ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

交通事故の被害者となって

2023年03月18日 | 随筆
 或る日突然交通事故にに遇って、歩くのが少し不自由になりました。毎朝歩いている散歩コースで、交差点の手前の右側を私が歩き、その少し前を夫が歩いて居た時の事です。
 交差点の左方の道から近づいて来る車には気がついていたのですが、点滅信号がついていましたし見通しも良く、比較的ゆっくり車は進んできましたので、てっきり車は一時停止するものと思いました。そして右手を高く挙げて交差点に歩を進めた私が、不用意だったと言えばそうなのでしょう。ドンという鈍い音がして私は道路に倒れてしまいました。
 横断歩道の少し先を知らずに歩いている夫に声をかけましたが、聞こえなかったらしく気付かずに歩いています。近くの車から男性が降りて来て、「大丈夫ですか、ご主人を呼んできましょうか」といいました。「はい、お願いします」と答えると早速呼びに行って一緒に戻って来て下さいました。私は「頭を打たなくて良かった」と思いながら立とうと思いましたが、何と立てなかったのです。その間にすぐ近くで「交通事故だ」という男性の声がして、「救急車を呼びましょうか?」と言って下さった方が居られて「お願いします」と言いましたら早速ケータイで呼んで下さいました。やがて夫も戻って来ましたが、結局私は立ち上がれずに、抱えられるようにして救急車に乗せられて大きな整形外科の病院に入院になってしまいました。
 朝でしたから道路が混んでいたらしく時間が掛かりましたが、回りの皆さんの気配りに助けられて、やがて病院に収容されたのでした。以来6週間の入院になって、昨年の12月末に無事に退院出来ました。
 高齢者ですから、入院中に診て下さった整形外科医師に「うまくいけば歩行器、さもなければ車椅子」と家族は言われたそうです。今こんな事を書いていて思うのですが、結果的にとても上手く行って、杖をつけば何処へも歩けます。現在は近くのスーパーへも歩けるようになりましたが、思いがけない怪我に少しばかり不自由を感じています。でも「歩ける事がとても有り難い」と思って、一層歩行能力を高める努力をしています。

 私の好きな歌手に「さだまさし」がいます。滅多に歌いませんが交通事故をテーマにした「償い」という歌があります。或る交通事故の裁判で判決を下した裁判長が次のように言ったそうです。「貴方はさだまさしの『償い』と言う歌を聞いたことがありますか。もし未だ聞いていなかったら是非一度聞きなさい」と。
 それは配達の仕事で疲れていた友人が、人をはねてしまい、毎月事故の相手の命日にお参りに通うのですが、在る時被害者の奥さんから「貴方の優しい気持ちは分かりました。もう来なくて良いです。どうぞ貴方の人生を取り戻して下さい」と言われて、この友人の為に涙を流して喜ぶと言う詩なのです。聴いている私も涙を誘われました。
 思えば私達は、他人に対してどの位の親切が出来るのでしょうか。またしているのでしょうか。大地震とか災害の寄付をする事などは、何時も可能な範囲で出来るだけ協力するようにしていますが、「充分か」と聞かれたら少しタジタジしそうです。
 これを機会にもう少し広く深く、優しさという事について考えてみたいと思っています。
 
 

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