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漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
http://kampo.no.coocan.jp/

椿三十郎(映画)黒澤はやっぱり濃い

2008-01-05 | 映画
今年初めてのブログは映画評です。
縁起がよさそうな漢方の話題でもと思ったけれど、やっぱり今年も気まぐれブログになりそうです。
どうか、よろしくお付き合いください。

        
さて、
お正月映画って今年はダントツ人気のものがないようですね。
それじゃ、椿三十郎でも?って感じて出かけてみたら、思いのほか込みあっていました。わざわざ1000円の日の1日を避けたのに、です。
それくらいほかに見たいものがないとも言える。

さあ、オープニングのあの音楽!
黒澤だー!って感じ。
音楽だけで昭和の雰囲気になっちゃうなんて不思議です。

とはいっても黒澤の作品をしっかり見たわけでもなく、なのに頭の中で、織田祐二の演技をいちいち三船敏郎と比較しているのがこれまた不思議。

黒澤と森田が入り混じってるようでやや消化不良気味かなあ。
織田祐二自身も三船敏郎が頭にちらついてるんじゃないかと思われるような、らしくない演技がしばしば目に付いて、やっぱ黒澤の「濃さ」を拭い去るのが難しそうでしたね。

豊悦はといえば、
いつでもどこでも豊悦って雰囲気で、それが妙に楽しい。
それは彼の演技の幅が広いということでしょうね。。それを越えてなお豊悦ってことです。
最後の豊悦と織田の一騎打ちは、息を飲む迫力がありなかなかでした。


★★★☆それなりに楽しめましたよ。 

監督  森田芳光

出演 織田裕二 豊川悦司 松山ケンイチ 鈴木杏 村川絵梨 佐々木蔵之介 風間杜夫 西岡徳馬 小林稔侍 中村玉緒 藤田まこと

ベオウフル/呪われし勇者(映画)男女のさが

2007-12-04 | 映画
男と女のさがというか、この問題は本当にラビリンスです。

優しく美しく気高き王妃は、王の浮気が許せず跡継ぎを作ろうとしない。


一方、この魔物と恐れられる女は、「富と権力を与えてあげるから子供を産ませて」と男を誘うのです。

魔物の女は子供(この子供が半端じゃない)が育ってしまうと前の男を子供にやっつけさせてまた次の勇者を誘うのだ。

ん~、なんちゅうやっちゃ!
けしからん。

と思うけど、

よく考えると、この両パターンの性格は、あるある、いるいる。
しかも一人の女の中にも存在しているかも。

そして、困ったもので、
勇者の男たちも、魔物の女の誘いを受けなきゃこの悪循環を断ち切り、優しく美しく気高き王妃はりっぱな王子を産んでくれただろうに、いちいち、次々と、やすやすと、魔物の女のえじきになってしまうのだ。

王妃は王に問う、「そんなにその女は美しいの?」
王「・・・ ・・・ ・・・ ・・・」

ん~、やっぱ勇者(男)は呪われている・・・

ホント、男と女の仲は、秘密が山ほど、問題が山ほど・・・


ところで、この映画で話題にしなければならないのは、役者本人と役者そっくりのCGアニメが交錯するつくりだということでしょう。
だもんで、それを見極めようと画面を必死に凝視するものだから、字幕にまで目が行かず、ストーリーが頭に入らなくなることも。

CGもついにここまで、って感じです。

ちなみにマルコビッチは、本人のほうがあたかもCGのようでした。


★★★★  ・・・★をつけるのは難しい作品だけど。

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ボ-ン・アルティメイタム(映画)緊張しっぱなし

2007-11-19 | 映画
とにかく次から次と追われて、息つく暇もないのです。
よくぞここまで緊張させてくれると感心します。
それも、リズム感がいいのか、けっこう心地よくてクセになりそうなほどです。

しかもその場所は、人であふれる駅前の雑踏やら地下鉄構内やら、自動車でいっぱいのせまくるしい道路やらと、見てるほうも思わず頭を振りながら探してしまうような場所ばかり。
どうやってこの映像を撮ったんだろうと、感嘆してしまいます。

前作を手際よく復習してくれるのも気が利いていて、それによって一気にこの世界に舞い戻ってしまいます。
で、その直後からずっと、
「どうなる、どうなる」
「真実はどこで暴かれる???」
と、ドキドキし続けてしまうのです。

マット・デイモンが、すばらしいです。
表情も姿も、思わず息を飲むというか
←これは息をはいてる

そして
「お前が望んだのだ」
よみがえる断片的な彼の記憶をしっかり理解するのは難しいけど、この言葉、ボーンにとってはきっと重いな~。

「なぜ、殺すんだ」
なおも追いかけてきた最後の殺し屋に問いかけるボーンの言葉。
ボーンは、すでに殺人者ボーンではなくなった。
このあたり、じわじわと胸が熱くなってきますよ。
とうとう、ボーンは長い長いトンネルを抜けたのか~・・・・
感慨深いものがあります。

エンドロールの映像もなかなかおしゃれで最後まで見とれてしまいました。

★★★★☆ 
よくぞ連続物をここまで育ててくれました。そしてこの結び方はお見事でした。
(もしもこれをDVDでご家庭で見ようとするなら煩すぎると思うので、是非劇場でごらんください)




ALWAYS 続・三丁目の夕日(映画)

2007-11-06 | 映画
いきなりかい!

って思わず叫びそうになるオープニング!
これは痛快でしたねー。
かなり焦りました。

でもやっぱり「続」って難しいですね。
前回の感動以上のものをどの場面にも求めてしまう自分がすごく残酷
すでに3丁目界隈の事情が分かっているだけに、驚き方が平凡になってしまって、本当にゴメン

でもあの当時の詐欺師の話とか、狂犬病のこととか、そして子供はよく手伝いをさせらされたとか、学校の先生はフツーに生徒の頭を叩いてしつけをしていたとか、細かいトコでシクシクっと思い出を掘り起こされる心地よさ。
もうひとつ上の世代にとっては、戦友を失った悲しい思い出も・・・
(このシーンはなかなかデリケートに作られていました

裕次郎の映画館はこんなだったんだー
私事ですが、この時代の頃
映画館に勤める(入場券を切る仕事)近所の若い女性が幼い私とよく遊んでくれ、そのままおんぶして映画館に行っていたそうです。(母から聞いた話です)
で、帰ってくるとすっかり興奮していて、
「ダダダダダダッ」とドラムを叩くまねを盛んにしていたそう。
で、今回はじめてあの「嵐を呼ぶ男」の熱い上映風景を見て納得しました。
というより、なんでこんなすばらしい体験を思い出として覚えてないんだろうー。
もったいない、情けない


★★★★この時代を懐かしがるだけじゃなく、こんなふうに触れ合いながら暮らせていけたらという願望、忘れかけた理想です。

監督 山崎貴
原作 西岸良平
出演
吉岡秀隆
堤真一
小雪
堀北真希
もたいまさこ
三浦友和
薬師丸ひろ子

ヘアスプレー(映画)人種問題も環境問題も

2007-11-05 | 映画
「やっとここまで来た、まだ先は長いけど」
「歳をとれば強くなれる」
そんなエンディングの歌詞がこの映画のメッセージを伝えています。

時は1962年。日本で言えば今まさにブームの昭和30年代。
アメリカでは、黒人、黄人に対する差別があからさまだった時代。
なんとTVのダンスショーでもホワイトの日とそして週の1日だけブラックの日。
たとえ一緒に踊るとしても、ロープで左右に分けられている!

そんな時代を舞台に借りながら、
実際、「やっとここまで来た」は現在のことを言っているのだろうと思います。
だって今のハリウッドでも白人と黒人が公平に入り混じった映画なんて、お目にかかったことがないし・・・
だからこの映画、驚きました
一見古そうで実はすごく革新的です。

おまけに、「白人たち」の出演者にはハリウッドの大御所たちがなりふり構わずって感じで出演している。
まさに「歳をとればこんなに強い

さらに、環境問題も取り上げられています。
フロンガスでいっぱいのヘアスプレーの売れ行きを表現して
「いまやヘアスプレーを酸素より吸い込んでるぞ」ってセリフ。
商品のイメージを傷つけたと非難するスポンサーに対して
「あんな化学物質なんて」みたいなのもありましたね。
これ、ミッシェル・ファイファーのセリフ。
「ラッシーでも交代してるわ!!」
彼女の徹底していやみな役は痛快でしたね。

★★★★
物語の展開はかなりノーテンキだけれど、がっちりメッセージは伝わりました。


監督・振付・製作総指揮
アダム・シャンクマン

出演
ジョン・トラボルタ
ミシェル・ファイファー
クリストファー・ウォーケン
クイーン・ラティファ
ザック・エフロン
ニッキー・ブロンスキー

パンズ・ラビリンス(映画)迷宮は人の世

2007-10-16 | 映画
「パン(牧羊神)の迷宮」って題名ですが、
観終わってから、よーく考えると、
パンが住んでるおとぎの国より、現実のほうがつらくて悲しくて残酷で、出口のない迷宮だってことですね。
おとぎ話を借りてこの大いなる皮肉は、スペイン映画らしいかも。

スペインの内戦がもつれ込んで山奥でゲリラと軍隊が泥沼の戦いをしているという中に、少女オフェリアと継父の子を宿した身重の母が連れられてくるところから物語は始まる。


継父はその軍の大尉。すごく冷血で惨忍なことを平気でする人間。
そして思わず眼を背けたくなるような(実際そむけた)残酷な殺戮シーン。
こりゃ、ちょっと子供向けじゃないぞー。
でもこれが人間の世界なのだ。

最後は、
試練を越えて無事に(?)命を落とし、人間の体から離れたオフェリアはおとぎの国に戻る。
おや?かつて姫が住んでいた国は地底の光のない国だったんじゃなかったっけ?そして光を求めて地上の人間の国に行ってしまったのでは?
この光り輝く美しい宮殿にいるオフェリアをどう理解するかによってかなり映画の印象は変わってきますね。

そして、
しかし、
つらくて悲しくて残酷な人間の世界に残された人たちは、これからどう生きてゆけばいいのだろう。
「必ず助けに来る」といったのにオフェリアを救い出せなかった彼らは・・・、
生まれたばかりの赤ん坊は父親大尉の呪縛からは逃れられるとしても、父母も姉のオフェリアもいないんだよ。

「現実はおとぎ話のようにはいかない・・・」
なんだか、とってもさびしく心細くなってしまった。


★★★☆  もっと明るい夢が見たかった・・・

スペイン
監督 : ギレルモ・デル・トロ
監督・製作・脚本 : ギレルモ・デル・トロ
出演 : イバナ・バケロ 、 セルジ・ロペス 、 マリベル・ベルドゥ 、 ダグ・ジョーンズ 、 アリアドナ・ヒル

クイーン(映画)日本と違う

2007-10-12 | 映画
あのダイアナ元妃が事故死したときのエリザベス女王とブレア首相のとった行動をドキュメンタリータッチで描いた作品。
役者が本人に似ていて実際のニュース映像とつながってしまいます。

すでに離婚した元嫁がよそで起こした事故に、由緒ある家の元姑がわざわざコメントを出すことはない。それよりも残された孫たちの気持ちをなんとか癒さねば。

それは普通に考えればもっともで、そのようにした女王はしかし、
国民の非難を浴びてしまうんですね。
そこで活躍したのが「ニタニタ笑い」のブレア首相。
結局エリザベス女王よりも、ブレア首相がいい働きをして最終的には彼が英雄だったかなと思ってしまいますが、それも歴史的真実ですから仕方ありません。

それにしてもイギリスの王家は日本の御皇室とはずいぶん違う雰囲気ですね。
だって、女王がジープをひとりで運転して山野を駆け巡っちゃうんですから。
なにかにつけ国民から贅沢だと非難を浴びるので家族の生活もごく普通で案外質素。

その割には、女王は「国にすべてをささげる」というなんだか見えないやたら大きな責任をひとり背負わされているのですから、どうにも大変な職業(?)です。


★★★☆ イギリス人だったらもっと面白く感じたかも。
エリザベス女王役のヘレン・ミレンは本年度アカデミー最優秀主演女優賞を獲得

監督 スティーヴン・フリアーズ
出演もしくは声の出演 ヘレン・ミレン 、マイケル・シーン 、ジェームズ・クロムウェル 、シルヴィア・シムズ 、アレックス・ジェニングス 、ヘレン・マックロリー




エディット・ピアフ~愛の賛歌~(映画)

2007-10-03 | 映画
この華奢な体、
大丈夫かい?と支えたくなるけど、
そのとんがったちいちゃな口から湧き出てくる唄は、
まるでミサイルか大砲のように、聞くものの心を打ち抜くのです。
そして不覚にも感動の涙まで溢れてきちゃって・・・
もう、すごいです。

だけど唄を聞かせるシーンは割りと短めなのです。その分彼女の生き様が強調されてよかったかも。

    
路上で歌う貧困生活の中から見出されはしたものの、ハチャメチャな生活で、
子供の頃は角膜炎で失明しかかるし、若い頃から酒浸りの生活で肝臓を患うし、恋人マルセルの事故死のショックからかリウマチまで発症し、その痛みを紛らすためにモルヒネ中毒にまでなり、壊れかけたロボットみたいに歩くのもやっと・・・

ぼろぼろになって(今朝の新聞の記事をみたらエディットは47歳で逝ったとのこと、映像を見る限りではもっとずっと歳をとってしまったように見えた)
とうとう病に倒れ、死ぬ間際にマルセルの名を呼ぶ彼女。
心から愛したボクサーのマルセル(ナイスルッキングガイでした)、そしてそれは彼女が若い頃に失った幼いわが子の名前でもあったんだね。

そんなストーリーの果てに最後に歌ってみせる歌詞は、

私はなにひとつ後悔することなんてない、過去の過ちは代償を払って清算した・・・

くーっしびれましたー。なんちゅう歌詞やー。


海辺で静かに編み物をするエディットが、インタヴューされるシーンで、
女性に言いたいことは?
男性に言いたいことは?
子供たちに言いたいことは?
その答えはすべて「愛しなさい・・・


★★★★☆ 芸術の秋におすすめ

いろんな出来事を盛り込みすぎて(これはエディットの人生に敬意を払ってのことだと思うけど)流れが切れ切れになるところがちょっと気になりましたが、マリオン・コティヤールの熱演、怪演には参りました。

製作国 イギリス チェコ フランス
監督 オリヴィエ・ダアン
出演
マリオン・コティヤール シルヴィー・テステュー エマニュエル・セニエ ジャン=ポール・ルーヴ ジェラール・ドパルデュー パスカル・グレゴリー

不都合な真実(映画)猶予はありません

2007-09-24 | 映画
アル・ゴア氏の地球環境の危機に関する講義がそのまま映画になったものですが、その内容がショッキングで、居眠りすることなく真剣に「聴講」してしまいました。

この映画では、2005年のデータが最新の情報として論じられていましたが、
松島の全国女性大会での講演のひとつ、東北大学石田秀輝教授の講演では、もうあと20年後には地球の環境がどっと大きく崩れるという予想だと聞きました。

本当に「どっと」なんだそうです。

森はなくなり、海は荒れ、もちろん水位も高くなっていてすでに沈んでいる地域もあり、ヨーロッパあたりはいきなり氷河期に突入する、一方温度が高くなった地域では伝染病が猛威をふるう・・・

20年といえばもうすぐそこで、これはかなりやばいんじゃないかと思って、このDVDをあわてて観たしだい。

      

もう「贅沢は敵」なんですね。

しかし、現時点での改善策はあまりにたよりない。
その大きな原因として、石田教授もおっしゃっていましたが、一度便利とか贅沢を味わった人間は、不便な生活には、なかなか戻ることができないのです。
たとえば、今すぐ携帯やパソコンを使うことをやめろといわれても、そりゃあ、あなたがやれば、って感じですよね。

まさに危機そのものの状態にありながら、いったい何をしたら良いのか具体的には思い浮かびません。
資源ごみを分けて再生を助けるとか、冷房を使いすぎないとか、安易に自動車を使わないとか、そんなんで間に合うんだろうか?
迷いながらも結局昨日と同じ暮らし方をしてしまう、そのおそろしさ・・・

しかし、世界的に見直されている生活方法は、日本人の生活らしいです。
たとえばアメリカ人の生活様式の消費エネルギーは、日本人の数倍多くかかるらしい。
だから日本人のつましい生活方法、「粋(いき)」だとか、「わび」「さび」だとか、そんな精神性に環境を大事にしながら節約する気持ちがあるということです

      

ずいぶん前の新聞で読んだ話を思い出しました。
環境破壊を池の睡蓮の葉にたとえた話です。

池に浮かぶ睡蓮の葉。毎日2倍に増えている。
池の水面半分を葉で覆われたとき、
まだ半分も水面があると思っていたら
明日には水面がまったく見えなくなる。


やっぱり、まごまご迷っても仕方がなく、できることをやりましょう。

★★★★★ 
★をつけるのは意味がない作品。とにかく多くの人がこれを実感しなければなりません。






王の男(映画)

2007-09-10 | 映画
DVDで観ても、映像の美しさに感動します。
ストーリーの展開はいかにも韓国らしい明快さ。
王のどこまでもゆがんだ性格とか、民衆のいじけた生き方とか、
それぞれの役の性格がはっきりしていてわかりやすい。
そして哀愁を帯びたエンディングは、韓国映画得意のパターンでしょうか。

といいながらも、物語の展開にけっこうのめり込んじゃいました。
韓国の王室の衣装や料理は、かつてのTVドラマ「宮廷女官チャングム」を思い出してしまいます。

それにしてもイ・ジュンギの容姿は美しい。
彼の美しい姿を大きなスクリーンで観てたりしたら、韓国映画にはまってしまったかもしれない。(くわばら、くわばら・・・)


しかし、ジャ・ジャンクー監督の「長江哀歌」の直後ということでちょっととまどったかな~

★★★☆(劇場で観てたら★が増えてたかも・・・)

監督 イ・ジュンイク    脚本 チェ・ソクファン
出演 カム・ウソン  イ・ジュンギ  チョン・ジニョン  カン・ソンヨン


長江哀歌(エレジー)(映画)お茶目な映像がたまらない

2007-08-27 | 映画
映像をじーっと見入って密かに楽しむタイプの映画でしょうね。
だから流行り映画のような、軽快なストーリー展開を期待するとつまらなくて寝入ってしまうでしょう。(実際、自分も中盤寝入ってしまった。不覚・・・)
でも、この映像の楽しみに目をやると何度でも観たくなる作品です。

ジャ・ジャンクー監督。ホント、虜になりますね。

取り上げている題材は結構シビアなのに、
(妻を探しに来た男のエピソードは貧困層のきびしい現実を、そして夫を探しに来た妻のエピソードは、富裕層の精神的には貧しい現実を描いている)
ところどころに、ありがちな人の弱みをふっと表現して、
(それも何気なくごく自然に、だから観ていて見逃しそうなときもある)

それに気づいたとき、思わず苦笑してしまう。
ジャ・ジャンクー、なんてヤツだ、って小突きたくなる。


たとえば、
ビルの爆破が起こったとき、
その音に驚いて夫が妻に寄り添う、というより助けを求めるように妻の肘にそっとつかまる


山西から来たその男が炭鉱ならもっと稼げると、三峡ダムで建物解体をしている仲間に紹介するシーン、
ただし命がけだ、と告げたときの彼らの戸惑ったような無言の間。
この間がすごく長い。
男がタバコを投げ与えた一番奥の男までじっくりカメラが移動する。何もいわずにその男はもらったタバコをふかし煙にまみれている。
表情は見えないけど、怯えるほどいろんなことを考えてしまいます。


山西省から夫を探しにきた女性(写真の女性)の話では、
友人に、夫は何も言わないところが問題なの、と愚痴をこぼしている
そして、やっと2年ぶりに会えたのに、

夫「どうした、何かあったのか?」

この言葉は妻にとってはショックよね。
電話のひとつもなくて。そりゃないよ。
だから

妻「あなたとは離婚するわ」

よし、言ってやったぞ、さあ夫なんと答えるのか?

夫「よく考えたのか?」

も~う、ダメ夫としてこんな最高のセリフはないよね。
思わず拍手しそうになっちゃった。


さらにこの監督は、
まったくストーリーとは関係のない
とんでもない『遊び』を映像の中にやらかしています。
なんでこの景色の中にUFOが出現し、不思議な建物がロケットみたいに飛んでっちゃうんだ?
この埒の明かない三峡ダムの中から、宇宙人でもいいからひとっとびに脱出させてほしいと思う気持ちかな・・・

そして、彼は携帯電話がすごくすごく好きらしい。
前作品『世界』の中でも携帯電話は特別な扱いをされてたし。


居眠りしたくせに★★★★ そして次回作が楽しみ

監督・脚本:ジャ・ジャンクー
撮影: ユー・リクウァイ
音楽:リン・チャン
出演:チャオ・タオ、ハン・サンミン


gooWikipedia検索より
住民の貧困化
ダム工事に伴い強制移転を余儀なくされた住民の数は140万人に及ぶ。これら「三峡移民」の多くは充分な補償も受けられないまま貧困層へと転落しており社会問題となっている。

名称旧跡の水没
三峡は中国の紙幣にも描かれるほどの中国を代表する名勝であり、多数の船が国内・国外からの観光客を乗せてクルーズしている。しかし、ダムができることで、長年親しまれていた景観が大きく変わってしまう。




リトル・ミス・サンシャイン、善き人のためのソナタ(映画)

2007-08-24 | 映画
久しぶりにレンタルDVDで、自宅の居間で映画を楽しむことにしました。
『リトル・ミス・サンシャイン』と『善き人のためのソナタ』

どちらもうわさどおり、とてもよかったのだけど、
自宅だと、
昼間は外が見えるので気が散って落ち着かないったらありゃしない。
夜に観ていても、いつもの癖でなにかと用事を思い出してしまう。

結局「ながら映画」になってしまって、微妙なセリフとか表情
見逃してしまい感動半減
やっぱり映画をみるなら映画館だわね~。

というわけで、映画感想はかなり大雑把だけど・・・


「リトル・ミス・サンシャイン」
家族のバラバラ感って、こんな感じだよね。あるあるって共感しました。
そして次々と沸き起こるトラブルの連続。
それらの表現が実に軽快。それこそわき見している暇もないほど。
だけどこれを解決するみんなの姿が、ホント、いいのよね。
最後の、おじいちゃんから教わったダンスを踊る覚悟を決めた末娘のシーン
とても頼もしかったです。

★★★★☆



「善き人のためのソナタ」
社会主義だった東ドイツの物語。
この盗聴するおじさん、はじめは体制派の陰険な人かと思っていたら、いつの間にかいい人になっていました。
どこがどう面白いのかよくわからいないけど、ついついじーっと見入ってしまう。
そして最後には、よかったな~、いい人だったな~と、心から満足してしてしまう不思議な映画。

★★★★



夕凪の街 桜の国(映画)知っていなければならないこと

2007-08-16 | 映画
セリフが、まっすぐで、
本音がドスンと、
観るものの心に打ち込まれる感じでした。

原爆が落とされた『夕凪の街』広島。
あれから13年目にして白血病を発症し
命が消えようとしているうら若き皆実(みなみ)のセリフ・・・
『原爆は落ちたんじゃない、落とされたんよ』
『13年たってまた死ぬ人がひとり増えて・・・原爆を落とした人は、ヤッター!ってよろこぶんかの・・・』

弱弱しく、弟の旭(あさひ)に語るシーンは
悲しくて悲しくて涙が溢れるけど、
このセリフは、驚愕するほど痛烈。


また、原爆による惨い家族の死を見送り、
自分だけ助かった、幸せになっては申し訳ない、と思う後ろめたさ
被害を受けた人々が、そんな思いで悩むなんて、戦争はなんと残酷なんだろう。

銭湯でのシーンの、
ほとんどの人が火傷あとのケロイドを肌にしょっている姿は衝撃でした。
もう13年もたっているのに・・・




そして時は過ぎ、平成の時代。
弟、旭の子供たちも20代となり年頃を迎えている。

日本は、桜がたわわに咲く美しい国によみがえった。

だがここにいたるまでに、母と祖母を失った
旭の娘、七波(ななみ)のセリフにドキッとします。

42歳で吐血して死んだお母さんのときも、
80歳以上生きて死んだおばあちゃんのときも、
だれも原爆のせいだなんて問われることもなかったのに・・・

原爆被害者だと認めてくれもしなかったということなのでしょう。

しかし現代に至って、親戚や家族に原爆被害者がいるということで、
結婚のこととなると偏見を持って迎えられる現実があったのです。

なんということでしょう。

戦争の事実、原爆の事実、真実をしっかり伝えなけらばならない。
どっちが勝ったとか、負けたとか、
謝った、謝らないの問題は、
おそらく泥沼になるだろう。
だけど、
戦争はしてはならない
核による残酷さはこうなんだということを
世界に知らせていく義務が『桜の国』日本にはある。

そして、無益な戦争によって死んでいった
「もっと生きたかった」人々のためにも
日本人は幸せに暮らして「長生きし」なければならない。


★★★★★忘れてはならない大切なことを表現した映画
この映画が是非、多くの機会を得て日本人だけでなく
世界中の人々に観てもらえるよう応援したい。

皆さん、この映画を観ましょう!

夕凪の街 桜の国 公式ページ

監督:佐々部清
(出口のない海 四日間の奇蹟 半落ち カーテンコール チルソクの夏 )

出演:中越典子 吉沢悠 堺正章 麻生久美子 藤村志保 田中麗奈




天然コケッコー(映画)同じ空気に浸ってしまう

2007-07-30 | 映画
まずこのポスターに釘付け。
公式ページで大きい写真をみてね。

この子らの笑顔は、どうだ!
なんと屈託のないいい顔をしてるんだろう。
こんな空気はすごくなつかしいというか、めずらしいというか、
一目ぼれみたいな妙な動揺を感じてしまいました。

そうしたら、映画の中もこのポスターそのままでしたね。
はじめは、いったいどんな展開が待ち受けているんだろうと、
ちょっとはすに構えていたりするんだけれど、
気がついたら、
なんの違和感もなく、
彼らの学校や家族や隣人たちの中にどっぷり浸りこんでいて、
その心地よさから抜け出られなくなっている

ストーリーはといえば、
特別な事件が起こるわけでもないので説明するのが難しいくらいだけど、
毎日がとにかく、ゆたかで、忙しくて・・・
幼い頃、1日がとてつもなく長く思えたのは、こんなことだったのかな~、
と気づかされたような・・・

修学旅行先の東京で、女学生(そよちゃん)、
雑音の多さに倒れそうになりながらも
その中に山や海と同じ音を見つけて、
都会を嫌いだと拒絶するに終わらず
「きっと(東京と)仲良くなれるときがくる」と思う心の余裕。
すばらしいと思った。

ハンズで「肌が白くなる石鹸」を友達のお土産に買おうとした場面、
それを買って渡したら逆に相手を傷つけることになる
という気づきに、ちょっとしたことだけど、
すごくうれしくて、笑った。

中学の女学生3人の微妙な関係のバランス。
幼い二人の女の子の頼りなさと
水のようにきらきら光ってるような純な心。
そして東京から転校してきた中学男子。
観賞後にこの男子のとった言動を思い出すと、
ひとつひとつが
なんというか、
でれ~ってした気持ちになるんだよね。
彼はある意味、女性にとって理想の男性形だろうね。
少なくとも私と原作者くらもちふさこさんの。


満点★★★★★:こんな映画をもっと作ってほしい


監督 : 山下敦弘
原作 : くらもちふさこ
出演 : 夏帆 、 岡田将生 、 夏川結衣 、 佐藤浩市 、 柳英里沙

天然コケッコー - goo 映画


ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 (映画)やっぱりこの程度って感じ

2007-07-24 | 映画
このチャキチャキしたおばさん、
どんだけ悪人なんだろう?
もしかしたらヴォルデモートとつながりがあるんだろうか?
と、期待してみてたけど、
そんなにひねったストーリーはなく、
単なる体制派のわからずやってだけでしたね。

そして
シリアス・ブラックを中心とした「不死鳥の騎士団」
これまでの物語に出演した味のあるメンバーが、ずらっとそろったところはうれしいけれど、副題になっている割にはあっさりした出番で、
もっともっと彼らに活躍してほしかったなあ。
これだけの役者たちをもったいない扱いをしてると思うよ、ホント。


全体的に
ストーリーを追うのに精一杯って感じで、1本の映画としての盛り上がりに欠け、
やっぱり、この程度かとまたしてもちょっと落胆。

きっと、毎回毎回、期待を膨らましすぎるんだろうと思う。

それにしても、
観なきゃ気持ちがおさまらないこの映画。
すっかり、風物詩化してしまった感がある。


星の数は、ま、ふつうって感じ・・・★★★