来季に向けて貴重な新戦力獲得の場であるドラフト会議が開催され、14名ものマリーンズ戦士が新たに誕生しました。
一昨年は大嶺の指名、そして昨年は全員が投手とサプライズが続くロッテのドラフト戦略ですが、今年は例年以上の驚きをもたらしてくれました。
馬鹿正直に指名したな、これが1巡目に木村を入札したことを知った際の感想でした。
一昨年にロッテと相思相愛と言われながらも横浜の3巡目指名となり、その後は入団拒否、裏金騒動と木村にとっては心の安まる日はなかったと思われ、その心情にロッテが応えたというところではないかと思います。
ただ巷の評価では1巡目で入札する球団はないとも言われおり、2巡目以降でも充分に獲得できると思っていましたので、ちょっと損した気分ではあります。
しかし信義に厚いところを見せたことはよいことですし、球団としてトップの評価をしたのだと考えたいと思います。
その木村の1巡目での入札にも驚きましたが、それ以上に驚いたのが2巡目での長野の指名です。
木村と同じく一昨年に日本ハムの指名を拒否した長野が巨人に固執していることは明らかで、ロッテがこういった冒険をするとは思いませんでした。
似たようなケースであった大嶺を入団までこぎつけた自信の成せる技なのかもしれませんが、大嶺と違って長野の場合は1年間を我慢をすれば済むわけで、今年も入団拒否をすればさすがに来年は確実に巨人に入団できますし、今後の交渉は簡単にはいかないでしょう。
社会人になって人間的に成長したのか一昨年のように頑なな態度ではなく、「心の整理がつかない」と言いながらも「気持ちはまだ半々」「2年前よりは今の方がプロでやれるんじゃないかと思っている」と多少は前向きな発言もしているものの、一昨年の日本ハムとの交渉でも一時は前向きな姿勢を見せながらも結局は入団拒否となっただけに、ファンとしても落ち着かない日々が続くことになるでしょう。
付け入る隙といっては表現が悪いですが、24歳という年齢での1年間がどれだけ貴重なものかを真情を持って語り、そして働きかけていく、これしかないと思います。
3巡目の上野は思っていたよりも高い評価であったと、ここでもちょっと驚かされました。
とは言いながらも、実はこの上野が即戦力としてはナンバーワンではないかとも思っています。
下級生の時はほとんど実績を残していなかった上野ですが、最上級生になって主戦を任されて急成長した投手です。
こういった着実に成長した感のある選手は、プロに入って一気に開花することが珍しくありません。
非常にオーソドックスにまとまった感のある上野ですが、現時点では私が一番期待している選手です。
坪井を4巡目で指名できたことも、これも1つの驚きでした。
阪神の1巡目と言われたこともありますし、まあマスコミやファンの見方がいかにプロとは違うかの典型的な例かもしれません。
これは西武の3巡目の浅村や、ソフトバンクの3巡目の近田、ヤクルトの4巡目の細山田らも同様で、意外な選手が意外な順位で指名されたような気がします。
もっとも今年も分離開催と考えれば4巡目でも上位指名のうちに入りますので、開催方法が変わったことによる錯覚なのかもしれません。
そして最後の驚きは角が育成枠で指名されたこと、これは大きな期待も伴った驚きです。
プロ野球界で一時代を築いた父親を持つ角が、まさか育成枠での入団を是とするとは考えていませんでした。
しかし入団テストを受けた時点で、そういったつまらないプライドは捨てていたのかもしれません。
それだけにハングリー精神と言いますか、とにかくプロでやりたいという情熱のようなものが感じられ、応援したい気持ちになります。
小柄な体格はかなりのハンデになると思いますし、元木の小野寺という気がしないでもありませんが、まずは大田と同じフィールドに立つことを目指して頑張ってもらいたいです。
総評になりますが、個々の選手については魅力的でなかなかいい指名であったと思います。
ただ指名全体のバランスを考えれば、首を傾げる点がいくつかあります。
まずは相変わらず投手の指名が多かったこと、これが目につきます。
育成枠を含めれば14名のうち9名が投手で、異様に投手が多い選手構成に拍車がかかってしまいました。
あまりに投手が多いことで登板機会が限られ、そのことで成長を阻害された若手投手を大量に戦力外通告をした直後の投手の大量指名は、私の理解の範囲を越えています。
しかも右腕が7名とこちらも不均等で、育成枠はそういったことを考えずに素材重視であるとは言っても、柳田を含めれば3名の左腕がスタッフから失われたことを考えれば、育成枠にも左腕の指名が欲しかったように思います。
登板機会についてはもしかすると昨年に挫折した地方リーグへの選手派遣が今回は実現するとの手応えがあってのことかもしれませんが、そうであれば若手投手をあれだけ解雇する必要はなかったでしょうし、あるいは第二次戦力外通告で投手がまた解雇される予兆なのかもしれません。
確実に言えることは南の獲得が見送られること、さすがにこれで南を獲得したら呆れて怒る気力もなくなるでしょう。
そして最大の問題は捕手の指名がなかったことで、これで橋本がFA宣言をして移籍するようですと大変なことになります。
そもそもこれだけの投手を抱えながらもボールを受ける捕手が不足していることが、2軍で投手が育たない理由の1つだと考えています。
もちろんブルペン捕手も数名はいるのでしょうが、キャッチングの善し悪しで投手は活きもすれば死にもしますので、ここはトライアウトで実績のある木村の獲得を考えて欲しいですし、神田と新沼のトレードなどの検討も必要だと思います。
また内野手も飽和気味の左を2名、同じく外野も右は長野だけと、バランスを欠いた指名であったと言わざるをえません。
こと1軍の戦力として来季を考えるのであれば上位4名で満点に近いのですが、将来を考えると気持ちが重くなってきます。
そもそも育成枠で選手を育てるとの気概を持つことはよいことなのですが、しかし肝心の指導する側のコーチングスタッフに人材を求めない姿勢に腹が立ちます。
これだけの選手がいれば相応の指導者が必要で、ただでさえ他球団より数の少ない2軍スタッフで目が行き届くはずもありません。
近いうちに多くのコーチ就任が発表されること、その事を心待ちにしたいと思います。
まだプロ野球選手としてのスタート地点に立っただけでしかないルーキーたちには、これからの1分1秒の全てが勝負となります。
アマチュア時代の評価はスタート時点でのポジショニングには影響しますが、一度走り出せば抜き去ることは努力次第でいくらでも可能です。
この中から1人でも明日のロッテを支える人材が1日でも早く台頭してくれることを期待するとともに、今後の活躍を応援したいと思います。
1巡目 木村雄太 投手 左 23歳 東京ガス 189センチ・86キロ
2巡目 長野久義 外野手 右 24歳 Honda 178センチ・80キロ

3巡目 上野大樹 投手 右 22歳 東洋大 181センチ・78キロ

4巡目 坪井俊樹 投手 左 22歳 筑波大 185センチ・72キロ

5巡目 山本徹矢 投手 右 18歳 神戸国際大付 181センチ・77キロ

6巡目 香月良仁 投手 右 24歳 熊本ゴールデンラークス 180センチ・79キロ

育成枠1巡目 木本幸広 投手 右 18歳 日高中津分校 181センチ・66キロ

育成枠2巡目 鈴江彬 投手 右 22歳 信濃グランセローズ 180センチ・93キロ

育成枠3巡目 角晃多 内野手 左 17歳 東海大相模 168センチ・74キロ

育成枠4巡目 生山裕人 内野手 左 23歳 香川オリーブガイナーズ 183センチ・78キロ

育成枠5巡目 西野勇士 投手 右 17歳 新湊 180センチ・82キロ

育成枠6巡目 岡田幸文 外野手 左 24歳 全足利クラブ 170センチ・70キロ

育成枠7巡目 吉田真史 内野手 両 18歳 太田工 180センチ・77キロ

育成枠8巡目 田中崇博 投手 右 18歳 八日市南 183センチ・83キロ