中川文科相に反論





 仲山文科相は、憲法26条2項の「義務教育はこれを無償とする」の解釈で、1964年の最高判決に基づき「同規定は授業料の不徴収の意味と解するのが相当だ」と答弁しているが、仲山文科相の答弁には疑問である。

憲法は理念である。「義務教育はこれを無償とする」は義務教育に関するすべてを無償とするのが憲法の理念であり、国は無償化の努力をしなければならないということだ。
 教科書無償措置法は「授業料の不徴収」と同じように憲法26条2項の理念を実現した法律であると解釈するべきである。給食も無料にするよう国は努力するべきだ。

 竹富町の採択した教科書が無償でないのは竹富町が教科書無償措置法を守らなかったからであると考えるのが妥当だと思う。
 子供が小学校に行くのは義務であっても入学手続きをしなければ小学校に通うことはできない。生年月日も年齢も住所も報告しないのに小学校へ通うというのはあり得ないことである。
 生活保護もちゃんと手続きをしなければもらえない。働ける人は働く意欲をみせないと生活保護を受けさせないという案が出ているが、憲法に生存権をうたっていても無条件で生活保護が受けられるということではない。貧乏で収入がない人間でも手続きをしないと生活保護を受けることはできない。

 国民が国に払う税金などは国が強引に徴収する。他方、国が国民に支払う時は国民は書類などを使って国に申し込みをする。生活保護、年金、失業保険、税金の払い戻し、賠償金などは国の指定する手続きをしなければ支払われない。
 教科書の無償給付も生活保護などと同じで、無償給与の手続きをしなければ国は無償給与をしない。
 教科書の無償給付を受けるためには、採択地区協議会で一種類の教科書を採択し、各市町村の教育委員会では採択地区協議会で採択した教科書を採択し、教科書の冊数を県教育庁に報告をする。これが教科書の無償給付を受けるための手続きである。この手続きをやらないと教科書は無償給付されない。

 中川文科相は八重山採択地区協議会の答申による同一採択で一本化できるよう県教委を指導しているが、「一本化できるよう」の考えは間違っている。
 石垣市と与那国町は育鵬社の教科書を採択し、竹富町だけが東京書籍の教科書を採択した。八重山地区は同一の教科書を採択していなかった。八重山地区の教科書が同一ではないので無償措置法に違反していると考えられているが、そうではない。3市町の教科書が同一ではないことが実は無償措置法には違反していない。違反しているのは竹富町だけである。

「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」の第13条4項に
「 第1項の場合において、採択地区が2以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」と定めている。要するに、採択地区は同一の教科用図書を採択しなければならないということになるが、この条文の解釈の仕方が八重山教科書問題の混乱の原因である。
 注意しなければならないのは、第13条4項は「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」内の規定であり、「無償措置に関するだけの法律であることだ。市町村の教科書採択に関する法律ではない。市町村の教科書採択に関する法律は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に規定している。

 第13条4項で、採択地区は同一の教科用図書を採択しなければならないと述べているが、それは採択地区は「無償給付する」同一の教科用図書を採択しなければならないということであり、無償給付する教科書に絞った規定であるのだ。
八重山採択地区協議会は八重山地区に国が無償給付する教科書を同一にする協議会であって、八重山地区で使用する教科書を同一にする協議会ではない。

 八重山採択地区協議会で採択した教科書が自動的に無償給付する「同一の教科用図書」となるのであり、8月23日の八重山採択地区協議会は育鵬社の教科書を採択したということは、無償措置法第13条4項の規定通り、八重山地区の無償給与する教科書を育鵬社の教科書に統一(同一)にしたのである。

 だから、中川文科相の「一本化できるよう」に県教育庁が八重山地区3市町に一本化を説得する必要はない。無償措置法による一本化はすでに八重山採択地区協議会でやった。石垣市も竹富町も与那国町も無償給与の教科書は育鵬社の教科書と決まった(一本化)のだ。だから一本化にした教科書を採択した石垣市と与那国町は問題がないから説得する必要はない。
 竹富町だけが無償措置法で一本化した育鵬社の教科書ではなく東京書籍の教科書を採択した。竹富町は無償措置法に違反したのである。無償措置法に違反すれば教科書を無償給付しないことになる。県教育庁が説得をするべきは竹富町だけである。

 八重山地区では無償給与する教科書は育鵬社の教科書に一本化した。無償給与するのは育鵬社の教科書だけだから、憲法26条2項の「義務教育はこれを無償とする」の憲法の理念を大事に考えて育鵬社の教科書にしてくれと説得する以外の方法はない。


 「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に書いてあるのは、第1条「この法律は、教科用図書の無償給付その他義務教育諸学校の教科用図書を無償とする措置」と述べているように全て教科書の無償給付についての規定である。だから、問題になっている第13条4項「第1項の場合において、採択地区が2以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」も無償給付する教科書の条件を述べているのであり、教科書一般の採択について述べているのではない。

 第13条4項の同一の教科用図書を採択する組織が採択地区協議会であり、八重山採択地区協議会で採択した教科書は全て八重山で無償給付する教科書として一本化したのであり、八重山採択地区協議会で採択した教科書以外の教科書は全て無償給付をしないということになる。

 竹富町が東京書籍の教科書を採択したので、教科書が同一になっていないと9月8日に教科書を同一するために「全員協議」をやったのは「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に違反した行為である。すでに無償給付の教科書は八重山採択地区協議会で同一化されたのに、3市町の教科書が同一になっていないことを理由に全員協議で無償給付の教科書を採択しなおすのはあってはならないことあである。   
 3市町の教科書が同一されるされないは無償措置法とは関係がない。教科書の採択は各市町の自由である。竹富町が東京書籍の教科書を採択したのは、教科書の採択は地方自治法で自由に採択することになっていて問題はない。
 しかし、八重山地区で無償給付されことに決まった教科書以外を採択したから無償措置法の対象外となり竹富町が採択した東京書籍の教科書は無償給付されないということになる。それだけのことである。

 しかし、県教育庁は、地区で教科書を同一にしなければならないのは無償給付に限るということを理解することができなくて、八重山地区で使用する教科書を3市町で同一にしなければならないと勘違いしたようだ。

 9月8日からの混乱は、県教育庁が「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」と「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」をきちんと区別することができなかったのが原因である。「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」を一般的な教科書に関する規定であると勘違いしたのは県教育庁の致命的なミスである。

 9月8日の正当性を主張している学者や弁護士がいるのには驚かされる。
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