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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

活字中毒養成ギプス(ぼくらはカルチャー探偵団編)

2007-04-18 23:59:00 | 本と雑誌

活字中毒養成ギプス―ジャンル別文庫本ベスト500(角川文庫)
★★★☆:70点

1988年に発行された安原顕氏プロデュースのガイド本です。はっきり言ってめちゃくちゃレベルが高いです。何せ、冒頭の対談が浅田彰×高橋源一郎の「新教養主義のススメ-失われた文庫本を求めて」ですから。と言っても、ここでは哲学書や思想書といったカタイ本だけではなくてSFなども含まれているのですが、これまでに私が読んだ本と全くマッチしません。まあ、かなり古い本も含まれているので、手にする機会がなかったものもあるでしょうけれど。

対談に続く各ジャンル・ベスト本紹介の各ライターの中には、私が名前すら知らない方もおられますが、なかなか錚々たるメンバーのようです(私が無知なだけ?)。ジャンルと執筆者は下記の通り。

 ①SF・ファンタジー・ベスト50     風間賢二
 ②ミステリー・ベスト50         宮脇孝雄
 ③ラヴ・ロマンス(外国編)ベスト44  池澤夏樹
 ④ラヴ・ロマンス(日本編)ベスト50  関井光男
 ⑤思想書・ベスト50           矢代梓
 ⑥ノンフィクション・ベスト50       鈴木明
 ⑦ヴィジュアル本・ベスト50       飯沢耕太郎
 ⑧グルメの本・ベスト23          玉村豊男
 ⑨紀行文・ベスト20           高田宏
 ⑩ノン・ジャンル・ベスト40       田口賢司
 ⑪ノン・ジャンル・ベスト50       武藤康史
 ⑫夢の文庫本               安原顕

約500冊の本が紹介されているのですが、私が明らかに読んだことがあるのは何と下記の16冊だけでした。これはこれで凄い!?思想書なんて読もうと思ったことすらないですね。①のSF・ファンタジーがゼロとは自分でもちょっと意外でした。原作は読んでいないけど映画になったものを見たとかは幾つかありましたが・・・。

 ②で
   エラリー・クイーン「Yの悲劇」
   トニー・ケンリック「スカイジャック」
   ジョン・ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」
   フレデリック・フォーサイス「オデッサ・ファイル」
 ③で 
   フランソワーズ・サガン「悲しみよ こんにちは」
 ④で
   夏目漱石「それから」
   川端康成「雪国」
   石坂洋次郎「陽のあたる坂道」
 ⑤で
   「歎異抄」 ※高校のときに倫理の授業で読まざるを得なかった・・・。
 ⑥で
   イザヤ・ベンダサン「日本人とユダヤ人」
 ⑦で
   東京建築探偵団「建築探偵術入門」
 ⑨で
   深田久弥「日本百名山」
   河口慧海「チベット旅行記」
   北杜夫「どくとるマンボウ航海記」
   ウィンパー「アルプス登攀記」
 ⑪で
   武者小路実篤「友情」

最近は、もっぱら小説、建築・まち歩き関連本、実用書・教養書(主に新書で)しか読んでいないのですが、もうちょっと読書の幅は広げてもいいかもです。その意味で良い刺激になりました。でも、読書予定リストには既に数十冊がズラーッと並んでいるやけどなあ。。。


ジェニーの肖像(ロバート・ネイサン)

2007-04-16 23:57:30 | 本と雑誌

Jenny1 ジェニーの肖像(ハヤカワ文庫)
★★★★’:75点

※表紙の画像は創元文庫版のもの

【注意:以下、ネタバレあり】

NowReadingの他の本「鳥類学者のファンタジア」(奥泉光)を読んでいる最中にさっと読んだので、ちょっと印象が散漫になったのが残念でしたが、イーベンに追いつこうとした(?)ジェニーの成長と一途な想いが哀しく痛々しくもありました。「わたしが大きくなるまで、あなたが待っててくれますようにと願うの。でも、きっとだめね」少女は答えた。

”時を超えた恋愛物語”であり、その出会い・再会の仕方や時の超え方が不思議なお話でした。北村薫の「リセット」もちょっとこれと似たような感じでしょうか。美しく楽しいけれど哀しさのあるピクニックシーンが印象的。

物語の途中で「モーリタニア号」という言葉が出てきたときに、ふと「タイタニック号」のことが浮かんできて、ジェニーは悲劇に巻き込まれるのでは?と考えたので、ラスト近くの事件のインパクトが私にはやや弱かったのも残念でした。また、もうちょっとボリュームがあっても良かったかなと思いました。詩情あふれる素晴らしいラブ・ファンタジーですが、そういう理由もあって点数は75点とやや辛目です。

”そらさん”は偕成社文庫版を読まれたそうで、古めかしい翻訳が良かったとのことですす。私はハヤカワ文庫版(ほぼ同時期)ですが、何となく訳や表現の古っぽさに違和感を感じたので(決して悪いのではないのですが・・・)新訳の創元文庫版も読んでみたいと思いました。

************************ ハヤカワ文庫版ブックカバー裏より ************************

世界中が不況にあえぐ1938年の冬。画家イーベンは、その日も買い手のつかなかった絵をかかえ、夕暮れのセントラル・パークを歩いていた。ふと、石けりをしている少女に目を止めた彼は、少女の不思議な美しさに魅せられた。少女の名前はジェニー、奇妙な歌を口ずさみながら闇の中へ消えてしまった・・・。
幻想的なリスムのある文体で、空想のおもむくままに描いた美しい愛の詩情!アメリカ文壇に、その特異な文体、鮮明なイメージで精彩を添えるネイサンの不朽の名作!

************************************************************************

  このセントラル・パークでの出会いが実に印象的。
  セントラル・パークはよく映画や小説の舞台になりますが、それにふさわしい
  佇まいなんでしょうね。ハヤカワ文庫版の表紙画は、ここでのジェニーの
  後ろ姿が描かれています。
  ところが、図書館の管理用に貼られたバーコードがこのジェニーの姿に
  重なって足元が見えない・・・。
  くそーっ、剥がしたいなあ。
  あかん、あかん。

************************ Amazonより ************************

内容(「BOOK」データベースより)
1938年、冬のニューヨーク。貧しい青年画家イーベンは、夕暮れの公園で、一人の少女に出会った。数日後に再会したとき、彼女ジェニーはなぜか、数年を経たかのように成長していた。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋が始まる…詩人ネイサンの傑作ファンタジイ。

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◎参考ブログ:

  そらさんの”日だまりで読書”


読書の腕前(岡崎武志)

2007-03-29 23:20:00 | 本と雑誌

Dokusyoudemae1 読書の腕前(光文社新書)
★★★★☆:90(~85)点

同年代の著者のことを全く知らず、書名から、よくある読書関連本・読書啓蒙本の1つだろうなとあまり期待せずに読み始めてビックリ!素晴らしい本ですよ、これは。

特に第一章「本は積んで、破って、歩きながら読むもの」が秀逸。他の人の言葉や他の本からの引用が多いのですが、読書の本質、それが持つ底力のようなものがいっぱい綴られており、本を読むことに誇りを持つ勇気すら与えてくれます。

【以下、引用部が多く、かなり内容に触れています】

  北上次郎  「本というのは即効性がない。”非常に効き目が遅い”メディア」
          「本というものはもともと不便なもの。”読む”という意志も必要」
  佐野眞一  「僕は本というものは、時間の流れを一瞬で止めてみせることが
           できるメディアだと思うんです」
  色川武大  「書物を読むことで得る大切な収穫のひとつは、他者を知ること
           だと思います」
  遠藤周作  「読書の楽しみのひとつは、私にとってこの他人の人生を生きる
           こと、他人になれる悦びかもしれない」
  谷川俊太郎 「楽しむことのできぬ精神はひよわだ。楽しむことを許さない文化は
           未熟だ。詩や文学を楽しめぬところに、今の私たちの現実生活の
           楽しみ方の底の浅さも表れていると思う」
          「楽しみはもっと孤独なものであろう」
  中島らも  「”教養”とはつまるところ”自分ひとりでも時間をつぶせる”という
          ことだ。それは一朝一夕にできることではない。働き蜂たちの
          最後の闘いは、膨大な時間との孤独な闘いである」

孤独なんかこわくない。「読書の楽しみ」を知っている者なら、いつだって胸を張って言えるはずだ。

本を読む時間がない、と言う人は多いが、ウソだね。その気になれば、ちょっとした時間のすき間を利用して、いくらでも読めるものなのである。・・・要は、ほんとうに本が読みたいかどうか、なのだ。

まともに本とつきあって、コクのある読書生活を送ろうと思ったら、「ツン読」は避けられない。と、いうより、それしかありえないのだ。読んでいないのなら、それは「死蔵」である。持っていないのと同じ、と思う人もいるかもしれない。ところが、現物があるとないとでは、月と地球ほどの距離の開きがあるのだ。
買っておくと、不思議なもので、やがて読むようになるものである。気にかかる本が新しく身辺に置かれるのは、環境に新しい要素が現れることである。私たちの心に新しい刺激が加えられるということである。

井上ひさし「買ってすぐに読まないでも、机の横に置いておけばいいんです。不思議なことに、ツンドクをしておくと、自然にわかってくるんです。「これ読まなくていいや」とか、「これは急いで読まなきゃいけないな」とか・・・。

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いやはや、素晴らしい&凄いのひとことです。
本を読みたい人は、忙しくても読みます。というか、忙しいときほど細切れの少ない時間を利用してむさぼるように本を読みますね。私もそうです。地下鉄・御堂筋線の電車待ちの時間なんて1、2分なのですが、その時でも文庫や新書を開いてしまいます。

スポーツも勉強も苦手で気が弱く、なにごとにも自信のなかった著者。しかし、小学校と中学校で先生の言葉に大いに勇気づけられ、「文章を読む」ことに関しては人より長けていることを意識するようになり、更には書くことを職業に選ぶようになったそうです。

  中村先生:「このクラスに作文の天才がいます」
  山田先生:「この子が岡崎くん。この子がこの作文を書いたの」
         「あんた、絶対に文章の書ける人やから、絶対新聞部に入り」
  上野先生:「岡崎くん、あんたが班ノートに書いたあの詩(萩原朔太郎)、
          タイトルは何やったけかな?」(先生から自宅にかかってきた電話)

みんな、ええ先生やなあ。子供のことをよく見つめ、長所を伸ばしてやるのが教師の最大の務めだと思います。

それにしても、世間一般で読書人・知識人・教養人と言われる人たちの読書のレベル・量・ジャンルの広さはとてつもなく、小説や建築関連本、趣味・実用書主体の私など足下にも及びませんね。
が、本好きなことは自信ありです。そして、読書が好きなことはもっと自信を持っていいですね。

第七章「蔵書の中から”蔵出し”おすすめ本」も絶品です。

 ※ところが何と、目次では第七章が第六章と誤って大きく印字されています。
   こんなミスはちょっと珍しいですね。

ここで紹介されていた「旅の終わりは個室寝台車」(宮脇俊三)を図書館で早速借りて読んでいますが、とてつもなく面白いです。

さあ、「書を捨てよ、町へ出よう」 じゃなくて、「書を持って、町へ出よう!」


近代化遺産探訪―知られざる明治・大正・昭和(清水慶一)

2007-03-27 23:13:01 | 本と雑誌

Kindaikaisan1 近代化遺産探訪―知られざる明治・大正・昭和(エクスナレッジ)
★★★★☆:90点

文・清水慶一、写真・清水襄

古い建築・集落・遺構を探して北へ、南へ。
机上の研究だけでは分からない地元の声を聞きながら、建物をめぐる社会背景から地域性、時代性まで独自の視点で探る新しい”多角的近代建築入門”(帯から)

雑誌『建築知識』連載の単行本化だそうです。
近代化遺産となっていますが、産業遺産や土木遺産は比較的少な目で建築の比重が多いように思います。また、カラー写真満載なのですが、文章も多めで結構ズッシリです。私はまだ写真をざっと見ただけですが(これはいつものこと)、近代建築関係の本などであまり採り上げられない建物も多いですね。写真のアングルもなかなか新鮮に感じました。

そうそう、大阪関係では綿業会館や大阪倶楽部、旧阪急梅田駅コンコース、浜寺公園駅舎も出てきます。

2800円は多少高めの値段設定ですが、その価値はあると思います。

■文化・娯楽関連
 近代洋式温泉考
 もう一つの殖産興業 ド・ロ神父と鉄川与助の建築
 幻のリブート・ホテル時代
 繚乱たる産業の館 綿業会館と大阪倶楽部
 アール・デコの温泉 下呂温泉湯之島館を訪ねる

■産業・交通関連
 木曾川電源開発事情(前編) 桃介と貞奴の夢
 木曾川電源開発事情(後編) 桃介と貞奴の夢
 産業施設としての駅舎
 「飛騨の匠の文明開化」 八代阪下甚書の建築
 海と鉄の建物 北九州市の近代建築
 海を臨む洋館 秋田商会と四階楼
 山と海の洋館 尾鷲山林王の邸宅
 閉ぎきれた山の向こうに 空知の産炭地を巡る
 シルクカントリーを巡る

■教育・厚生関連
 山形県洋館めぐり 東北に咲いた近代建築の華
 測候所に咲いた建築家の夢 鹿児島と松山の気象台をめぐつて
 象徴としてのキャンパスと校舎(前編) 古都に咲いたミッションの華
 象徴としてのキャンパスと校舎(後編) 古き良き時代の学校建築

■町並み・民家・集落関連
 「唐桑御殿」探訪記
 「京は遠ても十八里」 鯖街道とその建築
 北前船と西洋館 北前船の集落・湖北の港
 銀山の再生 石見銀山・大森の新しい動き
 対馬国建築紀行
 忘れられた西洋舘 四阪島住友別邸と別子銅山の遺構
 二つの諸戸邸 桑名の山林王を訪ねる
 北上川スレート紀行 登米・雄勝を訪ねる
 軽井沢のリゾート建築 宍戸實先生のことなど
 参考文苧建牡データ


近代名建築で食事でも(稲葉なおと)

2007-01-25 08:00:00 | 本と雑誌

Inaba1近代名建築で食事でも(白夜書房)
★★★☆:70点

以前、写真集「アール・デコ・ザ・ホテル」を紹介した稲葉なおとさんの近著です。かつて、森まゆみさんの「明治・大正を食べ歩く」という東京の老舗を訪ねて食べ歩くご機嫌な本がありました。稲葉さんの本書もタッチや体裁は全く違うのですが、見て・読んで楽しく美味しい本です。

~帯から~

明治・大正・昭和の時代から今なお生き続け愛されている、東京の近代建築たち。
食事と喫茶を愉しみながら、撮り、書き下ろした、建築鑑賞紀行。
高級フレンチから学食まで。

~本書から~

明治政府の近代化政策とともに世に送り出され、昭和初期にかけて建てられた貴重な近代建築。東京にもまだ残るその何軒かは一般に公開されている上に中で食事も愉しめるとなれば、これはもう矢も盾もたまらなくなってしまった。近代名建築で食事をするなら、そこがまだ残っている今のうちなのである。

さてさて、取り上げられた建物とメニューは・・・

礼拝堂風学食で頭脳ランチ
  「立教大学・第一食堂」(カキフライ)
ラ・マンチャの味
  「小笠原伯爵邸」(歓迎のピカエタ)
総栂普請の暗殺の部屋
  「高橋是清邸」(うめとしらすのピラフ)
巨匠の作品に囲まれたバニーガール
  「九段会館」(キーマカレーサンド)
長屋門の邸宅で京菓匠の品
  「葛飾区山本邸」(つばらつばら)
有形文化財の地下実験室風食堂
  「東京大学・銀杏・メトロ食堂」(やわらかチキンカツ)
フランク・ロイド・ライトの妙技
  「自由学園明日館」(瓶ビールとグリッシーニ)
「口上」と「時雨西行」の合間に
  「歌舞伎座」(数限定幕乃内)
喧騒から隔絶したモダニズムの邸宅
  「原美術館」(骨付き仔羊のソテー)
忘れられた異端の建築家
  「ライオン銀座七丁目店」(焼きたてローストビーフ)
開かれたアール・デコの館
  「学士会館」(イチゴとラズベリーを添えたクレームブリュレ)
ジャコビアン様式に凍える
  「旧岩崎邸庭園」(白玉ぜんざい)
文化勲章受章画家の部屋
  「目黒雅叙園”旬遊紀”南風の間」(特製窯焼き北京ダック)
李王家東京邸の物語
  「赤坂プリンスホテル旧館”仏蘭西料理 トリアノン”」
    (緑のベールを着飾った仔羊のロースト)
六代目社長のこだわり
  「いせ源」(アンコウ鍋)
シャトー風邸宅の思い出
  「ロアラブッシュ」(二台のワゴン・デザート)

「明治・大正を食べ歩く」と比べると、高級なところも含まれているので多少気取った感じがしないでもありませんが、立教大学や東京大学の学食も含まれているのがいいですね。以前、立教大学を探訪したときは第一食堂は閉まっていて残念でした。私がまず行ってみたいのは、小笠原伯爵邸とライオン銀座七丁目店かな?

稲葉なおとさんの本は独特のムードがあります。建物の写真は全景写真も含めてもう少し大きめで数も増やしてほしかった気はします。ひとつ不思議だったのは、本文中に読点「、」が非常に少なかったことです。読点のない長い一文でどれくらいのものがあるかちょっと調べたら、240字くらいのものがありました。150字くらいの箇所は多数あり。あとがきなどはそうでもないので、これは意図的なんでしょうか。

★最近も世界各地のアール・デコ・ホテルを巡られたようで、「アール・デコ・ザ・ホテル」の続刊も期待したいと思います。