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朝鮮人従軍慰安婦の写真集『重重』




日本軍部隊に朝鮮で徴用され、中国の日本軍部隊に慰安婦として搾取され、戦後、故郷の朝鮮に帰ることができなくなった元日本軍従軍慰安婦たちの物語である。著者の安世鴻(アンセホン)氏が、中国で暮らしている元日本軍慰安婦の存在を知ったのは、2001年のことという。以降、中国各地を訪れては、その暮らしを写真に収めて来た。

昨年、新宿のニコンサロンで予定されていた「重重」写真展が、直前に中止を通告され、東京地裁に仮処分を申し立てて開催にこぎつけたことは、新聞報道などでもよく知られている。去年、ぼくも、ボディチェック装置まで備えた、過剰な警備の中を開催された写真展に行ってきた。このときは、おもに、写真だけだったが、今回、書籍になった本書を読んで、新たな衝撃を受けずにはいられなかった。文章がついている分だけ、ハルモニ(おばあさん)たちの苦渋に満ちた過酷な人生と現在の老いが切実に迫って来る。写真に添えられた文章を読みながら、われわれは、いったい、同じ人間に何をしてしまったのか、という問いが繰り返し、頭の中を過る。

従軍慰安婦は、朝日新聞とNYタイムズが作った捏造だとか、ほかの国もやっていたとか、すでに国家間の賠償は済んだとか、そんな薄っぺらい正当化は、彼女たちの実存的苦悩の前では、何の意味ももたないことがよくわかる。そして、あの戦争が明らかに、侵略戦争だったことが、感得されてくるのである。侵略の本質は、「暴力」である。朝鮮半島で良いこともした、などという言説が、いかに手前みそで幼稚なものかも見えてくる。インフラ整備などは、効率的な植民地経営の一環だったにすぎないのだから。

この夏、多くの人に読んで欲しい一冊である。


安世鴻(アンセホン)著、大月書店、2500円。翻訳も読みやすい。植田祐介訳。



重重: 中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の物語
クリエーター情報なし
大月書店









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一日一句(773)







子どもとは走るものなり夏休






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