父の匂い

　帰省の度に母が、父が着ていた衣類を持って行って使って欲しいと云う。「今度クルマで来た時にね」とはぐらかしていたのだが、昨年の秋に帰った時には何としても持って行けと云わんばかりの勢いだったので、仕方なしにニットのベストを二枚だけ持ち帰った。

　特にファッションに敏感だとか、いつも気にかけているタイプではないけれど、それにしたって自分の好みがあり、自分なりに気に入ったもの以外は身に付けたいとは思わない。大体がだ、比較的似た体形だったとはいえ、私の方が父よりウエストサイズは小さいし、足も少しは長い。だからスーツなどは着れたものではないのだが、母にはそれが判らない。そんな訳で仕方なしに持ち帰った二枚のベストであった。

　そして今夜、クリーニングに出さなければならない物があったので忘れないようにと早めに紙袋に入れたついでに、件のベストも一緒にクリーニングに出そうと手に取った。手に取った途端に懐かしい匂いが鼻を突いた。父が亡くなって二年半。果たして亡くなるどれ程前に着たものなのかは知る由もないが、それは間違いなく父の匂いであった。

　毎週撮影・掲載している「恩田の森Now」に、ただいまは1月7日に撮影した写真を5点掲載いたしております。穏やかな年初めの森の様子をどうぞご覧ください。
「恩田の森Now」　http/:blog.goo.ne.jp/ondanomori　

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