死を話題にすると嫌がる人が多いと思いますが、死は必ず来るものであり、その時期は神のみぞ知る事ですが、私は自分の死を何時も身近に感じています。特別健康に問題がある訳ではありませんが、ただ自分が死んだ後に、人に迷惑をかけたり、嫌な思いを与えたくないと思う気持ちが強いのです。ある種の見栄なのかも知れません。
古い話になりますが、新卒で勤めた頃は単身で宿舎に住んで、実家へは土帰月来の生活でした。宿舎を出る前には必ず、特に押し入れにある衣類などの整理をきちんとして、誰が何時入ってきても、不快な思いをさせないようにしっかり片付いているかどうか、確認してから出かけるようにしました。
退職後は、物置に溜まった書物を小型のトラック一台を頼んで棄てました。その後再び、本棚に溜まってきた本を何年も掛かって少しずつ棄てて行きました。専門書が一番心残りでしたが、私の読んだ本は線が引いてあって、人にあげたり寄付する事が出来ないので、棄てざるを得ませんでした。それからも溜まっては棄て、溜まっては棄ての繰り返しを経て、ようやく70歳を過ぎて、やっとスッキリしたと思っています。
さて、次は私が死んだ時に家族が困らないように必要な事項を書き出して置く事です。還暦になって、一度しっかりしたものを書きました。書き出してみて実に沢山あるのには驚きました。日頃管理している物で私しか知らないものが結構沢山ありますし、連絡したり解約したりしなければならない事項が次々に出て、中々完成しませんでした。でも10年も経つと変化していて、書き直しが又大変でした。
愛する家族に残したい言葉もあります。それは時につれて変わっていくものですから、一度書けばそれで良いというものではありません。ただ尽きない感謝の心をありのまま書き残した積もりです。
最後に棺に入れて貰いたい物をまとめてタンスにしまう事とその在りかを知らせておくことです。四国遍路の時に着た白衣と納経帳(納経帳は夫とどちらか先に亡くなった人が入れる事に決めてあります)亡くなった娘がドイツから買ってきてくれたネックレス、息子が小さい時に私に宛てた手紙、夫との間で交わされた結婚前の手紙の束、そしてもう一つは岩波文庫の啄木の歌集一冊です。
私が結婚する時、荷物を夫のアパートへ送りましたが、その時入れた専門書以外の、たった一冊の本であり、私の短歌のバイブルです。昭和28年版ですが、もう茶色になって、ずっと本棚に有って私の心の支えになっています。啄木のようなやさしい言葉で、人の心を打つような短歌が詠めたら・・・というのが私の悲願でもあります。それは永遠の課題であり、私の生涯の目標でもあります。この死の為の準備の仕事をしていると、私の人生が走馬燈のように想い出され、生まれて、そして生きてきてよかったとしみじみと思うのです。
愛する家族にも沢山の感謝を捧げたいですし、私を支えてここまで導いてくださった多くの皆さんにも、深い感謝を捧げます。まるで遺書のようになりましたがお許し下さい。
望み通り夫(つま)よ私が残ります古稀を祝ひし夜の約束
死に支度きれいさっぱり捨てむかな穏やかな春の佳き日の仕事
こまごまと死にたる後の手続きを書き留めているしぐるる夕べ
昨日より今日が優しくあるやうに老いてゆきたし侘び助の咲く (全て実名で某誌に掲載
古い話になりますが、新卒で勤めた頃は単身で宿舎に住んで、実家へは土帰月来の生活でした。宿舎を出る前には必ず、特に押し入れにある衣類などの整理をきちんとして、誰が何時入ってきても、不快な思いをさせないようにしっかり片付いているかどうか、確認してから出かけるようにしました。
退職後は、物置に溜まった書物を小型のトラック一台を頼んで棄てました。その後再び、本棚に溜まってきた本を何年も掛かって少しずつ棄てて行きました。専門書が一番心残りでしたが、私の読んだ本は線が引いてあって、人にあげたり寄付する事が出来ないので、棄てざるを得ませんでした。それからも溜まっては棄て、溜まっては棄ての繰り返しを経て、ようやく70歳を過ぎて、やっとスッキリしたと思っています。
さて、次は私が死んだ時に家族が困らないように必要な事項を書き出して置く事です。還暦になって、一度しっかりしたものを書きました。書き出してみて実に沢山あるのには驚きました。日頃管理している物で私しか知らないものが結構沢山ありますし、連絡したり解約したりしなければならない事項が次々に出て、中々完成しませんでした。でも10年も経つと変化していて、書き直しが又大変でした。
愛する家族に残したい言葉もあります。それは時につれて変わっていくものですから、一度書けばそれで良いというものではありません。ただ尽きない感謝の心をありのまま書き残した積もりです。
最後に棺に入れて貰いたい物をまとめてタンスにしまう事とその在りかを知らせておくことです。四国遍路の時に着た白衣と納経帳(納経帳は夫とどちらか先に亡くなった人が入れる事に決めてあります)亡くなった娘がドイツから買ってきてくれたネックレス、息子が小さい時に私に宛てた手紙、夫との間で交わされた結婚前の手紙の束、そしてもう一つは岩波文庫の啄木の歌集一冊です。
私が結婚する時、荷物を夫のアパートへ送りましたが、その時入れた専門書以外の、たった一冊の本であり、私の短歌のバイブルです。昭和28年版ですが、もう茶色になって、ずっと本棚に有って私の心の支えになっています。啄木のようなやさしい言葉で、人の心を打つような短歌が詠めたら・・・というのが私の悲願でもあります。それは永遠の課題であり、私の生涯の目標でもあります。この死の為の準備の仕事をしていると、私の人生が走馬燈のように想い出され、生まれて、そして生きてきてよかったとしみじみと思うのです。
愛する家族にも沢山の感謝を捧げたいですし、私を支えてここまで導いてくださった多くの皆さんにも、深い感謝を捧げます。まるで遺書のようになりましたがお許し下さい。
望み通り夫(つま)よ私が残ります古稀を祝ひし夜の約束
死に支度きれいさっぱり捨てむかな穏やかな春の佳き日の仕事
こまごまと死にたる後の手続きを書き留めているしぐるる夕べ
昨日より今日が優しくあるやうに老いてゆきたし侘び助の咲く (全て実名で某誌に掲載