鉛筆で書く

 「書く」と言えば、Wordを使ってキーボードを叩いてプリンタで出力するというのがビジネスにおいての普通のやり方になって、久しい。

 広辞苑(第五版)によれば、「書く」とは「先のとがったもので物の面をひっかく意が原原義」であり、
  1.「(筆などで)線をひく
  2.「文字をしるす」
  3.「文を作る」こと
であり、新明解国語辞典(第四版)によれば
  1.「(あとに残すために)表そうとする何かを目に見える形で示す」
ことである。

 PCの画面上で、キーボードを叩いて「書く」作業は、筆やペンを手にして紙に文字を書き記す作業とは随分と違ったものではあるけれど、新明解国語辞典が説く「表そうとする何かを目に見える形で示す」という意味では、まさしく「書く」行為そのものと言える。

 郷秋<Gauche>が「書く」と言えば、勿論「枕」に書いた方法である(最近はプリントさえしないことも多いが)。でも、時には広辞苑が教えてくれた原義の通りに、書くこともある。

 日常的にはボールペンを使うことが多いけれど、手紙の様書きや署名、封筒の表書きには万年筆を使う。それ専用と言うわけではないけれど、細字、中字、太字、極太の4本の万年筆をデスクの引き出しに入れてある(この際、文字が美しいかどうかは別の話である)。

 考えをまとめるために書く時には鉛筆を使う。銘柄にはこだわらないが、Bもしくは2Bを使う。書いた文字を消したり書いたりまた消したり、丸で囲んだりアンダーラインを引いたり、「吹き出し」を書いて注釈を入れたりと、白い紙の上にまったく新しいアイディアを書き付けていく作業は、鉛筆を使うと、楽しく捗る。

 鉛筆は、ナイフで削る。肥後守で削ったのは郷秋<Gauche>よりもずっと上の世代。郷秋<Gauche>が子どもの頃は「ボンナイフ」で削ったものだが、今はそのボンナイフもないからカッターナイフで削る。カッターナイフで削っても、鉛筆を削る作業は楽しい。考えが煮詰まってしまった時、ちょっと疲れた時には鉛筆を削る。削る手を休めてコーヒーをすする。綺麗に削り上がった鉛筆を手に取ると、不思議に新しいアイディアがわいて来る。鉛筆は暖かくて優しい。鉛筆は懐かしくて楽しい。

コメント ( 8 ) | Trackback (  )