ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

眼から眼へ

2024年01月13日 | 随筆
 動物と人間の間に共通な言語はありませんが、心が通じていると思う場合が時々あります。いつでしたか、あの有名な野球の大谷選手が、愛犬と心を通わせている場面をテレビで見ました。きっと多くの皆さんも見ておられた事と思います。
 愛犬の目が真っ直ぐに大谷選手の目を見つめて、サッと前足を伸ばして来ました。大谷選手は犬の頭を軽く撫でて犬の前足を支えました。大谷選手の愛犬の、満足そうな顔が忘れられません。愛犬の心が充分に伝わっていたと思いました。
 瞬時に、そして言葉を発しなくても、心が通じていることを目が告げています。お互いに心地の良い時間ですね。

 私の夫は大の犬嫌いです。近寄る事も怖いらしいです。でも私と二人でウォーキングの折に出会う犬たちは、その飼い主に紐で繋がれていますが、時折シッポを振って親しげに駆け寄ってくる犬もあります。夫は吼えられたりしないようにさりげなく犬と距離を置いて通り過ぎます。
 ご近所の女性の愛犬は、私達がウォーキングしている時に出会うと、何故か夫の傍の方に駆け寄って、ベルトの高さに駆け上がり、シッポを振ります。この犬も夫の目を繁々と眺めます。これで犬が嫌いなのかなと思います。私は犬がそれほど怖い訳ではありませんが、夫ほど好かれたりはしません。屹度犬は正直なのでしょうね。
 夫の学生時代には、下宿していたお宅にも巨体の犬が居たそうです。そのお宅に初めて「下宿させて下さい」と伺った時に、その巨体の犬は寝そべっていた身体を起こしてジロリと夫を眺めたあとで、再び巨体を土間に延ばして眠りについたそうです。夫は怖がっていたのてすが、犬の方は心を許していたとしか思えません。「テリー(犬の名前)は知らない人には吼えるのですが、貴方には吼えなかったですね」と下宿のおばさんが言ったそううです。やがてその犬は夫の傍で、すやすやと寝息を立てて眠る程になったと云います。

 或る時踊りの上手い人が「佐渡おけさ」を踊っているところに出会いました。その時気がついたのですが、踊り手が指先をしっかり眺めて踊るのです。常に目は踊り手の指先に集中していました。そのせいか、身体全体が流れるように見えて、この人達は佐渡おけさを踊る踊り手達でしたが、「上手いなあ」としみじみと感動しました。そしてその秘訣は目の動きにあると感じました。

 梅沢富雄さんと云う踊りの上手い人がいます。矢張り常に「目線は指先に向いて居る」と思います。
 他人から自分がじっと見つめられていると感じる時は、信頼されている時であり、何か真剣に問いかけられている時だと感じます。先頃もお客様がありました。私と夫と三人で暫く話し込んだのですが、真剣な話しの折りは、矢張りお互いに目をしっかりと向け合って話していた事に気付きました。
 目から伝わる言葉にならない思いが、矢張り話している人の心を掴むことに気づきました。良い経験であり、有り難い思いが心に残りました。またの交流を約束しましたが、有意義な交流でした。
 先ほどからヒラヒラと舞う雪が心を静めてくれています。少し積もるかも知れませんが、こんな日も悪くないと思っています。