崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

『純平』(ハート出版)

2017年07月09日 05時45分34秒 | エッセイ

 動物を愛することは人本主義に逆行するものであろうか。人は言うはずである。貧困ハンガーの人も多いのにと。しかし愛犬などが人間愛、人類愛に還元することは、多くの人が経験的に知っている。『純平』(ハート出版)は瞬間接着剤で目をふさがれ、寒い公園に捨てられた犬だった。生まれてまだ二ヵ月の子犬だった。純平君は少しずつ目が開き、視力を取り戻した。私と家内はこの本を読むのに辛く、そして救われ、人間の愛憎の喜悲の感が交差した。動物虐待と愛とが揺れ動くのはなぜだろう。マイケルさんは「日本の恥」を越えた例である。純平君に関わった人々の愛情と責任感。虐待を乗り越えて、言葉ではなく行動で傷ついた人々の癒しになり、多くの人々に愛され、長寿を全うした純平の物語に心が温まる。
 私の家内は韓国の伝統的な雑種のドンケ(糞の犬)をもらって部屋で飼っていた。犬が食卓に近づくだけ嫌だった。まして食べ物を噛んであげることに酷く抵抗感を持った。そんな私が今では家内のようにしている。私の人生観が大きく変わった。韓国から犬を連れて日本に着き、空港では犬が人気者になった。20歳を超える長寿だった。ある日犬をめぐる夫婦喧嘩になった中年夫婦が訪ねてきた。私の経験談を語った。犬に関わった経験のある方もない方も、この本はぜひ愛読されるように勧めたい。




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