「君の名は。」で興味を持った新海誠の過去の作品を見ようかどうか思案をしていたものの似たようなことを考える人が多いのかTUSTAYAではずっと貸し出し中でズルズルと、そこへTOHOシネマズがオールナイト上映をするとのニュースに背中を押されての久しぶりの新宿です。
学生のころはインターネットで買い物ができる環境ではなかったのでヨドバシカメラやさくらやを目当てにちょこちょこ出没をしていたのですが、ここのところはすっかりとご無沙汰です。
そんな浦島状態でニュースでは見ていましたがビルを襲うゴジラは初めて、火でも吹かないかと暫く凝視もそんなわけもありません。
ラインアップは上記のとおり、豪華5本立てです。
二度の休憩を挟んでの7時間強、これが土曜日の深夜からであれば睡眠時間の調整ができたのですが、週末とは言えども平日ですのでただの徹夜でしかありません。
アラフィフにはかなりしんどかったですが幸いなことにスクリーンに集中ができて眠くなることもなく、足がむくんだぐらいで乗り切れました。
まず一本目は「雲のむこう、約束の場所」で、デビュー作は「ほしのこえ」ですが長編としてはこちらが第一弾となります。
津軽海峡を挟んで南北に分断をされた日本が舞台で、エゾにそびえ立つ巨大な塔、青森の中学生の藤沢浩紀、白川拓也、沢渡佐由理が自分たちで作り上げた飛行機でそこに行こうと約束をするも、佐由理が謎の病気で眠ったままとなり三人はばらばらに、しかし三年後にまた三人が紡ぎ合っていく、といったストーリーです。
モブにも手を抜かず、背景の美しさなど原点とも言える作品なのでしょうが、残念なことにキャラの絵柄が個人的には好かないのでもう一つのめり込めませんでした。
やや唐突と言いますか強引にも思える展開もどうなんだろうと、平均的な出来映えだったように思います。
2016年11月11日 鑑賞 ★★★☆☆(3点)
間髪入れずの二本目は「秒速5センチメートル」、3本の短編で構成されています。
ともに転校生で本が好きだったことで仲良くなった遠野貴樹と篠原明里、しかしお互いにまた転校で離ればなれになってしまいます。
それでもお互いを想い、しかし気がつけば別の人生を歩んでいる、時の流れの残酷さ、人の心の移ろい、現実の厳しさをまざまざと見せつけられました。
もう優しくしないで、その言葉に象徴をされる無意識でもあろう貴樹の優柔不断、未練といった男の身勝手さ、弱さ、がつんとくるところがあります。
2016年11月11日 鑑賞 ★★★☆☆(3点)
休憩を挟んでの三本目は「星を追う子ども」で、ここでがらっと絵柄が変わります。
どこかジブリに似てきたような、ストーリー的にもアイテム的にもラピュタやナウシカを意識しているような感じで評価が分かれそうな気がします。
それでも2時間近いこともありこれまでに比べれば端折ることなく練られていましたし、ちょっと結末があれでしたが、中だるみになりそうなところがグッと引き締まりました。
アガルタと呼ばれるかつて人類を導いてきた神々が住む地下文明、そのアガルタの叡智を求める組織アルカンジェリ、アルカンジェリに属しながらも亡き妻を生き返らせることだけを望む森崎竜司、父の形見が縁となりアガルタの少年と知り合った渡瀬明日菜、うん、やっぱりジブリの香りが漂っています
2016年11月12日 鑑賞 ★★★★☆(4点)
再びの休憩を挟んでの「言の葉の庭」が四本目です。
ここでさらに絵柄が変わって圧倒的な美しさ、これまでは丁寧で温かさはありながらもアニメの域を出ずにいたところが写実主義に舵を切ったような、それがいいかどうかは人それぞれでしょうし技術の進歩があってこそなのでしょうが、新海誠の代名詞とも言える背景の美麗さが際立っています。
音楽監督も代わってピアノの調べが中心だったものからの変化もあり、前期新海誠、後期新海誠の境界線と言ってよいでしょう。
靴職人を目指す高校生の秋月孝雄、昼間からチョコレートを肴にビールを飲む雪野百香里、雨の日だけの新宿御苑での逢瀬が切なく描かれています。
2016年11月12日 鑑賞 ★★★★☆(4点)
最後を締めくくる「君の名は。」は以前にレビューをしましたので割愛をします。
全体を通して言えるのは切ないまでの男と女のすれ違いがテーマになっていることで、しかし必ずしもハッピーエンドとは限りません。
娯楽という点からすればどうかとは思いますし、だからこそこれまでの作品が評価は高くとも興行的に成功とは言えなかったのではないかと、江川達也の指摘もさもありなんです。
そうであってもキャラクターの絵柄、背景の美しさは新海誠の集大成とも言ってよいのではないかと、この路線での次回作が楽しみです。
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