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主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

第21回博麗神社例大祭戦利品レビューその⑨

2024-06-23 15:51:03 | 同人誌感想
 実はまだ終わっていない例大祭新刊レビュー。さらには待望の秘封新作もまだ聞いてないという。
 もう6月も終わってしまうので、今月中には例大祭新刊レビューは完了しておきたい。
 
・ムガムビル9(薬味さらい)
 いよいよ次は2桁の大台というところまで来たゾウノセさんの総集編。今回は5作品+描き下ろしが収録されています。今回は全体的にけっこう珍しいキャラの絡みが多かった印象。
 それでは収録作品ごとに感想を。
 
・花椒娘
 タイトルは「ホアジャオニャン」と読みます。
 これまでこのサークルさんの作品を読んできた人ならこのタイトルだけで色々察することでしょう。薬味さらいさんはもはや自分の中では半分くらいグルメ漫画サークルさんという認識になりつつあります。
 のっけから「炙り照り焼き人間サンドイッチ」とかいう衝撃的なメニューが登場する本作ですが、要するに咲夜さん渾身のデレ「わたしを食べて♡」が炸裂する濃厚なめーさくでした。やっぱこのサークルさんの咲夜さんてサイコだよ……怖いよこの人……。
・さよならビースト
 少し前くらいから東方でいちばん好きなキャラであるところのルーミアの出番が増えてて俺によし。というわけで本作はなかなか珍しいルーミアと星をメインに据えたお話。
 じゃあこの二人でどういう話が展開されるのか?ということなんですが、テーマは「狩って食う」ということ。
 東方Project的妖怪観は非常に独特ですが、幻想郷における妖怪ってそもそも「特定のルールに従っていることで成立している存在」なんですよね。そのルールの中でも代表的なものが「妖怪は人を襲う」ということ。じゃあ東方に登場する全ての妖怪がこのルールに従っているかと言われればそうでもない。
 本作のルーミアと星という一見関連がないに見える二人は、かたやめんどくさがって自分から人を襲わない、かたや毘沙門天の使いでお寺の御本尊としての立場があるというそれぞれの理由で積極的に人を襲いません。そういった意味ではこの二人は例外的な存在なんですね。
 本作ではこの二人にカメラを合わせて他の生き物を狩って食う「獣性」とそれに対する「人間性」の対置構造を描いていると感じました。
 ラストでルーミアは迷いなく人間の喉笛に食らいつき、星は結局人間を襲えなかった。この分かれ目を二人の決定的な違いとして提示しておいて、さらにダメ押しとばかりにルーミアから勧められた人肉を「戒律を理由に断る描写」を入れることで、星は決定的に獣としての自分に別れを告げたということを描写しているのがさすが。
 二次創作の楽しみのひとつに「意外なカップリングによるキャラの掘り下げ」があると思ってるんですが、本作はまさにルーミアと星という意外なカップリングを使った、星の持つ「獣性と人間性の対立」という掘り下げを行った作品だと言えるでしょう。
・スワコカエル
 メタスラで見たぞこれ。
 薬味さらいさんの作品の中ではおぜう様に次いで扱いが酷い印象のある諏訪子ですが、今回はどんぐりになるという斜め上の虐待を受けています。もっと諏訪子さまに優しい扱いがあろうもん……。
 タイトルは「帰る」「孵る」「蛙」のトリプルミーニングでしょうか。
 ふとしたことから土に還ってしまった諏訪子がどんぐりとなって、器を得て再誕するという本作の一連の流れは実に神話的、寓話的で好き。なんとなく大長編ドラえもんみも感じます。
 ハイテンションけーき様が大量生産する諏訪子再生体のバラエティ豊かな姿になんだかGガンダム終盤を思い出しました。
 そして諏訪子を復活させるために作った「核」が縄文土器というので「だからどんぐりなのか!」と気づくこの快感よ。すっかり妖怪カエル女のイメージが定着してますが、いわゆる「旧き神」なんだよなこの人。
 ギャグなのかシリアスなのかよくわからん話でしたがそれがいい。というかこれって諏訪子の体を張った一発芸的なものだったのでは……。
・刃傷!惨状!!いざ陳情!!!
 このタイトルのリズム感よ。日本語って美しい。
 「犯人はお前! 被害者は私!?」このリズム感よ。日本語って美しい。
 新作が出る事にキャラがブレブレで有名な妖夢ですが、久しぶりに辻斬りキャラを見た気がします。
 シリアスな作品のイメージが強い本サークルさんですが、本作は思いっきりギャグ方向にアクセルを踏んだ作品。妖夢の半霊がシャッフルされたところで崩壊しました。でも妖夢って原作とか公式書籍でもこのくらいすっとんきょーな子なんだよな。
 そして死体の隠滅方法として紅魔館があまりにも便利すぎる。
・神神神
 衝撃的なシーンから始まる本作、読む前の段階でタイトルからいろいろな想像ができます。
 東方Projectの世界にはたくさんの神々が存在しますが、その在り方はさまざま。しかしひとつ共通しているのが、彼女らは決して万能不惑の完全存在ではないということ。
 作中の言葉を借りれば、彼女らは神そのものとしての権能を持ちながら、人間以上に「慕い、妬み、絆され、猛る」存在なのです。そして本作の事件の発端であるてゐの傷もまた、八十神の呪いによるものという。
 神々の姿がたくさんの信仰や言い伝えが習合されて出来上がったものであるように、諏訪子や神奈子、永琳といった人物もまたさまざまな縁に繋がれ、さまざまな業を抱えた人間以上に情け深い存在として描かれていると感じました。
 そしてエイトフレンズってなんだよ……。
・描き下ろし「EATER」
 さて恒例の総集編の本番とも言える描き下ろしですよ。
 毎回収録された作品の内容を非常にうまくまとめた内容になっているのがすごく好きな描き下ろしなんですが、今回の収録作はどれもかなり異色なものだったので、これをどうやってひとつの話にまとめ上げるのかと楽しみに読み始めました。いやーまとまるもんだなあ……。
 八十神の一件が人里に知れ渡ってしまったことから、「因幡の白兎」のエピソードで知られる和邇(ワニ)への畏れが広がってしまいます。その畏れはほどなく実体を得て各地で暴れ始め……。
 なんでこの収録作をまとめて「けものフレンズwith川のぬし釣り」が始まるのか。
 そして咲夜さんはなんでこんなノリノリでエサ役に立候補してるのか。なんか今回の咲夜さん全体的にはっちゃけてるよな。
 収録作の内容を「捕食者vs被食者」の構図に落とし込んで、うまくキャラや収録作のネタをはめ込んでいるのは流石の一言。本作の……というか本サークルさんの作品における「戦い」は、どれもただの殴り合いではなく「事態解決のためのパズル」なんですよね。メタ的な意味でも本サークルさんの作品の作り方、特に総集編における描き下ろしパートの作り方はパズル&ロジックだと思っています。
 群れで襲ってくる和邇の分霊に対しては同じく集団である八十神をぶつけ、そして本来爪も牙も持たない被食者であるはずの「人間」でありながら同族を日常的に食料として処理している例外存在である十六夜咲夜のもとに追い立てる。このロジックの通り方が実に気持ちいい。
 そして最後は勝利のBBQというのが実にこのサークルらしい。なんかもう薬味さらいさんは小豆粥さんと並んで東方界隈における2大飯テロサークルになってきた気がします。
 
 今日はここまで。
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