建築をめぐる話・・・・つくることの原点を考える       下山眞司        

                     ☆ 2019年1月より、故人が残したものを順次、掲載して行きます。☆

道・・・どのように生まれるのか

2006-11-22 12:14:43 | 居住環境

〇道に迷うのは何故?
先日、所用でひたちなか市の国営ひたち海浜公園の近くに行った(車で)。折悪しく低気圧が通過中とのこと、天候は悪く、ときおり雨が吹きつける。往路は水戸街道:国道6号から入ったため、比較的容易に目的地へ着いたが、復路は東水戸道路を使うことにして海浜公園の南側にあるインターに向った。多分あっちの方角だろう、と思ったのがとんでもない間違い、まったく逆の方角、南に向いているはずが北に向っていたことに、東海村の地名の付いた信号に出会って気がついた。

ひたち海浜公園の一帯は、かつて水戸射撃場の跡地だったはず。まわりは見渡すかぎりの平原。碁盤目に道路が計画されているらしいが、開発中で、すでに建てられている建物も、まわりの草原に埋没してしまっている。角を左に曲がれば東に向う、と勝手に思ったのが間違いのもと、実は北に向いてしまったのだ。目当て(《都市デザイン》の用語で言えばランドマーク)にするものは何もないいわば原っぱ、陽が指していれば、何てこともないのだが、あいにくの曇天でモノトーン。

〇碁盤目の街は分かりやすいか?
一般に碁盤目の道路は分かりやすいと言われ、京都が例に出される。しかしそれは、碁盤目だけによるのではない。まわりが山・丘陵で囲まれていること、しかも東、北、西と特徴のある風景、南はそれに比べ何もない。曇天でも方角が分かる。これが効いている。道標(みちしるべ)が必要なのだ。一面の砂漠を旅する民たちが、夜旅程をかせいだのは、気温だけではなく、夜空の星が方角の標になったかららしい(星座名には砂漠の民の生活にかかわる語が多い)。

〇道はどのように生まれるか
道の計画を今は地図の上で行う。しかし、測量した地図がない時代から道はある。そして、古くからの街道筋などには風情のある道が多い。

1970年代、新しく計画された街の風情のなさが認識されだし、《環境をデザインする》ということが流行りだした。《都市デザイン》という言葉が使われだしたのもそのころ。
そこで、道の《景観》のつくりかた:《デザイン》が盛んに話題になった。たとえば、京都の清水寺への参詣道は、微妙にカーブし、またつま先上がりに登るため、清水の三重塔が見え隠れする。そこで、道のデザインの一要素として、《見え隠れの手法》が挙げられ、道をわざと曲げたり・・・という《デザイン》に反映されたりもした。

〇「清水道(きよみずみち)」の生まれかた
しかし、「清水道」は、そういうデザイン意識でつくられたのではない。第一、この道は一度に、あるデザイン計画の下にできたのでもない。店が軒を連ねるまでには、百年オーダーの時間がかかっている。
しかも、道が微妙に曲がっているのも、見え隠れを意識したものではない。上掲の地図(等高線は4m、国土地理院発行1万分の1「東山」のコピー図の等高線を強調して作成、茶碗坂の直線部の長さが約400m)を見ると、清水への参詣道は、尾根道と谷筋道とがあることが分かる。いずれも地形を素直になぞった道だ。清水坂、五条坂が三年坂(産寧坂)と合流した後の最も多くみやげ物店が並ぶあたりも、尾根筋のとおりに曲がっている。ついでに言えば、三年坂は谷筋道。このあたりは、複雑微妙な地形に応じて人びとが暮している。

山中の岩から清水の湧き出す地は、観音の居られる地、という清水信仰は古くからあり、はるか昔から(今の清水寺建立以前から:清水寺についてはいずれ触れたい)その場所へ赴く道として、尾根をたどるか、谷を歩むかの二通りがあった。多くの山々の登山道、あるいは峠越えの街道などでも同じである。一言で言えば、道筋が分かりやすいからである。参詣客が増え、茶屋が設けられ、その数も増え軒を連ね・・・そして、今の道筋ができあがった。

〇道のつくられかた・その要点
人が道を開くときの要点は、「体に負担をかけないで最短のコースになること」と、「迷わず分かりやすい」ことだ。
前者で言えば、等高線に沿った曲がりくねる道になる。いわゆる「田舎」の道が曲がりくねる理由である。東京・世田谷の道の分かりにくさは有名だが、それはかつての農村の道のままだからだ。よそ者には分かりにくいが、地元の人にとっては問題がない。
後者の一例が「清水道」。
 
もっとも、八ヶ岳南麓には、人工的に、地形に一切お構いなく、谷越え山越え、直線につくった道が遺っている。「信玄棒道(しんげん・ぼうみち)」と呼ばれ、武田信玄がつくった川中島への直行路:軍事用道路である。

ところで、人が常住する空間で、人工的に、何のいわれもなく道を曲げる《デザイン》をされると、これは迷惑至極。そのいい例が筑波研究学園都市の市中。これについてはまたいずれ。 

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