A Day in The Life

主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

塚口サンサン劇場「ZOO」見てきました!

2024-06-20 23:00:48 | 映画感想
 映画好きのみなさんなら、深夜放送の映画を見た経験があるでしょう。
 深夜放送の映画はいわゆるエンターテイメント系の映画とは異なってアート系のものも多く、深夜という時間帯もあってまるで異世界を覗き見ているような気分になったものです。
 塚口で上映される作品の中には、まさにそうした深夜放送の映画のような普段知ることのないものが多いもの。塚口はまさにそうした、今までまったく知らなかったような深夜放送の映画に突然出くわす楽しみが味わえる場所なのです。
 今日見てきたこの作品も、そんな作品のひとつ。
 
 
 本作は「ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティブ」と題して上映されている作品のひとつ。
 例によって例のごとく作品のことも監督の名前もなーんにも知らず、ポスターのビジュアルインパクトに心の妖怪アンテナが反応したので見てみることに。
 双子の動物学者オズワルドとオリヴァーは交通事故で同時に妻を亡くしてしまいます。彼らはそのショックから、動物の死骸が腐敗していく様子を観察することに偏執的なこだわりを見せるように。片足を失いながら事故から生き延びた女性アルバと二人は次第に親しくなっていくのですが……。
 本作でもっとも印象的だったのはもちろんそのビジュアルインパクトでしょう。本作は劇場では初となる無修正での上映となっており、動物の死骸が腐敗していくさまも隠すことなく映し出されます。しかし本作のビジュアルにおいてもっともインパクトを感じたのは、偏執的なまでに繰り返される左右対称の構図でしょう。
 ポスターで大きなインパクトを見せている全裸で椅子に腰掛けるオズワルドとオリヴァーはもちろんのこと、アルバを中心に左右に座るオズワルドとオリヴァーの構図は執拗に繰り返されます。普通の映画のように登場人物の顔に寄るショットはほとんどなく、なんらかの形で左右対称の要素を入れている。カメラのパンもほとんどなかったと思います。特にアルバ、オズワルド、オリヴァーの3者がいる部屋を映すときはほぼ必ず引いたショットで全員を映すことが徹底されていました。
 このように気味が悪いほど徹底したカメラアングルで、動物の生態や腐敗の過程を交えて映し出される本作のビジュアルは異様でありながら同時に均整と調和を感じさせます。
 まったくの偶然で昨日ちょうどアマプラで「岸辺露伴は動かない」の「ジャンケン小僧」の回を見てたんですが、その中に「3はもっとも安定した数字」という言葉が出てきたのを思い出しました。
 そして本作の作中では、「腐敗は対称性が崩壊するところから始まる」という言葉も出てくるわけですね。この言葉が象徴するように、本作は「交通事故で同時に妻を失う」という形でのオズワルドとオリヴァー対称性の崩壊からスタートし、アルバを巡ってその対称性が激しく変化し、最終的にお互いの死という形で対称性が安定すると思いきや……。
 この「対称性の安定と崩壊」に関しては、タイトルですでに暗示されているようにも思えます。タイトルは「ZOO」であり「OZO」ではない、という。
 正直なところ今の段階で本作に含まれている寓意や暗示をすべて取り上げることはとてもできません。ギリシャ神話になぞらえた寓意は確実にあるはずなんですが……。
 塚口ではこうしたいわゆるアート系の作品も多数上映されていますが、本作はその中でも久しぶりのがっつりアート系の作品でした。
コメント
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