漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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長江哀歌(エレジー)(映画)お茶目な映像がたまらない

2007-08-27 | 映画
映像をじーっと見入って密かに楽しむタイプの映画でしょうね。
だから流行り映画のような、軽快なストーリー展開を期待するとつまらなくて寝入ってしまうでしょう。(実際、自分も中盤寝入ってしまった。不覚・・・)
でも、この映像の楽しみに目をやると何度でも観たくなる作品です。

ジャ・ジャンクー監督。ホント、虜になりますね。

取り上げている題材は結構シビアなのに、
(妻を探しに来た男のエピソードは貧困層のきびしい現実を、そして夫を探しに来た妻のエピソードは、富裕層の精神的には貧しい現実を描いている)
ところどころに、ありがちな人の弱みをふっと表現して、
(それも何気なくごく自然に、だから観ていて見逃しそうなときもある)

それに気づいたとき、思わず苦笑してしまう。
ジャ・ジャンクー、なんてヤツだ、って小突きたくなる。


たとえば、
ビルの爆破が起こったとき、
その音に驚いて夫が妻に寄り添う、というより助けを求めるように妻の肘にそっとつかまる


山西から来たその男が炭鉱ならもっと稼げると、三峡ダムで建物解体をしている仲間に紹介するシーン、
ただし命がけだ、と告げたときの彼らの戸惑ったような無言の間。
この間がすごく長い。
男がタバコを投げ与えた一番奥の男までじっくりカメラが移動する。何もいわずにその男はもらったタバコをふかし煙にまみれている。
表情は見えないけど、怯えるほどいろんなことを考えてしまいます。


山西省から夫を探しにきた女性(写真の女性)の話では、
友人に、夫は何も言わないところが問題なの、と愚痴をこぼしている
そして、やっと2年ぶりに会えたのに、

夫「どうした、何かあったのか?」

この言葉は妻にとってはショックよね。
電話のひとつもなくて。そりゃないよ。
だから

妻「あなたとは離婚するわ」

よし、言ってやったぞ、さあ夫なんと答えるのか?

夫「よく考えたのか?」

も~う、ダメ夫としてこんな最高のセリフはないよね。
思わず拍手しそうになっちゃった。


さらにこの監督は、
まったくストーリーとは関係のない
とんでもない『遊び』を映像の中にやらかしています。
なんでこの景色の中にUFOが出現し、不思議な建物がロケットみたいに飛んでっちゃうんだ?
この埒の明かない三峡ダムの中から、宇宙人でもいいからひとっとびに脱出させてほしいと思う気持ちかな・・・

そして、彼は携帯電話がすごくすごく好きらしい。
前作品『世界』の中でも携帯電話は特別な扱いをされてたし。


居眠りしたくせに★★★★ そして次回作が楽しみ

監督・脚本:ジャ・ジャンクー
撮影: ユー・リクウァイ
音楽:リン・チャン
出演:チャオ・タオ、ハン・サンミン


gooWikipedia検索より
住民の貧困化
ダム工事に伴い強制移転を余儀なくされた住民の数は140万人に及ぶ。これら「三峡移民」の多くは充分な補償も受けられないまま貧困層へと転落しており社会問題となっている。

名称旧跡の水没
三峡は中国の紙幣にも描かれるほどの中国を代表する名勝であり、多数の船が国内・国外からの観光客を乗せてクルーズしている。しかし、ダムができることで、長年親しまれていた景観が大きく変わってしまう。