元沖縄県知事太田昌秀批判 10


裁判権の有様に見る国家権力の思惑
1891年(明治24年)、日本を訪問中のロシア皇太子・ニコライ(のちのニコライ2世)が、滋賀県大津市で警備中の巡査・津田三蔵に突然斬りかかられ負傷した。いわゆる大津事件である。この件で、時の内閣は対露関係の悪化をおそれ、大逆罪(皇族に対し危害を加える罪)の適用と、津田に対する死刑を求め、司法に圧力をかけた。しかし、大審院長の児島惟謙は、この件に同罪を適用せず、法律の規定通り普通人に対する謀殺未遂罪を適用するよう、担当裁判官に指示した。かくして、津田を無期徒刑(無期懲役)とする判決が下された。この一件によって、日本が立憲国家・法治国家として法治主義と司法権の独立を確立させたことを世に知らしめた。

このように明治政府は法治主義と司法権の独立を保障する近代国家をめざしていた。いわゆる、全国をひとつの法で統一する方向に政治を進めたのだ。

廃藩置県というのは近代国家を目指して、独立した法支配をしている藩を廃して県を置いて日本をひとつの法体制にするということである。
明治政府から琉球藩への命令書は、事件が琉球藩同士であろうが他府県人との間であろうが全て内務省出張所に訴えろとしている。琉球藩の民を他の県民と区別することなく日本国民として裁くということであり、国民は平等に扱うことを表している。
ところが太田氏は廃藩置県をしたのに憲法上の基本的人権を認めないのだと明治政府の命令書を説明している。そして、命令書は「法の下での平等」を保障しなくて、他府県とは差別して処遇したと命令書のないようを逆に理解している。
命令書からは、日本国民であるならどこの県の人間であろうと同じ裁判所で裁くということであって、法の下の平等をうたっているのであって、琉球王府のほうが全国統一の法にしたがうのを嫌っているのだ。

太田氏は日本政府のやり方を植民地政策であると理解しているが、明治政府は沖縄を日本国のひとつとして認めているのであって、沖縄を植民地としてあつかってはいない。太田氏の解釈はおかしい。

琉球王府は王府が薩摩支配時代のように沖縄を支配しようとして、それを許さない明治政府と対立しているのであり、太田市が明治政府を非難するということは、太田氏は琉球王府の立場に立っているからであり、琉球王府は独立国であると思っているから明治政府の政策が「植民地政策」に見えるのだ。


しかし、太田氏が「憲法上の基本的人権を認めない」とか「方の下での平等を保障せず」と書いているのにはあきれる。
その時代は憲法はまだないし、基本的人権というのもないのだ。
太田氏の時代錯誤はあまりにもはなはだしい。

琉球藩の池城親方は、琉球藩は他府県とは違うと主張している。池城親方は太田氏の理解とは逆の主張をしているのだ。琉球藩が裁判をするということは琉球王朝のやり方で裁判をするということである。琉球王朝は王が法であり絶対権力者ある。琉球王朝は法治国家ではないし、身分差別がある社会であり、武士には甘く農民には厳しい差別裁判をする。それは明治政府の目指していた法治国家とは違う体制である。
近代国家を目指し、法治国家を目指している明治政府が琉球藩に裁判権を与えるはずがながなかった。

ところが太田氏は琉球藩に裁判権を与えなかったことに反発している。琉球藩は琉球王国のままの体制であり、身分制度がある社会である。明治政府は江戸幕府を倒し、武士の特権を廃して四民平等の国家である。太田氏は四民平等の国家より王制国家である琉球藩を支持しているのだ。つまり、太田市は民主主義を否定しているのだ。

太田氏は「裁判権の所在をめぐる日本政府と琉球藩との以上のような対応を見ていると、戦後のアメリカ軍政も、明治政府の対琉球政策を踏襲したのではないか、という気さえする。」と述べている。

アメリカ軍政府が沖縄を統治していたときと、明治政府の琉球藩に対する対応の仕方は同じではない。全然違う。明治政府の場合は琉球藩を沖縄県にして日本の一部にしようとしたのであり、琉球藩の独立性をいっさい認めなかった。だから日本の法律を適用した。
しかし、アメリカ軍政府が統治していたときは、沖縄はアメリカの一部ではなく、半独立国として位置づけた。
だから裁判権は、沖縄人同士の争いとアメリカ人に対して犯罪を犯した沖縄人は琉球政府の裁判所が裁いた。そして、アメリカ人同士と沖縄人に対して犯罪を犯したアメリカ人はアメリカ軍が裁いた。
琉球藩が要求した沖縄人同士の事件は琉球藩で裁かせてくれという要求を明治政府は認めなかったがアメリカ軍は認めたのだ。

コザ騒動で沖縄人がアメリカ人の何十台もの自動車を燃やしたが、捜査から検挙、裁判まで琉球政府の警察と裁判所が取り扱った。アメリカ軍は一切介入しなかったと当時の検事が証言している。

明治政府の時代とアメリカ軍統治時代は背景も内容も違うのに明治政府とアメリカ軍を同一視する大田氏はおかしい。

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