スラムドッグ$ミリオネア
★★★★☆:85~90点
アカデミー賞8部門受賞作品。参考ブログとして後ろに挙げさせて頂いたアイリスさんと同じく、映画の日に観てきました。
いやはや・・・凄い映画でした。「クイズ・ミリオネア」を題材にした映画とは知っていましたが、まさかこのような描き方をするとは!私はてっきり「クイズ・ショウ」のような(? 実は私は見ていません(汗))やらせやショーアップの問題などを描いた作品----その背景には人種差別や偏見の問題があるのでしょうが----と予想していたら、とんでもない。良い意味で見事に裏切られた気がします。傑作と断言して良いでしょう。
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インドのスラム出身の少年ジャマールは人気番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、あと1問で2000万ルピーを手にできるところまできた。しかし、これを面白く思わない番組のホストは警察に連絡。彼はズルをして正答を得ていたとされ、詐欺容疑で逮捕されてしまう。ジャマールは警察署での警官の厳しい尋問に対し、正答を知ることになった自分の過去を話し始める。そこには1人の少女を追い続けた彼の人生の物語があるのだった…。
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【注)以下、ネタバレあり】
カットバックの回想シーン序盤に出てくるスラム街での凄まじいまでの貧しい暮らし。とはいえ、貧しいながらもそこにはもの凄いエネルギーが渦巻いている。その描写の何とまあインパクトのあること!子供たちが小づかい稼ぎをする有料トイレのシーンがその映像と共に強烈な印象を残す。
貧しい子どもたちを使った実におぞましい商売を営む男・ママン。その表情の不気味さ。歌のうまい少年の目をつぶすシーンが怖い。母を殺されてしまった幼い兄弟(サリームとジャマール)の生き抜こうとする力のもの凄さ。ママンの元を逃げ出して飛び乗った列車の中で、他の乗客のモノを盗んではそれを車内で売って儲ける抜け目なさ。タージマハールでの盗んだ靴の販売や偽ガイドを務める生来の頭の良さ、回転の良さ。彼らの生命力というか逞しさには驚嘆した。終戦直後の日本などもこんな感じだったのか?いや、日本ではちょっと作ることができない、日本人の感性ではちょっと映画にならない/しにくい作品と言えよう。
「レッドクリフ」を映画館で観るべき作品と評したが、「レッドクリフ」よりも映画らしい映画、映画ならではの作品、色んな意味で非日常的空間から切り離された空間で見るべき映画とも言える。ということで、これも映画館で観るべき作品である。
兄・サリームの強烈なリーダーシップも凄い。やはり親を亡くした少女・ラティカには冷たく当たったりもしたが、彼がいなければ弟・ジャマールの目は潰されていたであろうし、生きてはいなかったであろう。兄弟は色々と反目したりもしたが、物語の終盤、弟とラティカを守るという強烈な意志、命を賭してのボス殺しが切ない。
昔見た、聞いた、経験した、それで覚えていることがクイズで次々と問題に出てくる不思議さ、面白さ。ある意味では奇跡とも言えるし、そういう運命だったということか。2000万ルピー(現在の日本円に換算すると約4億円)がかかった最後の問題。「テレフォン」を選択して唯一知っている兄の携帯に電話をかけて助けを求めるが・・・時間切れ寸前に電話から聞こえてきたのは、サリームの助けでボスから逃げ出したラティカの声だった。これもまた奇跡であり運命か。この声のシーンも素晴らしかった。ラティカの声を聞いたジャマールはすがすがしい顔でファイナル・アンサーを口にする。
夢と純愛、兄弟愛、奇跡?いや運命("It is written.")を描いた映画か。また、2人の男(男の子)と1人の女(女の子)のトライアングル・ラブ的な面も。ラストの明るさとハッピーエンドが素晴らしかった。映画はこうでなくっちゃ!
この映画ではカット・バックがとてもうまく使われていた。映像や音響も素晴らしく、有料トイレのシーン以外に、建設中の高層ビルの上階で兄弟が再会するシーンなどもその殺風景な景色(安全柵もロープも何もない超危険な状態)とあいまって妙に印象に残る。
罠に嵌めようとする嫌らしい司会者、最初は何かからくりがあると疑っていた警部(実は良い奴)もなかなか良かった。
◎参考ブログ
アイリスさんの”To be continued.”