八重山教科書問題・裁判の意見陳述書への反論

八重山教科書問題で、石垣市教育委員会が採択した育鵬者版公民教科書を使用する可能性がある同市内の子供2人とその親2人の計4人が、市と県を相手に、東京書籍版公民教科書の無償給付を受けることを確認する訴訟の第一回弁護が8日、那覇地裁であった。
原告の弁論の全文である。




平成24年(行ウ)第29号 教科用図書の無償給付を受ける地位確認請求事件
原 告 ○○○○○外3名
被 告 沖縄県外1名
            
                    意 見 陳 述 書                                                                                              
平成24年2月8日

那覇地方裁判所民事第1部合議B係 御中

                                  原  告  ○ ○  ○ ○ ○

                                  原  告  ○ ○  ○  ○
平成24年(行ウ)第29号 教科用図書の無償給付を受ける地位確認請求事件
原 告 ○○○○○外3名
被 告 沖縄県外1名
            
                    意 見 陳 述 書                                                                                              
平成24年2月8日

那覇地方裁判所民事第1部合議B係 御中

                                  原  告  ○ ○  ○ ○ ○

                                  原  告  ○ ○  ○  ○

 本日、第一回口頭弁論期日を迎えるにあたり、私たち原告の思いを述べさせていただきます。
 
 私たちは、石垣市で暮らす、普通の一市民であり、一母親に過ぎません。そんな私たちの一番の関心事は、子どもたちの成長です。私たちは、子どもたちが、健全に育つように、そして、未来の社会を支えていく子どもたちが、夢や希望を持ち、社会に貢献できる人に育っていけるように、微力ながら、試行錯誤で、子育てに向き合っております。



 さて、昨年、八重山におきまして、中学3年生で使用する公民の教科書の採択を巡って問題が起こりました。
 
 私たち一般市民は、新聞やテレビの報道を通して、私たちの住む八重山での教科書の採択の問題を知りました。そのよう中、アメリカ留学を終えて帰ってきたばかりの八重山高校3年の女子高生の新聞への投稿文「八重山の民主主義は大丈夫?」の問いかけは、私たちを含め、八重山の大人たち一人ひとりのあり方が揺さぶられました。

 私たちは、一母親として、子どもを取り巻く環境で、私たちの知らないところで、何かが決まろうとしていることに危機感を覚えました。私たちが、教育行政に不信感を持ったのは、何よりその採択が、市民にまったく公開されず、何の説明もなく不透明に
進められていることでした。

 「なぜ、こんな問題になってしまったのだろう?」母親仲間で、集まるたびに、そのことが話題に上がっていきました。このよう
に問題になるまで、私たち母親は、教科書が、地域ごとに選ばれている現状すら知りませんでした。私たちは、報道や聞きかじりの情報からでなく、事の実際を知ろうと、仕事が終わってからや、休みの日に、自分たちで、資料や情報を集めることから始めました。

 私たちは、教育行政の仕組みさえ知りませんでしたので、教育委員とは、教育長とは、というところからはじめました。そして教科書の採択の仕組みも勉強しました。八重山採択地区協議会という組織があること、その規約がどのようになっているのかなどを調べました。関係者には、直接、聞き取りもしました。このようにして、私たちは、資料を整理分析し、事の実際を把握して
いきました。

 この問題では、平成23年8月23日の八重山採択地区協議会と平成23年9月8日の教育委員全員協議の二つの採択のどちらが有効かが争点となっています。

 しかし、私たちが調べた結果では、8月23日の八重山採択地区協議会の答申を受けた各教育委員会の採択で、同一の教科書にならなかったことから、県教育委員会の指導助言のもと、教科書無償措置法に基づき、八重山地区教育委員協会で早期解決の方法を探る協議を経て、9月8日、教科書の同一化に向けて行われた八重山地区全教育委員による協議によって、適正に東京書籍の公民教科書が採択されたことははっきりしています。

ところが、石垣市と与那国町の両教育長は9月8日の採択は無効であるとする文書を文科省に提出し、これを受けた文科省は、教科書の採択として無効であることが明らかな8月23日の答申の採択の方が有効との見解を示すに至りました。

 そしてさらに文科省は、東京書籍の採択が有効であると正しく主張している竹富町に対して、教科書無償配布の対象としないとの措置までをとろうとしています。

 私たちは、八重山地区の教育委員全員の協議で決定した9月8日の採択を、文科省というお役所が八重山地区の決定を無視して強権的、一方的に八重山の教科書を決めようとする事態に、民主主義とは何かをあらためて考えさせられました。
 
 私たちは、子どもたちに、相手の話をよく聞いて、言いたいことは、はっきりと伝えるようにと、日頃から教えています。私たちは、この法廷の場で、真実を明らかにし、適法な教育行政が行われたのかどうかを問うことにより、民主主義とは何かを身をもって教え、親としての責任を果たしたいと決意し、裁判を起こしました。

 原告になった私たちは、この問題を八重山の方々と学ぶため、石垣市で2回、西表島で1回、与那国島で1回、勉強会を開きました。各地域で、教科書を受け取る対象の生徒さん、父母、地域の皆さん方の参加があり、活発な意見交換も致しました。各地で、応援の和が広がり、この訴訟が注目されているのを肌で感じてきました。

 八重山で起こったこの一連の騒動は、八重山の子どもたちの目にも映っています。私たち大人の姿勢は子どもたちに見られています。

 八重山で起こったことは、八重山の住民の手で、民主主義社会の仕組みに則って解決したいと思っています。

 私たちは、母親として、未来の民主主義社会を支えていく子どもたちに、この教科書問題は、民主主義社会の仕組みを知る生きた公民の学習であり、民主主義を問う良い機会だったと胸を張って話せるようにしたいと思います。

 新しい教科書が配布される4月が目前に控えています。この裁判で、速やかに、このたびの教科書採択に関する一連の事実が明らかにされ、八重山の中学生に正しく採択された公民の教科書が配布されることを強く望みます。

 そして、被告の石垣市、沖縄県の関係者の皆さまは、この問題からに逃げることなく、早急な解決へ向けての事実を明らかにしていく努力をしていただきますようお願い申し上げます。

 裁判所には、以上の私たちの思いをご理解いただき、迅速公平に審理をお進めいただきますよう切にお願い申し上げます。
                                     



親子4人はなぜ石垣市と県を相手に訴訟を起こしたのか。理由がわからない。無償給付する公民の教科書を育鵬者版に決めたのは文科省である。石垣市ではない。もし、石垣市が原告の訴えを受け入れて東京書籍を採択したとしても、無償給付の決定権は文科省にあるのだから、東京書籍の教科書が石垣市の無償給付されることはない。東京書籍を無償給付するには文科省を相手に裁判を起こして、文科省に東京書籍版の無償給付を決断をさせなければならない。

原告側には弁護士もついている。弁護士なら文科省が無償給付する教科書を育鵬者から東京書籍に変更しない限り、石垣市に東京書籍版を無償給付させることはできないということを知っているはずである。
この裁判に勝ち、次に文科省を相手に裁判を起こすという時間のかかる方法を選んだのは理屈に合わない。

石垣市は9月8日で起こったことの事実を文科省に報告しただけであり、文科省が8月23日の八重山採択地区気宇議会が育鵬社版を採択したのは有効であり、9月8日の全員協議による東京書籍版の採択は無効であると判断した。
親子4人が問題にしているのは8月23日の八重山採択地区協議会は諮問であり、「9月8日、教科書の同一化に向けて行われた八重山地区全教育委員による協議によって、適正に東京書籍の公民教科書が採択されたことははっきりしています」と主張している。
親子4人の主張と対立しているのは文科省であり石垣市ではない。石垣市の教育長は9月8日の事実を文科省に報告して、文科省の判断を仰いだだけである。事実を報告をした石垣市教育長は文科省が8月23日は有効であり9月8日は無効であるという判断に従っているだけである。もし、親子4人が石垣市を訴えるとしたら、石垣市の教育長が虚偽の報告をして、そのために9月8日の全員協議を文科省が無効と判断したというようなことを根拠にしなければならない。しかし、石垣市の教育長は文科省に虚偽の報告をしてはいないし、親子4人もその件で石垣市を訴えてはいない。
親子4人は石垣市に対して、9月8日が有効であると訴えることはできないし、9月8日が有効であると文科省が認めていないのに石垣市に東京書籍の教科書を無償給付するように訴える権利もない


弁論には「民主主義」を何度も主張している。「私たちは、子どもたちに、相手の話をよく聞いて、言いたいことは、はっきりと伝えるようにと、日頃から教えています。私たちは、この法廷の場で、真実を明らかにし、適法な教育行政が行われたのかどうかを問うことにより、民主主義とは何かを身をもって教え、親としての責任を果たしたいと決意し、裁判を起こしました」と述べられている。

民主主義は法治主義がコンビになっている。民主主義を守るには市民の代表者が法律を決め、それを明文化し、すべての人に平等に法を適用する。法治主義が徹底されなければ民主主義も単なる数の暴力になる。

原告が民主主義を主張するなら、八重山採択地区協議会と全委員協議はどちらが民主主義のルールをまもったかを検討するべきである。八重山採択地区協議会の正式名称は「教科用図書八重山採択地区協議会」である。弁論では八重山採択地区協議会は答申と決めつけているが、八重山採択地区協議会にははっきりと「採択」という名称がつけられている。普通の主婦なら「採択」という名称なのになぜ「答申」なのか問題にするはずである。
教科用図書八重山採択地区協議会という名称であるのなら、協議会は「答申」機関ではなく「採択」機関と思うのが普通である。しかし、原告は八重山採択地区協議会は答申であると決めつけている。決めつけている理由を述べていない。

無償措置法の正式な名称は「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」である。この法律の趣旨に基づいてつくられたのが「教科用図書八重山採択地区協議会」である。教科用図書八重山採択地区協議会をもっと詳しい内容の名称にすると、「無償給与」教科用図書八重山採択地区協議会となる。つまり、八重山採択地区協議会は八重山地区へ文科省が無償給与する教科書を「採択」する協議会であるのだ。決して答申機関ではない。

八重山採択地区協議会には規約がある。規約は全国共通している規約であり、協議会は規約を守って採択委員を選び教科書を採択する。民主主義のルールに従って規約はつくられ、民主主義のルールに従ってつくられた規約に従って協議会は国が無償給付する教科書を採択したのだ。
つくられた法律はすべてが完全とは言えない。訂正しなければならない箇所があれば民主的なルールを通して訂正していく。しかし、訂正しない限り明文化した法律が有効である。
9月8日の全員協議には何の規約もない。教科書を無償給付するためにつくられた八重山採択地区協議会の規約を破棄または改正をしないで、また、二人の教育長が採択協議会として運営するのに反対したから正式な採択協議会として成立をしていないにも関わらず、教育委員の賛成多数の論理だけで、しかも教科書の無償給付する協議会として明文化させることもなく、正式な記録もつくらず、東京書籍版を無償給与すると決めた。
普通の人が9日8日の全員協議の内容を知ったら、教科書の無償給付を採択する正式な協議会として認めないだろう。

八重山採択地区協議会は無償措置法の第13条4項「第1項の場合において、採択地区が2以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」に従って設立した機関である。9月8日の全員協議もこの法律を根拠にしている。

「当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」は全員協議をやらなければならないということではない。採択地区協議会には教育委員長、教育長は必ず協議委員にならなければならないし、あとは地区の状況に沿って地区の校長や有識者を委員にしている。

被告は「八重山で起こったことは、八重山の住民の手で、民主主義社会の仕組みに則って解決したいと思っています」と述べている。被告の民主主義には選挙の思想がない。八重山は石垣市、竹富町、与那国町に分かれ、それぞれの市長では市民の選挙で首長と議員を選び、首長と議員が市町の政治を行っている。もし、民主主義の仕組みに則るのなら、市民に選ばれた市長、議員による政治に信頼を持つべきである。

被告は民主主義の仕組みに則ると述べているが、被告は9日8の全員協議が有効であると主張している。政治や法律を詳しくはしらない普通の主婦であるといいながら9日8の全員協議が有効であると強く主張するのはふつうの主婦とは思えない。
もし民主主義の仕組みに則るなら八重山採択地区協議会と全員協議のどちらが法的に正しいかを裁判に問うべきである。被告の態度は普通の主婦と言いながら全員協議が正しいと自信をもち、東京書籍の教科書を石垣市で採用するように主張している。普通の主婦とは思えない主張である。

八重山教科書問題は無償措置法と地方教育行政法の二つの法律の問題である。法律の問題なのだから、ネットなどを利用して法律や教育の専門家の意見を収集して勉強をするべきであって、法律に素人である住民たちが意見交換をしても八重山教科書問題の本質を理解しあうことにはならない。民主主義を主張するなら民主主義のルールを積み上げている法律を勉強するべきであり、法律や教育の専門家の意見に耳を傾けるべきである。

専門家も二つの意見に分かれているが、八重山採択地区協議会のほうが優勢だ。
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コメント
 
 
 
Unknown (太郎)
2012-02-19 14:18:18
育鵬社って偏りすぎていると思う。
 
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