居候型の旅は移動という観点ではプラス面が多いのですが、ことグルメに限って言えばマイナス面が目立ってきます。
特に今回は鹿児島の天文館、熊本の熊本城近辺とJRの駅から離れたところに繁華街があったために、駅近で宿泊をしたことも影響をしました。
旅先でも基本的には出不精の性分に変わりはありませんので、どうしてもホテルの近くで食事をすることになります。
そうなれば食べるものに困ってしまうのは必然で、そのあたりの苦労も読み取っていただければ幸いです。

初日は羽田で軽食を食べて那覇に入ったため、この旅でのグルメは石垣島で始まりました。
まず最初に食べたのは八重山そばで、沖縄そばの一つの種類です。
前回に那覇で食べたソーキそばは平打ち麺でしたが今回の八重山そばは細めの丸麺で、具は豚肉とかまぼこが細切りにされたものです。
だしはやはり薄口でしたが少し甘みがあり、後味もさっぱりで美味しくいただくことができました。
石垣島の初日は夏日だったために、熱中症にならないように水分補強は必須です。
例によってさんぴん茶を飲みましたが、やはり薄めのジャスミン茶は好きになれそうにもありません。
またコンビニでかなりのスペースを占めていたクールなる乳飲料を飲んだのですが、これは石垣島の名物の一つのようです。
その色合いからしてレモン風味を想像したのですが、しかしやや酸味のあるヨーグルト風味で、その中途半端な473mlの謎が気になります。
夜はお約束のようにオリオンビールで晩酌です。
最初はグラスビールにしたのですが足りるわけもなく、その後はジョッキでこぐごくと喉の渇きを癒しました。
やはり沖縄でビールを飲むとなると、このオリオンビール以外には考えられません。

オリオンビールのおともは、まずはイラブチャーの刺身です。
青っぽいものを想像していたのですが種類がいろいろとあるらしく、今回は残念ながら見た目は普通の白身魚でした。
肝心のお味はちょっと甘みがありましたが淡泊で、どこか鯛に似ている感じがしたのですが、それもそのはずでイラブチャーの和名はナンヨウブダイだそうです。
次はグルクンの唐揚げと、石垣島産蒲鉾の盛り合わせです。
グルクンは前回の那覇でオーダーをしながらも食べられなかったものですので、満を持しての登場です。
ただ一匹丸まるではなく切り身になっていたのが拍子抜けで、また唐揚げにしたこともあって単なるフライドフィッシュでしかありませんでした。
蒲鉾も石垣島で獲れた海苔などを練り込んであるのですが、ふーん、といった感じです。
ごはんを食べないとすぐにお腹が減るので、食べたのはグルクンの焼きおにぎりです。
一見するとただの焼きおにぎりですが、グルクンのほぐし身が入っています。
ちょっと焼きすぎたのか固かったのが玉に瑕でしたが、最後の締めとしてはまずまずでしょう。

石垣島の二日目は石垣島キャンプ見学でしたので、出店での昼食を楽しみにしていました。
しかし僅か4店舗しかなく、石垣牛の串焼きなどを期待していたので肩すかしです。
仕方がないので食べたのは石垣牛の牛どんですが、煮込んでしまったら石垣牛もへったくれもありません。

その悔しさをディナーにぶつけるべく石垣牛ステーキの美味しい店を事前にしっかりと調べて雨の中を繁華街まで行ったのですが、その結果はトップの写真のとおりです。
まさかの改装工事のために目指していた店は休業中で、予備として選んでいた店も材料不足で休みとはついていないどころの騒ぎではありません。
気落ちして他の店を探す気力もなく、お手軽に豆腐チャンプルーと石垣島もずくでの夜ご飯です。
ただ島豆腐がしっかりと濃い味がして美味しかったので、これもありかなと気を取り直しました。
翌日は雨が降っていて面倒だったことと、珍しくもホテルで朝食を食べていたこともあって、キャンプ見学に集中をして昼抜きでした。
そのため次の食事は鹿児島での夜ご飯で、おともは薩摩ですのでやはり芋焼酎、小松帯刀と薩摩維新です。
実のところまともに焼酎を飲んだのはこれが初めてで、これまではどうにも香りがきつくて敬遠をしていたのですが、飲んでみれば思っていたより口当たりがよく気に入りました。
お湯割りではなく水割りにしたことで香りが弱かったのがよかったのかもしれず、今後の参考になります。

つまみ、と言うにはやや贅沢ではありましたが、黒豚のしゃぶしゃぶです。
豚肉なので臭みが心配だったのですが全く気にならず、ほのかな甘みがありポン酢だれ、胡麻だれともに合ってとても美味しくいただけました。
しゃぶしゃぶですので食べ応えという点ではやや物足りなさはあったものの、お酒との相性も抜群で大満足です。
こういった鍋物での一人酒はちょっと寂しかったのですが、まあ仕方がありません。
翌日の薩摩川内キャンプでは周りに食事ができるところが無かったので、川内駅まで戻っての電車待ちでの時間を使っての駅弁です。
今回は電車での移動が少なかったために、駅で駅弁を食べることがままありました。
黒豚あぶり肉、さつま揚げ、きびなごの唐揚げ、さつまいもレモン煮などが入った鹿児島版幕の内弁当のようなもので、ちょっとご飯が少なかったのが不満と言えば不満だったものの、それぞれが珍しくも全て自分の舌に合ったためにあっという間に食べきってしまい、特にさつまいもの甘さとレモンの酸っぱさが絶妙なハーモニーで美味でした。

この日の夜は日本酒にしようかと迷ったのですが、鹿児島はあまり米が穫れないところなので日本酒も今ひとつとの事前知識もあって、やはり焼酎にしました。
とにかく銘柄が分からないので前日に続いて鹿児島っぽい名前のものをチョイスするしかなく、そして薩摩茶屋です。
前日のものよりもちょっと癖があるようにも感じたのですが、自分で水割りの調整ができたためにいい感じでほろ酔い気分になれました。
おつまみは自家製さつま揚げときびなごのお造り、そして蛇足のように焼き鳥の盛り合わせです。
さつま揚げは揚げたてでほくほくとしてお酒が進みましたし、中に入っていた野菜らしきものが何かが分からなかったのですが、ちょっと辛味があって面白い味がしました。
きびなごは酢味噌につけて食べたのですが、こりこりとした食感が印象的です。
焼き鳥は地鶏を使っているとのことで頼んだのですが、同じものが複数入っているなどかなりいい加減でした。

締めに食べたのが鶏飯で、こちらも地鶏を使っているとのことです。
これもしっかりとした鹿児島の郷土料理で、鶏肉に錦糸玉子、たくあん、干し椎茸などが入っています。
そこにだし汁をかけて食べるお茶漬けのようなものなのですが、あっさりとしていてお酒の締めにはもってこいでした。

次の日は鹿児島市街を自転車で走り回ってエネルギー不足になったため、パワーをつけるために昼は黒豚のロースカツ定食です。
黒豚ではないメニューもありましたが黒豚を選ばない手はなく、そして黒豚の方が1.5倍ぐらいの値段がしました。
普通のソースと味噌だれがあったのですが、肉の甘さを引き立ててくれる味噌だれの方が自分には合っていたような気がします。

夜に熊本に入った時間が遅かったために駅でお手軽に夜ご飯としたのですが、これが悔やまれることになったのはまた後の話です。
熊本の郷土料理である馬刺し、辛子レンコン、だご汁とオールスターキャストの定食でしたが、初めて食べるものもあって物珍しさが先走った感があります。
まずまず美味しかったのですが、閉店間際でお酒を飲めなかったのが残念ではありました。
馬刺しは今回で二度目ですが、やはり前回も赤身だったような気がします。
その前回は臭みがちょっときつかったのですが、今回はちょっと歯ごたえがありすぎましたがさっぱりとした味わいでした。
辛子レンコンはちょっと辛子がきつすぎで、これはビールでも飲みながらでなければきつい感じです。
だご汁は最初は豚汁かと思って食べていたのですが、平べったい餅のようなものが入っており、食べてみれば団子を押し潰したようなものでした。
豚肉や里芋などそれ以外の具材は豚汁と煮たようなもので、ちょっと味噌仕立ての味が薄いかなといった感じです。
翌日は熊本ラーメンでかなり有名らしい黒亭での昼食でした。
お店の人に一番のメニューはと聞いて頼んだのが玉子入りラーメンで、生玉子が入っているのは初めての体験です。
レンゲに玉子をすくって溶いて、麺に絡めながら食べるのが通の食べ方だとメニューに書いてありました。
もっと濃厚かと思っていたのですが意外にあっさりとしていて、大盛りにすればよかったとは後の祭りです。
前日にオールスターキャストを食してしまったので、翌日以降は夜ご飯を選ぶのに苦しむ羽目となりました。
そして選んだのが天草の牛深というところから食材を仕入れている、との謳い文句の店です。
飲んだのは天草と一蓮托生という焼酎で、芋ではなく麦でもなく米焼酎というものは存在自体を初めて知った次第です。
焼酎ビギナーの自分としては味の違いがよく分からなかったのですが、芋はウイスキーに近い感じで、米は日本酒に近い感じがしました。
つまみの一発目はばくだんと、一文字ぐるぐるです。
牛深名物らしいばくだんはゆで玉子を蒲鉾でくるんだようなもので、蒲鉾にちょっと甘みがあってマヨネーズとの相性がよかったです。
一文字ぐるぐるは「ひともじぐるぐる」とお店の人に言い直されてしまいましたが、分葱の葉を軸にぐるぐると巻いていることからきた名前で、それに酢味噌がたっぷりと乗っています。
解説によればお手軽に、さらには安価な材料で作れるので、緊縮財政の肥後熊本藩ではお殿様の酒のつまみに重宝がられたとのことですが、値段は特に安くもありませんでした。
次に頼んだのは鯵のあげかまぼこと天草産あさりの酒蒸しです。
この鯵も牛深で水揚げをされたものらしいのですが、鯵って今の季節だっけ、とは独り言です。
あさりはまるまると太っていて食べ応えがありましたが、何にせよ一人で食べるにはちょっと多すぎました。
最後は天草大王溶岩焼です。
溶岩とのことですのでどんなものが出てくるか期待をして待っていたのですが、ただの石版みたいなものでガッカリとさせられました。
天草大王は一時は絶滅をしたものを2000年に復元をしたものらしく、まるで熊本城にかける情熱と同じものを見る思いです。
地鶏はどうしても固いイメージがあり、高知での土佐ジローで痛い目に遭ったので戦々恐々ではあったのですが、歯ごたえはありながらも意外な柔らかさでした。
残念だったのはポン酢系のたれにパンチが無かったことで、あまりの物足りなさに醤油をかけて食べてしまいましたので、お店の人にはごめんなさいです。
翌日の人吉は不思議なぐらいに食事ができるところが見当たらなかったために、これまた駅での駅弁です。
人吉の鮎は名産らしいのですが、自分の地元の相模川では鮎釣りの解禁が6月なので冬の鮎ってどうよ、と思いつつの鮎ずしです。
まるまる一匹が入っていたのですが、ちょっと気持ち悪いながらも頭からがぶりと食べてしまいました。
酢の利き具合もいい感じで、いわゆる鱒ずしが鮎になった感じと言えば分かりやすいかもしれません。

熊本の夜も三日目ともなると、さすがにもうどうにもなりません。
面倒くさがらずに繁華街まで足を伸ばせばまた違ったのでしょうが、この性分がすぐに変わるわけもなく、またしても手近でのチョイスです。
飲んだのは球磨焼酎でしたが、25度と35度があったので後者を選んだら舌が痺れました。
つまみも選ぶのが面倒になってきてしまい、それっぽかったら何でもありと熊本を無視なオーダーです。
馬すじの味噌煮込みはご飯が欲しくなるような濃厚な味付けで、これは焼酎よりはビールの方がよかったかもしれません。
きびなごの天麩羅はその食感はそのままに、しかし刺身とはまた違った淡泊さと脂っこさのハーモニーがいい感じでした。
黒豚の揚げ餃子はこうなってしまえば黒だろうが白だろうが知ったことではなく、レモンと塩という不思議な味付けで食べたのが舌の記憶に残ったぐらいです。
最終日の昼は駅の売店で買った九州うまか赤鶏めし、という名の五目おにぎりです。
本当は菊池で昼ご飯を食べたかったのですが、これまた異様なぐらいにマクドナルドみたいなところしか食事ができるところがなく、熊本に戻ってからのかなり遅め、と言うよりは既に昼ご飯と呼ぶには無理な時間帯に宇土に向かう列車の中で食べることとなりました。
赤鶏って何さ、と帰ってきてから調べてみれば全国各地で使われている名前のようで、まあ九州の赤鶏を使ったおにぎりということなのでしょう。
やや尻すぼみ気味のグルメ道を締めくくったのが、空弁の熊本とんこつ豚弁です。
宇土にかなりの時間を要して空港で食事をするしか選択肢がなかったのですが、その空港も時間が遅くて食堂はラストオーダーが終わっており、それならば弁当と思って探したものの熊本チックなものはこれしかなかったので、選んだというよりは選ばされたというのが正しい表現でしょう。
豚の角煮のスライスが乗っているというスタイルで、味も濃いめで美味しいは美味しかったのですが、空港でも電子レンジで温めるサービスが欲しかったかなと、さすがに冷え切ったご飯に冷え切った脂身のコンビネーションはいかがなものかと、このあたりは再考を願いたいものです。
何にせよ飛行機の中で弁当を食べたのは初めてで、周りへの気遣いで早飯となってしまったのが残念ではありました。
【2012年2月 南九州、沖縄の旅】
南国放浪記
南国放浪記 旅情篇
南国放浪記 旅程篇
南国放浪記 キャンプ篇 石垣島の巻 下見の章
南国放浪記 キャンプ篇 石垣島の巻 初日の章
南国放浪記 キャンプ篇 石垣島の巻 二日目の章
南国放浪記 キャンプ篇 薩摩川内の巻
南国放浪記 史跡巡り篇 鹿児島の巻 鹿児島城の章
南国放浪記 史跡巡り篇 鹿児島の巻 福昌寺の章
南国放浪記 史跡巡り篇 鹿児島の巻 南洲墓地の章
南国放浪記 史跡巡り篇 熊本の巻 熊本城の章
南国放浪記 史跡巡り篇 熊本の巻 本妙寺の章
南国放浪記 史跡巡り篇 人吉の巻 人吉城の章
南国放浪記 史跡巡り篇 人吉の巻 願成寺の章
南国放浪記 史跡巡り篇 八代の巻
南国放浪記 史跡巡り篇 菊池の巻
南国放浪記 史跡巡り篇 宇土の巻
南国放浪記 スイーツ篇
南国放浪記 おみやげ篇