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L・Wノート:確実性の問題(15)


■旧暦8月29日、水曜日、

(写真)ハロウィーン

朝、詩人の柴田三吉さんと草野信子さんが共同で発行している詩誌「junction 76」を読む。この二人の詩人の清冽な言葉を読むと、いつも、なにか、生きることの原点に触れたような気がする。二人の往復書簡から、「信行文動録」という言葉を知る。信は、通信、行は詩行、文は散文、動は運動、録は記録(日記)。一日の仕事の順番を決めた座右の銘である。理想的な仕事のスタイルであり、習慣だと思う。介護や兼業など、なかなか、ノイズが多くて、このとおりにはいかないけれど、50代はこれを実現したいなあ。ちなみに、この座右の銘を考案した詩人の平出隆は、40代をこの方針ですごし、やがて、放棄してしまう。そして、二十年後に回想して、「大仰にいえば、ここに私の生涯の課題はほぼ尽きていたと見える」と書いている、という。恵まれた生涯とも言えるのではなかろうか。



124. Ich will sagen: Wir verwenden Urteile als Prinzip(ien) des Urteilens.   Wittgenstein Über Gewißheit Suhrkamp 1984 

わたしは、こう言いたい。われわれは、いくつかの判断を、特定の判断を下すための原理(あるいは諸原理)として使用していると。


■この原理として使用されている判断が、世界像、イデオロギーということだろう。その世界像・イデオロギーの根拠は、ない。それを支えているのは、社会集団であり、文化とも言える。この場合、「支えている」とはどういうことか。特定の判断様式、すなわち、行動様式を集団の成員が覚え込んだということだろう。

問題は、マルクスやルカーチ、マンハイム、インガルデン、あるいはヴェーバーなどのイデオロギー論とは違った新しい視角を提示できるかどうか、である。今まで読んだかぎり、ヴィトゲンシュタイン独自の探求だとは思うが、この5人を超えるのは、なかなか厳しいかもしれない。ヴィトゲンシュタインの議論が、アクチャリティを持つとすれば、いかに、われわれは、複数の判断様式(行動様式)を、原理として習得するのか。そのメカニズムに関する議論ではないかと思う。言いかえれば、世界像あるいはイデオロギーの浸透メカニズム‐世界像・イデオロギーの否定的な側面を強調すれば‐洗脳メカニズムを、哲学的に解明している点ではないかと思う。これは、脳科学や心理学など、実験科学の分野で議論される問題だが、哲学的な分析によって、これら自然科学の議論に欠けている根源的な問題を提示できるのではなかろうか。今後、この点に注目して、ヴィトゲンシュタインの議論を検討してみたい。

(断章124番を見ていて、思い出したのだが、自然科学者のSさんが、先日、非常に面白い事を言っていた。自然科学は、諸現象を公理という形に帰納しようとするが、それは、単純さへの信仰があるからではないのか(つまり、そうする根拠は、もともと、ないのではないか)、というぼくの質問に対して、Sさんは「コミュニケーション上の理由」をあげたのである。単純なものほど、正確に多くの人々に伝えることができると。これには、唸らされたが、Sさん自身も認めているように、科学の最前線は素人には、分からないものになっている。単純さとコミュニケーション上の効率を求めた結果が、複雑さと専門性を生むというパラドックスを構成している。このパラドックスは、解かれるべき問題として、依然、われわれの前にあるのだろう)



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10月5日(火)のつぶやき

09:34 from Flickr
fountain http://flic.kr/p/8FFoiF
11:02 from Flickr
October sunlight http://flic.kr/p/8FFvnn
20:00 from web
thank you @moonflowernco @beezknez for the kind retweets. various autumn insects sing loudly over here in the night.
20:06 from Flickr
grove http://flic.kr/p/8FJzfd
20:32 from web (Re: @kentescu
@kentescu Merci pour la musique. look up/ the autumn blue sky time after time -/ my recent habit #haiku #poetry
by delfini_ttm on Twitter
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