平成4年・第13回吉川英治文学新人賞受賞作品。
久々に宮部みゆきの時代物を読みましたが、良かったです。本所深川七不思議を題材にした不思議話+人情話で、全体的には山本周五郎的なムードを持った作品でしょうか。ただし、ミステリー的な味わいもある時代小説で、そこに宮部みゆきならではの柔らかで温かなまなざしが注がれ、独特の風情と余韻がありました。主人公は全て女性で、岡っ引き「回向院の茂七」が全編に共通して出ていることからも一貫性を感じます。
一時期よく読んでいた山本一力作品には物足りなさを感じることが増えたため、最近はちょっと中断しているのですが、その間に宮部みゆきの時代物の魅力にはまりつつあります。
読了したのが2ケ月前なので、細かな内容を覚えていないのが悔しいです。
ただ、手元メモによると下記のような評価をしていました。
◎ 第一話「片葉の芦」
△ 第二話「送り提灯」
◎-第三話「置いてけ堀」
◎ 第四話「落葉なしの椎」
△ 第五話「馬鹿囃子」
◎-第六話「屋敷」
△ 第七話「消えずの行灯」
注)丸印がうまく表示されないため△を使っています。従って見た目ほどの
差はありません。
これによると、第一話「片葉の芦」と第四話「落葉なしの椎」を高く評価したようですね。短編集ですべての話が◎クラスということは滅多になく、総合評価としては80点としましたが、お気に入りの話は90点クラスだと思います。
**************************** 文庫本裏表紙より ****************************
近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった娘のお美津だという噂が流れたが…。幼い頃お美津に受けた恩義を忘れず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る「片葉の芦」。お嬢さんの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会った怪異の顛末「送り提灯」など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く7編。宮部ワールド時代小説篇。
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文庫本での池上冬樹さんの宮部作品の解説もとても参考になりました。この解説も読む価値十分です。ほんの一部のみ抜粋しますと、
・・・・第一級の作家である宮部みゆきが、優れた時代小説家としての片鱗をみせる作品集であり、ここにある短編はみな、山本周五郎や藤沢周平の佳作と並ぶ出来といっていいのではないかと思う。・・・・本書は絶対の買いである。
などなど。
そこで、池上さんが”本書のベスト1は、第一話の「片葉の芦」だろう”と書かれていたのも嬉しかったです。