この度文化勲章の発表がありました。おめでたいことです。私は毎年文化勲章の発表を興味を持って眺めていますし、またその方の功績を尊敬の念を持って見ています。
丁度ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士の書いた「天才の世界」(小学館 昭和60年)と言う分厚い本を本棚から出して見ているところです。湯川秀樹博士が好きな歌人として「石川啄木」の名前を挙げています。それを見た時、私はすっかり嬉しくなりました。私も啄木が大好きな歌人だったからです。
皆さんもご存じだと思いますが、湯川秀樹博士は日本人として初めてノーベル賞(物理学賞)を受賞した科学者です。
今の本にしては活字が細かいですが読みやすく、私は時に取り出して関心のあるページを読み返す事があります。
湯川秀樹博士がこの本で、天才としてあげている人は「弘法大師 石川啄木 ゴーゴリ ニュートン アインシュタイン 宗達・光琳 世阿弥 荘子 ウイナー エジソン」です。
ノーベル賞を受賞する人とは、私のような人間にとっては神に近い人間で全く別世界の人間ですが、湯川秀樹博士があげた日本人の中で、私は特に石川啄木のファンでしたから、この文章を見た時はすっかり嬉しくなりました。
古い話ですが私が結婚する時に、夫のアパート宛てに送った荷物の中にひっそりと入れて送った本の一冊が、好きだった「石川啄木歌集」だったのでした。その頃の文庫本は紙質が悪く、今はすっかり茶色に変色していて信じられない様な時間が経ったと推察される位です。でもその変色ぶりで私の大切度が解るようで、今だに捨られずに本棚にあります。私が付けたカバーとともに懐かしい一冊です。
この本には亡き父との思い出も詰まっています。地方都市の近くに住んでいた私は、よく父のお供をしてその市の書店などへ何かと出掛けたのです。新しい洋服を買うとか、美味しいものを買って来るとか、父は私をお供にして良く出掛けたものでした。
そのような時の買い物に、一冊の<文庫本>があったのです。それが岩波文庫の「啄木歌集」だったのでした。
昭和28年4月15日 第14刷発行とあり、臨時定価120円とあります。でも未だに私の本棚の大切な一冊なのです。私が付けた手作りの紙のカバーも本も、もうすっかり茶色に変色しています。
何時でしたか、夫と二人で東北地方へ旅行に行きました。その時たまたま北上川の傍を愛車で通りました。
やはらかに柳あをめる北上の
岸辺目に見ゆ泣けとごとくに
故郷の大自然は、失意の啄木を温かく迎えて欲しかったのですが。啄木の胸の内を思うと目頭の熱くなる一首です。直ぐにこの歌が浮かんできて、二人でその岸辺で車を降りて北上川を川下から暫く眺めていたのでした。
湯川博士はその著書の中で、啄木の歌の中では最も好きな歌は
いのちなき砂のかなしさよさらさらと
握れば指のあひだより落つ
だと書いています。掴んだと思えば逃げてゆく、この世の不条理を嘆いた名歌で私も大好きです。
或るノーベル賞受賞科学者で、ここから先は神の世界だと云った科学者がいましたが、人間と神の境界に立つ思いを湯川博士は実感したのではないでしょうか。
誰でもきっとそうだと思いますが、好きな歌人の歌は直ぐに暗記して、長く心に残っています。これからもきっと折々に思い出すことでしょう。
夕方になりましたから、我が家へ来る雀も夕食のお米が欲しくなったのか、ガラス戸の外から呼びかけています。すっかり日が短くなりました。みな様のご健康をお祈りしています。
丁度ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士の書いた「天才の世界」(小学館 昭和60年)と言う分厚い本を本棚から出して見ているところです。湯川秀樹博士が好きな歌人として「石川啄木」の名前を挙げています。それを見た時、私はすっかり嬉しくなりました。私も啄木が大好きな歌人だったからです。
皆さんもご存じだと思いますが、湯川秀樹博士は日本人として初めてノーベル賞(物理学賞)を受賞した科学者です。
今の本にしては活字が細かいですが読みやすく、私は時に取り出して関心のあるページを読み返す事があります。
湯川秀樹博士がこの本で、天才としてあげている人は「弘法大師 石川啄木 ゴーゴリ ニュートン アインシュタイン 宗達・光琳 世阿弥 荘子 ウイナー エジソン」です。
ノーベル賞を受賞する人とは、私のような人間にとっては神に近い人間で全く別世界の人間ですが、湯川秀樹博士があげた日本人の中で、私は特に石川啄木のファンでしたから、この文章を見た時はすっかり嬉しくなりました。
古い話ですが私が結婚する時に、夫のアパート宛てに送った荷物の中にひっそりと入れて送った本の一冊が、好きだった「石川啄木歌集」だったのでした。その頃の文庫本は紙質が悪く、今はすっかり茶色に変色していて信じられない様な時間が経ったと推察される位です。でもその変色ぶりで私の大切度が解るようで、今だに捨られずに本棚にあります。私が付けたカバーとともに懐かしい一冊です。
この本には亡き父との思い出も詰まっています。地方都市の近くに住んでいた私は、よく父のお供をしてその市の書店などへ何かと出掛けたのです。新しい洋服を買うとか、美味しいものを買って来るとか、父は私をお供にして良く出掛けたものでした。
そのような時の買い物に、一冊の<文庫本>があったのです。それが岩波文庫の「啄木歌集」だったのでした。
昭和28年4月15日 第14刷発行とあり、臨時定価120円とあります。でも未だに私の本棚の大切な一冊なのです。私が付けた手作りの紙のカバーも本も、もうすっかり茶色に変色しています。
何時でしたか、夫と二人で東北地方へ旅行に行きました。その時たまたま北上川の傍を愛車で通りました。
やはらかに柳あをめる北上の
岸辺目に見ゆ泣けとごとくに
故郷の大自然は、失意の啄木を温かく迎えて欲しかったのですが。啄木の胸の内を思うと目頭の熱くなる一首です。直ぐにこの歌が浮かんできて、二人でその岸辺で車を降りて北上川を川下から暫く眺めていたのでした。
湯川博士はその著書の中で、啄木の歌の中では最も好きな歌は
いのちなき砂のかなしさよさらさらと
握れば指のあひだより落つ
だと書いています。掴んだと思えば逃げてゆく、この世の不条理を嘆いた名歌で私も大好きです。
或るノーベル賞受賞科学者で、ここから先は神の世界だと云った科学者がいましたが、人間と神の境界に立つ思いを湯川博士は実感したのではないでしょうか。
誰でもきっとそうだと思いますが、好きな歌人の歌は直ぐに暗記して、長く心に残っています。これからもきっと折々に思い出すことでしょう。
夕方になりましたから、我が家へ来る雀も夕食のお米が欲しくなったのか、ガラス戸の外から呼びかけています。すっかり日が短くなりました。みな様のご健康をお祈りしています。