ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

想い出の五重の塔

2009年04月12日 | 随筆・短歌
 京都駅に列車が入る時、必ず目にするのが東寺の五重の塔です。京都に着いたのだなあと思う一瞬です。長い間一度は東寺を訪れたいと思いつつ、駅に近い割には訪れる機会に恵まれませんでした。
 5年ほど前になりますか、高野山の帰りに東寺へ寄りました。間近に見る五重の塔は大きくて、しかしその割には良く眺めているせいか感動が少なかったように思います。
 話が一寸逸れますが、講堂の仏像の数々には息を飲みました。暫く立ち去れず、他の御影堂、観智院、宝物館を見たりした後に、再度講堂に寄って眺めて来ました。今年また京都を通りますので、東寺の仏様達に会って是非お参りして来たいと計画しています。
 話を五重の塔に戻しましょう。仏舎利を納めてあると云われる五重の塔ですが、私達が旅先で実際に見た五重の塔の中で、特に心に残っている塔が三つほどあります。
 一つは奈良の薬師寺の東塔です。これは三重の塔ですが、裳階(もこし)があるので、六重に見える事は皆さんもご存じの事と思います。修学旅行で初めて眺めて、裳階のある塔の形の珍しさや、天女の舞う美しい水煙を持つ塔の姿を心に刻み、以後何回か訪れています。約1300年経つ歴史のある塔でもあり、この塔は外せません。後に西塔が出来て、一対の美しい姿になりましたが、西塔の高さは将来建物の重みで沈む分だけ高く造ってあると聞きました。日本の木造の寺社建築のすごさに感嘆したものです。
 二つめは山口市の瑠璃光寺のとても美しい国宝の五重の塔です。屋根の勾配の流れるような線や、全体のバランスが見事で、形の美しさから云ったら、一番のように思いました。 池を前に置き山並みを背景として、すらりと立っている五重の塔は、それはそれは見事で、今でも心に深く刻まれています。
 最後の極めつけは何と言っても女人高野で有名な、奈良の室生寺の五重の塔です。想像していたより小さくこじんまりしていて、それでいて、なんとも表現し難い美しさでした。 残念ながら台風で傷んで、修復後のものでしたから新しかったですが、形は見事に復元されていて、時間の経つのを忘れて、あちらからこちらから、と眺めたものです。
 山形県の酒田市へ行った時に土門拳の記念館に寄って、室生寺の五重の塔の写真を見て、憧れていたのですが、実物は遥かに感動深いものでした。急な階段の下から仰ぎ見る五重の塔が矢張り一番美しかったと思います。高野山が女人禁制であったため、女性の為の女人高野と云われたそうですが、数多くの女性が鎧坂(よろいざか)から金堂を見上げ、数々の仏様にお参りして、更に美しい五重塔を眺めて、はるばる室生寺を訪ねて来られた事を喜んだことでしょう。
 塔を後にして山深く登っていくと石の階段を五~六百段登り、奥の院の御影堂にたどり着きます。五木寛之氏が古稀を過ぎて登れるかと思ったが、登れたと感慨深く書いておられますが、杉木立の真ん中を、見上げる程の急な石段を一歩一歩登って、たどり着いた感激は何とも云えませんでした。
 素人の私の事ですから、間違いがあったらお許し下さい。満開の桜の下を通っての帰り道、もう二度と来られないと思って、振り返り振り返り名残を惜しみ、赤い太鼓橋を渡りました。バス停の傍のお団子屋さんで求めた、草団子の美味しかった事も良い想い出です。

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