A Day in The Life

主に映画、ゲーム、同人誌の感想などをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはいいトシしたおっさんのブログ。

塚口サンサン劇場「ユニコーン・ウォーズ」見てきました!

2024-06-15 23:44:51 | 映画感想
 今日は歯医者に行ってきました。
 こないだの日記で書いた欠けた奥歯は親知らずになっているそうなので、来週抜歯することになりました。歯を抜くなんていったい何年ぶりのことだろうか……。むかーしむかし紅顔ありし頃に歯を抜いたときはだいぶ痛かったですが……2024年の歯科学の発展に期待したいところ。
 さてせっかく外出したので行けるときに行っておこうということで歯医者が終わった後にその足で塚口へ。
 今日見てきたのはこれ!
 
 
 これまた塚口のポスターがきっかけで知った作品。
 本作は魔法の森を舞台にしたテディベアとユニコーンとの戦いを、可愛らしいキャラとゴア描写全開の展開で描いた怪作。コンセプトは「地獄の黙示録×バンビ×聖書」!
 完全に悪魔合体としか思えない本作の率直な感想を一言で書くとちいかわじゃねーかこれ!!
 しかも本作はちいかわに比べると大幅に、そして意図的に露悪的なストーリー展開になっています。
 一見かわいらしくファンシーなキャラデザインの中にも、目元や眉間のシワや影などがしっかりあり、そのギャップが本作のキャラデザに独特のグロテスクさを与えています。可愛らしいキャラデザはグロさを緩和するどころかむしろ増強する方向に働いているのが面白いところ。
 見ているとこの可愛らしいキャラデザはある種のフィルターであり、「実際」にはもっと陰惨な光景が繰り広げられているのではないか、あるいはこの可愛らしいキャラデザというガワをかぶせたことでここまで陰惨な展開を描けたのではないかと思います。
 本作はコンセプトのひとつに「地獄の黙示録」を挙げているとおり、主人公であるアスリン、その双子の兄ゴルディが所属している部隊は、魔法の森で行方不明になった友軍を探しながら凄惨な戦闘を繰り広げます。
 本作にはテディベアvsユニコーンという対立構造がありますが、ユニコーン側は積極的にテディベア側に攻め込んでいるわけではないので本作における戦いはある意味テディベア側の独り相撲に見えるんですよね。
 テディベアたちはユニコーンを全滅させてその血を飲めば永遠の美を手に入れられると信じて戦っているわけですが、実際にユニコーンの血を飲んだゴルディがどうなったかと言うと……。
 そもそもテディベア側は(戯画化されているとは言え)完全なディストピア社会。軍は果のない訓練と戦いを延々と続けているし、上層部は腐敗しています。ユニコーンとの戦争で疲弊していると言うよりは徐々に自滅への道を歩んでいる状態なんですよね。
 そして本作は徹底して救いのない展開の連続です。より厳密に言えば、一般的に救いとされている成功や家族や勝利や宗教や信仰がまったく救いとして機能していない物語です。
 過酷な訓練で優秀な成績を収めても、家族がいても、神を信仰していても、それらは彼らを苦しめるだけで決して救ってはくれない。なぜなら、彼らの苦しみの根源はそこにこそあるから。
 これは自分の言葉で感想を書く前にはあんまりやらないほうが良いかなーとも思うんですが、帰りの電車でパンフレットを読んでました。その中に繰り返し出てくるワードとして、「有害な男らしさ」というのがあるんですね。
 誰かを支配する、誰かを蹴落とす、誰かを排除する、そういった行動でしか証明できない歪んだマッチョイズムこそがテディベアたちの歪みの根源だと思います。それを端的に表しているのがゴルディのたどる運命と行き着く結末でしょう。
 反面、アスリンはその有害な男らしさからいったんは逃れ、敵対していたユニコーンとも共存できるようになったかに見えますが、結局は彼も破滅への道を歩むことになります。
 そして無數のテディベアとユニコーンたちの屍を取り込んで生まれた巨大な怪物、その姿はまさにヒト、という……。
 「地獄の黙示録×バンビ×聖書」という一見めちゃくちゃに見える組み合わせですが、最後まで見ると本作は確かに地獄の黙示録でバンビで聖書でした。なんでこの組み合わせで作品が成立するんだろう……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする