慈しむとは、相手にかかりきりになることであり、気が向いたときに慈しむ、ってないのです。
それは滅私ではなくて、相互に、あふれるほど満ち足りた気持ちになり人生が充実し、とても幸せなことなのでしょう。

老人の孤独死が発見されたシーンから始まる。
小鳥の小父さんと呼ばれていた彼は、一羽のメジロを入れた鳥籠を抱えたまま部屋でひとり死んでいた。
検死中に開けてしまった籠から出たメジロは、
小父さんを天国に送り届けるようにひとしきりさえずり外へ羽ばたいていく。
そして彼の生い立ちを振り返る。
幼いころから、自閉症(?)の兄とずっと一緒にくらし、
兄の死後は、自宅でたまたま怪我をしたメジロの幼鳥の面倒をみる。
どこか目新しいところへ出かけることもなく毎日同じ行動範囲の生活。
この閉ざされた環境は、愛情と安心が満ち溢れ、特に兄との関係では、
「威風堂々として、ごく自然で、どこにも疑問を差し込む余地はなかった。」
かえって、
そこでない場所に行ってしまったとき、外部の人とのかかわりが生じて、
それが読んでいてとても危なっかしく不安になるのです。
囀る相手を間違えてしまったかもしれない人生。それでも幸せな人生。
人の幸福のかたちはいろいろある。籠の鳥でも幸せはある。
小川さんのさらさらと流れる文章の中で幸福感に浸れるが、
何かとても切なくなる。
小川洋子 1962年 岡山県岡山市生まれ 薬指の標本、博士の愛した数式 ミーナの行進など作品多数
それは滅私ではなくて、相互に、あふれるほど満ち足りた気持ちになり人生が充実し、とても幸せなことなのでしょう。

老人の孤独死が発見されたシーンから始まる。
小鳥の小父さんと呼ばれていた彼は、一羽のメジロを入れた鳥籠を抱えたまま部屋でひとり死んでいた。
検死中に開けてしまった籠から出たメジロは、
小父さんを天国に送り届けるようにひとしきりさえずり外へ羽ばたいていく。
そして彼の生い立ちを振り返る。
幼いころから、自閉症(?)の兄とずっと一緒にくらし、
兄の死後は、自宅でたまたま怪我をしたメジロの幼鳥の面倒をみる。
どこか目新しいところへ出かけることもなく毎日同じ行動範囲の生活。
この閉ざされた環境は、愛情と安心が満ち溢れ、特に兄との関係では、
「威風堂々として、ごく自然で、どこにも疑問を差し込む余地はなかった。」
かえって、
そこでない場所に行ってしまったとき、外部の人とのかかわりが生じて、
それが読んでいてとても危なっかしく不安になるのです。
囀る相手を間違えてしまったかもしれない人生。それでも幸せな人生。
人の幸福のかたちはいろいろある。籠の鳥でも幸せはある。
小川さんのさらさらと流れる文章の中で幸福感に浸れるが、
何かとても切なくなる。
小川洋子 1962年 岡山県岡山市生まれ 薬指の標本、博士の愛した数式 ミーナの行進など作品多数
人間は決して一人では生きられません。
大勢の方と触れ合ってやっと生活が出来るもの・・・
そうでない方は生きるのが難しいでしょうね。
特にまわりの方たちの生き方は難しいと思います。
やっぱり作家さんって独特の感性をもっているんだなって。
この物語では、面倒をみる人も、面倒をみられる人によって
大きな恩恵を受けていることが描かれています。
ならばそんな生き方ができるかどうか?
その場に立ってみないとわかりませんね~。
本の紹介、面白そうですね。声も聴いてみたいです。
どんな解説をなさるのか興味津々。