プロ野球での常識とも言われている「左対左」神話は果たして本当なのか、最近よく考える機会にぶつかります。
バレンタイン監督にその傾向が強く、左腕が先発をする試合では大松や根元がスタメンから落ちるケースが多いからです。
本来はきっちりと数値を持って語りたいところですが、おそらくは私の思い込みを裏付ける数値は取れないと思いますし、数値では語れない部分にも踏み込むつもりですので、今回は割愛させていただきたいと思います。
ですから論理的ではありませんし、常識に近い話を改めて語っているだけのところもありますので、あまり期待されると失望されるかもしれません。
左対左は打者から見れば不利である、この考え方が間違っているとは思いません。
現実的に左腕を苦にする左打者が多いのは周知の事実で、左打者へのワンポイントで左腕が登板することは戦術としては普通のことです。
ではなぜ不利なのか、それは球筋によるものだと思います。
左打者にとって左腕からの投球は背中越しから逃げていくような球筋となり、右腕からの向かってくる球筋に比べると見づらいことが理由の1つであることは間違いないと思います。
ただそれは右腕に対する右打者も同じはずですが、右対右の不利が語られることはあまりありません。
それは左腕に対して右腕の絶対数が多いこと、要は慣れの問題が右対右の不利を緩和しているのだと思います。
例えばサイドスローやアンダースローといった絶対数が少ないタイプの右腕に対しては、右打者も苦労するケースが多いこともまた周知の事実かと思います。
ではやはり左腕に対しては右打者を起用した方が得策なのか、私の答えはNOです。
正確には一部制約付きのNOです。
例えば杉内の様にクロスファイヤーを高い確率で決められる左腕や、和田の様にボールの出所が見づらい左腕に対しては左打者の不利は拭えませんので、右打者の起用も仕方がないと思います。
しかしただ左腕だから、という理由で右打者を並べる事に対しては強く反対します。
それにはいくつかの理由があります。
まず左腕であっても制球がアバウトな投手であれば、左腕の有利さを活かせない可能性が高くなります。
先日の試合で根元らが吉野や清水といった左腕からヒットを放っていましたが、打ったボールは真ん中よりの甘いものでした。
要は左腕としての特性を充分に活かすフォームやコントロールを持たない投手に対しては、右左を意識する必要はないと考えます。
次に右打者を並べることで投手に楽をさせることがある、という点にも注意したいと思います。
右打者と左打者との攻め方には当然違いがあり、右打者だけを並べるとリズムを崩されることなくピッチングをすることが可能となりますし、調子がいいボールがあれば同じ様な攻めで牛耳ることも可能となります。
右打者と左打者をジグザグに並べるオーダーはワンポイントで投手を投入しづらくさせることだけが目的ではなく、投手に同じテンポでピッチングをさせないことも目的の1つです。
帆足などに同じ様なテンポや攻めで軽くあしらわれた試合を思い出せば、右打者を並べる愚がわかるかと思います。
そして最大の理由が、左腕に対して調子のいい左打者と調子がイマイチの右打者では、左打者の方が確率は高いであろうと考えるからです。
.326の根元と.278のオーティズであれば微妙なところですので昨日はまだ我慢できましたが、16日に.196の堀を起用したことに納得できなかったのはこの考えによります。
逆の見方をすれば、例えば昨年のCS最終戦で、8回裏3-3の同点の場面で日本ハムが二死満塁のチャンスをつかみ打者は稲葉といったケースで、先発投手に代えてリリーフを起用するとすれば藪田と藤田のどちらを選ぶのか、という問いかけになります。
左対左に拘れば藤田の起用でしょうが、調子を考えれば間違いなく藪田です。
今の左腕に対するロッテのオーダーは、このケースで藤田を起用するのと同じ愚を犯しているのだと思います。
もう1つ挙げるとすれば、慣れないことが苦手の理由の1つであれば、慣れさせることを考えるべきです。
苦手だからと言っていつまでも左腕から遠ざけていれば、いつまで経っても問題は解決しません。
それが控えならまだしも、大松や根元らはこれからのロッテを支えてもらわなければならない人材で、苦手だからで済まされては困ります。
ここで監督の職域とは何か、について考えたいと思います。
メジャーについてはわかりませんが、こと日本のプロ野球での監督の職域には、選手を育てて中長期的なチーム作りをすることが含まれていると考えます。
ですからチームの主力として期待する選手に対しては、多少のことは目をつぶっても経験を積ませることも監督の仕事の1つであるはずです。
左打者に対する左腕対策もそうですし、堅実な野球をするためのバントもそうです。
そして自分のやりたい野球を選手にこんこんと教え込むことも同様です。
私がバレンタイン監督の采配に批判的なのは、この部分について第三者的な姿勢が強くなっているように見えるからです。
年初の番組でヒルマン監督と対談した際に、「バントが上手い選手がいればサインを出す」というような発言をしたと聞きました。
バントが上手い選手を育てることや、下手であれば上達させるためにバント特打をさせたり、失敗を繰り返す選手に対しては厳しい態度で臨むことも監督の仕事であるはずだと、私はそう考えます。
もちろん我々ファンの見えないところでそういった仕事をしているのかもしれませんが、残念ながらそういった姿が私には想像できないのが今のバレンタイン監督の采配です。
左腕を苦にしない左打者を育てる、バントの上手い選手を育てる、こいつだと見込んだ選手を多少の事は我慢してでも使い続けて育てる、バレンタイン監督はそういったことが出来る監督のはずです。
今江や西岡、そして成瀬が主軸に育ったのは彼ら自身の努力があったとは言え、バレンタイン監督の抜擢と辛抱がなければありえなかったと思います。
だからこそ、昨年あたりから辛抱が足りなくなったように見えるバレンタイン監督の采配が歯がゆくてなりません。
長期政権の弊害、イエスマンしかいない周辺、これらに膿み始めたのではないかと危惧しています。
そうは言ってもバレンタイン監督以上の人材がおいそれと見つかるとは限りませんし、絶大なるファンの支持を得るバレンタイン監督を切る勇気はフロントにはないでしょう。
しかしその判断がますますバレンタイン監督を裸の王様にしてしまうのではないか、そんな心配をしてしまいます。
今必要なのはバレンタイン監督にモノを言えるコーチを置くこと、その内容が正しいかどうかは別にして、監督が議論できる素地を作ることが大切だと考えます。
そういう意味では高橋コーチに期待をしていたのですが、むしろ適任は小宮山かもしれません。
バレンタイン派の印象が強い小宮山ですが、言いたいことを我慢するタイプとも思えませんので、彼を投手コーチにすることが現時点での最適な処方箋かもしれません。
もっとも現場の投手陣と反目する危険性をはらんだ、劇薬の可能性も高いことは言うまでもありません。
長々と書いた割にはたいしたことは書けませんでしたが、これが私の左対左の拘りへの考え方であり、バレンタイン監督の采配に対する見方です。
大松と根元はフル出場させること、全選手に毎日のバント練習を必須とすること、バントを続けて失敗した選手にはペナルティを課すこと、これらを実践すればチーム成績が上がるなどと単純には考えてはいませんが、手をこまねいているよりはマシであることは力一杯に主張したいと思います。
もちろんそんなことは素人に言われなくても既にやっている、それでも選手が動かずにうまくいかないんだ、というのが真実である可能性を否定するわけではありませんので、最後に念のため付け加えて終わりにしたいと思います。