はい、今日も今日とて塚口です。
今回見てきたのはこれ。
例によって例のごとく、本作も塚口での上映がきっかけで知った作品。
内容は、知人の結婚式に参加していた主人公・サラが、やたら脳天気な男・マイルズと知り合ったことをきっかけに、同じ1日を繰り返すことになるというタイムループもの。
タイムループはもうすっかり1ジャンルとなっていますが、本作で新しいのはタイムループの先客がいること。
マイルズはサラより先にタイムループに陥っており、パンフレットによれば40年近くループ状態を経験しているとのこと。
そういや冒頭ではマイルズは、結婚式で踊ってる人の動きを完全にトレースしたり酔いつぶれた人が倒れるタイミングでイスを差し出したりといった明らかにおかしい行動をとってましたね。
「まるでこれから起こることをあらかじめ知っているような行動」は、タイムループものやタイムトラベルものではお約束ではありますが、マイルズの脳天気な行動はすべてループからの脱出を諦めた諦観からくるものだとわかると、こうした行動も空々しく感じます。
そこに今までいなかった存在であるサラが現れ、二人は永久に続くバカンスを楽しみます。
この辺は本当に能天気にやってて実際楽しそうなんですが、この作品のテーマである「すべてが無意味な世界でなにに価値を置くのか」と言う疑問から自分を遠ざけるための逃避行動なんですよね。
すでに諦めてしまっているマイルズとは対象的に、サラはループから脱出しようと試行錯誤しますが結局自暴自棄な行動に走ってしまいます。
この辺のすれ違いからの二人の心が再び交わるまでの過程はとてもよかった。
一つのタイムループの中に異なる経験を持つ人物が二人いるという特色をうまく使った展開だと思います。
また、このタイムループの中にはもうひとり、マイルズを個人的な恨みから付け狙うロイという老人が登場しますが、このロイはサラとはまた異なる形でマイルズに関わる重要なキャラクター……というよりむしろ、こうなれるかもしれなかったマイルズの姿だったんじゃなかろうかとも思います。
諦観からループの中での生活を受け入れることを余儀なくされたマイルズとは異なり、ロイは妻や子供に囲まれた1日を穏やかに過ごしています。
最終的にサラとマイルズはループからの脱出に成功しますが、ロイはループの中に残っています。
そしてエンドロールにて「自分を知らないマイルズ」に出会い、ロイはマイルズがタイムループからの脱出に成功したことを悟り、笑顔を浮かべます。
前述の通り、「ループの中に複数の人物を配置する」というのが本作の最大の特徴なわけですが、その特徴がいちばん効いてたのがこのラストショットだったと思います。
サラという「一緒にループを脱出してくれる存在」だけでなく、ロイという「ループから脱出したことを見届ける存在」がいることで、本作のラストは非常に感動的なものになっていたと感じました。