかったなあというのが本音です。
それと人情物などの場合、悪役・敵役・憎まれ役に凄い奴がいるとぐっと盛り上がるのですが、その点でも平兵衛や寅吉は物足りなかったです。もっともっと悪い奴らでないとね。
花火職人・松次郎はgood!
季節はずれの花火を見つめていたお加寿も良かったです。

まあ今回は、一力さんがこのようなタッチの小説も書けるということで良い方に評価しましょう。
直木賞作家にえらそうなことは言えないのですが(^_^;
でも80点はつけづらいな。

そうそう、贋金作りの話は「損料屋喜八郎始末控え」にも出てきたはずです。
内容的にも似通った箇所があり、多少気になりました。