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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

本所深川ふしぎ草紙 (宮部みゆき)

2008-10-17 23:21:08 | 本と雑誌

Honjo1 本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)
★★★★:80点

平成4年・第13回吉川英治文学新人賞受賞作品。
久々に宮部みゆきの時代物を読みましたが、良かったです。本所深川七不思議を題材にした不思議話+人情話で、全体的には山本周五郎的なムードを持った作品でしょうか。ただし、ミステリー的な味わいもある時代小説で、そこに宮部みゆきならではの柔らかで温かなまなざしが注がれ、独特の風情と余韻がありました。主人公は全て女性で、岡っ引き「回向院の茂七」が全編に共通して出ていることからも一貫性を感じます。

一時期よく読んでいた山本一力作品には物足りなさを感じることが増えたため、最近はちょっと中断しているのですが、その間に宮部みゆきの時代物の魅力にはまりつつあります。

読了したのが2ケ月前なので、細かな内容を覚えていないのが悔しいです。
ただ、手元メモによると下記のような評価をしていました。

 ◎  第一話「片葉の芦」
 △  第二話「送り提灯」
 ◎-第三話「置いてけ堀」
 ◎  第四話「落葉なしの椎」
 △  第五話「馬鹿囃子」
 ◎-第六話「屋敷」
 △  第七話「消えずの行灯」

注)丸印がうまく表示されないため△を使っています。従って見た目ほどの
  差はありません。

これによると、第一話「片葉の芦」と第四話「落葉なしの椎」を高く評価したようですね。短編集ですべての話が◎クラスということは滅多になく、総合評価としては80点としましたが、お気に入りの話は90点クラスだと思います。

**************************** 文庫本裏表紙より ****************************

近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった娘のお美津だという噂が流れたが…。幼い頃お美津に受けた恩義を忘れず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る「片葉の芦」。お嬢さんの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会った怪異の顛末「送り提灯」など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く7編。宮部ワールド時代小説篇。

******************************************************************************

文庫本での池上冬樹さんの宮部作品の解説もとても参考になりました。この解説も読む価値十分です。ほんの一部のみ抜粋しますと、

・・・・第一級の作家である宮部みゆきが、優れた時代小説家としての片鱗をみせる作品集であり、ここにある短編はみな、山本周五郎や藤沢周平の佳作と並ぶ出来といっていいのではないかと思う。・・・・本書は絶対の買いである。

などなど。

そこで、池上さんが”本書のベスト1は、第一話の「片葉の芦」だろう”と書かれていたのも嬉しかったです。


夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)

2008-10-15 21:20:03 | 本と雑誌

夜は短し歩けよ乙女(角川書店)
★★★☆:70~75点

Yoruwamijikashi1 久々に読了本の感想です。

不思議な不思議な物語でした。
最初は風変わりな小説だなあと思っていたのですが、あまりの不思議さ、奇想天外さに最後の方はちょっとハマッてしまいました。この作品はそれを受け入れる人と絶対拒否の人に分かれると思います。「こんなのありえない」と思ってしまったら恐らくもうダメで、私の場合は、小説なんだから何でもOK派で、キャラ設定なども含めて楽しく読みました。

作者は京大大学院修士課程卒ですか。なるほど。京大と京都の町を舞台にした物語はとても親近感がありました。また、表紙画も素晴らしいです。

************************************ Amazonより ************************************ 

出版社/著者からの内容紹介
鬼才モリミが放つ、キュートでポップな片想いストーリー!
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受けるのは奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった!

内容(「BOOK」データベースより)
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。

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最後まで名前が出てこなかった主人公の二人(「先輩」と黒髪の乙女の「後輩」)によって、ほぼ同じシーンが別々の視点で描写される、それ自体は特に珍しい手法ではないと思いますが、気持ちも行動も(すんでのところで)すれ違う面白さがありました。まるで、昔のコメディ映画を見ているような面白さでしょうか。「ああ、またすれ違い、すれ違い。二人の運命は果たしてどうなることでありましょうか・・・」

怪人・李白氏、自称「天狗」でふわふわと空を飛ぶ樋口氏、猛女・羽貫さん、学園祭の事務局長、パンツ総番長、「象の尻」の女性・紀子さん、錦鯉の東堂さんなど奇人・変人・怪人がぞろぞろ出てくるのですが、誰もが憎めない人物なのは微笑ましいですね。

黒髪の乙女が使う古風な言葉、3階建ての電車、錦鯉や林檎や達磨の雨・・・。読者が唖然とするような仕掛けの連続ですが、ほんわかしたユーモア感でくるまれていて心地よし。

最も印象的だったのは”古本市の神様”の少年と、その母である傘を差しながら織田作之助全種を読んでいる和服の女性でした。

  「父上はいつも僕をここに連れてきてくれた。そして本たちがつながって
   いることを教えた。僕はここにいると、本たちがみな平等で、自在に
   つながりあっているのを感じることができる。その本たちがつながり
   あって作り出す海こそが、一冊の大きな本だ。だから父上は死んだ後、
   自分の本をこの海へ返すつもりでいた」

  「あれは息子が主人と初めて古本市へ出かけた時に、一目惚れした絵本
   でしてね。息子にせがまれて幾度も読んできかせました。自分で読める
   年頃になっても、息子は私にせがんだものです」

そして、「ラ・タ・タ・タム-ちいさな機関車のふしぎな物語」。黒髪の乙女はかつて自分が持っていた本そのものと奇跡的な再会を果たす。それ自体が、ふしぎな物語でした。

  「気は済んだの?」と女性が優しく言い、少年は
  「うん」と頷いていました。
  私は「ラ・タ・タ・タム」が見つかったことを少年に教えてあげようと思って
  後を追ったのですが、彼らはまるで魔法のようにスルスルと人の間を
  すり抜けていき、ついにフッと夕闇に消えてしまいました。

本への愛が美しく描かれ、色々謎めいていることも含めて素晴らしいです。

奇想天外な物語ですが、ラスト、喫茶「進々堂」でのデートのシーンがステキでした。
うーむ、久々に乙女チックな味わいのある小説を読んだな。。。

◎参考ブログ:

   エビノートさんの”まったり読書日記”
     ----「黒髪の乙女」のつもりになって書かれたそうで、こちらも味わいあり。

   苗坊さんの”苗坊の読書日記”
     ----二人を見つめる眼差しがやさしいです。


近代建築散歩 京都・大阪・神戸編(宮本和義)

2007-11-30 23:31:00 | 本と雑誌

Kindaikentikusanpo1 近代建築散歩 京都・大阪・神戸編(小学館)

写真家・宮本和義さんの近著で、建築ガイドブックの決定版として東京・横浜編と同時に刊行されました。

以前、「大大阪モダン建築」という本を紹介しましたが、そちらは大阪市内の近代建築が対象でした。それに対して本書は京都・大阪・神戸が対象で、京都市・大阪市・神戸市を中心としながらも周辺都市の建物も採り上げられています。京都は京都市だけみたいですね。

大阪の建物については当然のことながら「大大阪モダン建築」との重複がかなりあります。「大大阪~」が1つ1つの説明の文章が結構長いのに比べて、本書は各建物の説明文は短めで(もちろん、基本データはきちんと記載されています)、より多くの建物を紹介しようという意図が読みとれます。住所の多くが番地まで入っており、地図を片手に探訪するときはとてもありがたいです。「大大阪~」はじっくり探訪型、本書は対象エリアの関係もあって網羅的探訪型のガイドブックでしょうか。

最近、建築ブームということもあって類書も多いので、写真だけをさーっと見ればいいかなと思っていたのですが、さすがは宮本和義さんの本です。全説明文を含めて結構熱心に読んでしまいました。著者の宮本和義さんが写真家の方なので、紹介されている全建物の写真付きです。また殆どの写真が垂直をピシッと出したプロならではの仕上がりです。カラーと白黒が混在しているのですが、大きさ・枚数などの扱いにかなり差があり、自分のお気に入りの建物がカラーで大きく紹介されていると”おおーっ!”と唸り、逆に扱いが小さいと”何でやねん!”とちょっと憤ったりも。単に個人の嗜好の問題なのですが、自分だったらこの建物を大きく採り上げたいなあとか、とっておきのお気に入り建物を紹介すべきかマル秘で温存すべきか・・・などと考えながら読むのも楽しいです。

建築ガイドブックの決定版の一つであることは間違いなく、多少なりとも公共性のある建物はほぼ網羅されていると思います。本文中にも書かれていますが、残されたのは個人住宅ですね。これは各人が静かに探訪すべきなのかもしれません。

約500件あると、さすがに見たことがあるのは8割強で、やはりちょっと離れたエリアに1つだけポツンとあるような建物などは取りこぼしています。この本によって未見の建物を探しにいく楽しみがまた増えましたが、うーーーん、京阪神から永久に抜け出せないような気もしてきました。。。

~本の帯より~

街なかに残された古きよき建築を、訪ねてみたい、由来を知りたい、もっと味わいたい。
●赤レンガの校舎と教会を訪ねる 御所周辺コース
●商都の面影を求めて歩く 心斎橋・ミナミコース
●モダンな家並みがつづく 神戸異人館コース
など、厳選した近代建築を訪ねる17の散歩道。

*************************** 小学館のホームページより ***************************

町中に残る古きよき建物を写真とともに紹介

都市にいまだ残る良質な近代建築(明治以降1955年頃までに建てられた建造物)を写真とともに紹介。街角に取り残されたように、あるいは威風堂々として存在感を示す古き良き建築を、訪ねてみたい、由来を知りたい、そんな要望に応える都市散歩ガイドです。この京都・大阪・神戸編では500件を超える写真を掲載。阪神・淡路大震災以後、急速に進められる耐震化の波のなか、補強して残すか、取り壊して新築するか、あるいは移築、あるいは部分保存にするのか。登録文化財制度の整備や土木遺産、近代化遺産などの選定と相まって、いまふたたびブームになりつつある近代建築めぐりの決定版です。


西洋館を楽しむ(増田彰久)

2007-10-12 23:55:00 | 本と雑誌

Seiyoukanwo1_2 西洋館を楽しむ(ちくまプリケー新書:筑摩書房)
★★★★:80点

近代建築(西洋館)や近代化遺産などの写真で有名な増田彰久さん著作の最新刊です。「カラー版近代化遺産を歩く」(中公新書、2001年)と写真や文章が重複しているものもありますが、ちくまプリケー新書らしく手軽で読みやすい本に仕上がっています。

第1章は”西洋館を用途別に楽しもう”として、学校・駅舎・ホテル・役所・工場・倉庫・教会・邸宅などが採り上げられ、第2章は”西洋館の細部を楽しもう”として、階段・暖炉・ステンドグラス・漆喰装飾・スレート・タイルなどが採り上げられています。西洋館の楽しみ方として入っていきやすいスタイルですね。そして、第3章は”僕が選んだ西洋館ベスト10”です。増田さんのベスト10の中で私が現物を見たのは3つだけでした。そのうちの1つは、このブログでも採り上げた自由学園・明日館(みょうにちかん)です。増田さんが他にどんな西洋館を選んだかは書店で本書を手にとってご覧ください。気に入ればぜひご購入を!

本書では”西洋館を撮る①②”というコラムも良いです。全体のボリュームとしては「カラー版近代化遺産を歩く」の2/3くらいかなと思いますが、紙質はこちらの方が上質で、レイアウト的にも見やすいかも知れません。写真はもうちょっと多くても良かったかなあ。。。でも、素晴らしい本だと思います。

********************************* 筑摩書房HPより *********************************

夢とロマンが詰まってる
明治から昭和の初めにかけて日本各地に建てられた多彩な西洋館。洋とも和ともつかない造形が与える不思議な魅力を、写真とともに綴った楽しみ方のガイドブック。


学び舎拝見(内田青蔵、小野吉彦)

2007-08-03 23:54:03 | 本と雑誌

Manabiya1 学び舎拝見(河出書房新社)

私が買う近代建築本(とにかく写真が多いものを好む)の中では比較的文章量が多い本ですが、いやいや素晴らしいです。

本の帯より

  【時代を証言する貴重な財産】
      懐かしき日のキャンパス、名建築の数々。

後述の10校のキャンパスと建築、その歴史が美しい写真と共に綴られており、見応え・読み応えたっぷりなのですが、第1章「学び舎の魅力」で、人間力の形成と環境、半公共建築としての大学などについて語る筆者の熱い想いが素晴らしいです。

  卒業生が、ある日懐かしいキャンパスを訪れた際に、自分の学んだ
  時代の面影がまったく消え失せてしまっていたらどうだろうか。おそらく、
  そうしたキャンパスには愛着は感じられないだろうし、そもそも、自分
  たちの受けた教育とはまったく異なった教育がさされているのではないか
  と失望してしまうのではあるまいか?

     ・・・(中略)・・・

  自分の在学中の建物が凛として存在していたら、そこに自分の存在が
  重なって見えるだろし、自分の受けてきた教育の普遍性を感じるだろう。
  それがひいては愛校心ともなるし、在校生は、そうした古い建築に信頼に
  足る歴史性を見いだし、また、卒業生の残した息吹をとおして大きな力を
  受け取るのだ。

①慶應義塾大学、②東京慈恵会医科大学、③自由学園、④東京海洋大学、⑤東京女子大学、⑥東京大学、⑦日本女子大学、⑧明治学院大学、⑨立教大学、⑩早稲田大学

私が探訪したことがあるのは、①③⑥⑧⑨の5校です。②④⑦のキャンパス&建築のことは全くと言っていいほど知りませんでした。④の構内(旧東京商船大学構内)にある帆つき汽船の佇まいも良さ気です。女子大は男性建築探偵にとってはなかなかの難敵で、文化祭とかでも卒業生の知り合いとかがいないと行きにくいやろなあ。。。

この本を読んで、東京方面出張が楽しみになりました。まあ、全く探訪時間のとれない出張が多いのですけれど。