カットグラス?

農家の息子は小遣いがもらえない。畑仕事を手伝っても、親に養われているのだから手伝うことは当然であって小遣いなんてもらうのがおこがましいというのが農家の親の考えだ。
小遣いは自分で稼ぐのが貧乏農家の子供の宿命だった。小学校の低学年の頃は戦争の残し物のくず鉄があちらこちらの土の中に埋まっていて、私たちはカシガー(あさ袋)を担いでくす鉄を探し回った。その金でお菓子を買ったり映画を見たりした。
しかし、小学校の高学年になる頃にはくず鉄はなくなった。

ある日、隣りのてっちゃんが小遣い稼ぎの話を持ってきた。外人住宅街のモーガンマナーに行けばお金が稼げるというのだ。モーガンマナーの庭が荒れている家に行き、「グラスカット」と言えば、庭の草を刈る仕事がもらえるという。そういう噂をてっちゃんは友人から聞いたというのだ。
本当に庭の草を刈ったらお金をくれるのだろうか。私は半信半疑ではあったが、お金がもらえる可能性があるのなら、まずはやってみることである。農家の息子にとって草刈りはお手の物だ。私とてっちゃんは鎌と砥石を持ってモーガンマナーに行った。

モーガンマナーに入ると草が生えている庭を探した。多くの庭は手入れされていて、草が生えている庭はなかなか見つからなかった。庭を覗きながらモーガンマナーの奥に入っていくと、草が茫々生えているわけではないが、少し荒れている庭を見つけた。
私とてっちゃんは玄関のドアを叩いた。すると金髪の女性が現れた。金髪の女性は二人の沖縄少年に微笑みながら、「ワットゥ」と言った。私とてっちゃんは鎌を振りかざしながら、「グラスカット?」と言った。金髪の女性は、「オオ、ヤー」と頷き、微笑みながら、「オーケー」と言った。

小学生のやる草刈りだからたかが知れている。大人のようにきれいにできるはずはない。それでも、金髪の女性は満足そうな顔をして私たちに25セントずつあげた。この時のうれしさといったらありはしない。
私とてっちゃんは時々モーガンマナーに行き、玄関のドアを叩くと、「グラスカット?」と言って草刈りの仕事をもらった。

アメリカ人はたとえ親子であっても、子供が草刈りなど家の仕事をしたら労働の報酬としてお金をあげるという噂が私たちの間では広まっていた。私は家の仕事どころか芋ほり、田植え、稲刈りに脱穀(父は脱穀機をあつかうのが下手で、私がやった)など重労働をしても一セントももらえなかった。アメリカの子供がうらやましかった。



沖縄人の卑屈な精神

最近新聞で米軍基地で働いた人間の体験談の記事が掲載されている。私は記事を読んで沖縄人の卑屈な精神を感じて心が暗くなる。

アメリカの少年と野球をしても沖縄側が勝つことは一度もなかった。なぜなら彼らは負けそうになると試合を放棄したと書いてある記事があった。
古堅中学校でもアメリカの少年チームと試合したことがあった。その頃の中学は軟式のボールを使っていたが、アメリカは硬式ボールを使っているということで硬式ボールで試合をした。キャッチャーがプロテクターを付けているのをはじめて見た私たちには新鮮であった。

彼らは野球チームだけでやってきていて、応援団は連れてこなかった。応援団は全員が古堅中学生であった。試合はかなり白熱し、古堅中学の選手がヒットを打つたびに大歓声が沸いた。
試合は負けたがアメリカの少年たちは正々堂々と試合をやった。彼らの真剣な表情から、彼らが負けそうになると試合を放棄するような人間にはみえなかった。アメリカのチームが負けそうになると試合を放棄するなんてありえないことである。その後も何度か試合をしたがアメリカチームが試合を放棄したことは一度もなかった。
「アメリカの少年と野球をしても沖縄側が勝つことは一度もなかった。なぜなら彼らは負けそうになると試合を放棄した」ということはありえないことである。しかし、沖縄人はそんなことを平気で口にする。アメリカ人を卑屈な人間に仕立てようとする話には沖縄の人間のアメリカコンプレックスを感じるし、卑屈な精神を感じる。

スクールバスの運転手が乗車している少年たちにいたずらをされ、次第にいたずらがエスカレートしていったことに対して沖縄人への差別だと話している記事があった。そんなことにさえ沖縄差別を主張するのに私はあきれてしまった。少年たちは皆いたずら好きだから運転手が沖縄人であろうとアメリカ人であろうといたずらをする。
いたずらがエスカレートしたのはアメリカコンプレックスの運転手が子供を叱ることができなかったことが原因だ。堂々と子供を叱れば子供たちはおとなしくなったはずである。もしアメリカ人の運転手なら子供たちを叱っておとなしくさせたはずである。アメリカ人の運転手でも気が弱くて子供たちを叱ることができなかったら子供たちのいたずらはエスカレートしたはずである。問題の解決になにも努力しないで差別の性にするのは沖縄人のひがみ根性である。
後にアメリカ人の監視人が乗ることになったと述べているように、アメリカ人も子供たちが運転手にいたずらするのは悪いことであり、いたずらをなくす対策をとっている。差別意識はアメリカになかった証拠である。

アメリカは多民族国家である。白人でもイギリス系、ヨーロッパ系など色々な民族が混ざっている。黒人、スペイン系、日系とアメリカは世界中の民族のるつぼなのだ。アメリカは白人と黒人だけがいると思ったら大間違いである。私はアメリカ新聞を4年間配達したがその時に多くの人種にあったし、彼らに沖縄人として差別されたことはない。アメリカ人より人種差別意識が強いのはむしろ沖縄人である。沖縄の方言ではフィリピン人はフィリピナー、台湾人はタイワナー、朝鮮人をチョウシナーと呼び、呼び方に差別はないが、子供の頃に大人たちが彼らを差別する話をしているのを何度も聞いた。

まだ古い因習が底辺にある沖縄には差別意識があり、この差別意識が逆にアメリカに差別されているという意識が生まれるのだ。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« アメリカ少年... 沖縄タイムス... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。