この前、「お米の生産目標数が激減」という事を書きましたが、水曜日に配達している「朝採り野菜ボックス」のお客様向けレターに、改めてそのことを書きました。
ということで、前回よりもうちょっときちんと書いた文章を
↓
秋冬野菜が出回ってきました
葉物は9月頭に蒔くのがこの地域では一般的です。
それが出てくるのがちょうど10月半ば過ぎなんですね。
今年の秋はずっと天候が良くなかったので、多少、遅れ気味というのはありますが、ようやくカブなど揃ってきました
そんな中、収穫の秋の代表であるお米について、農水省が来年の主食米の作付け目標を今までに無いほど大幅に下げたのです。
農水省は需供のバランスを踏まえてお米の生産目標を掲げています。
それを踏まえて農家は大豆や飼料米に転作しています。
2010年が800万トン超だったのが10年後の今年は730万トンほどと、1年で平均7万トン減っていました。
それが来年は一気に50万トン減らすことになりました。
これは「過去最大の下げ幅」という事で衝撃が走っています。
これをどう捉えるか、ですが、昨日、米農家の根本さんと話していたら「コロナで去年のお米が沢山余っているから、農協は叩き売りするという話らしいよ。米価もこれからさらに下がるらしいから、来年は主食米はあまり作れなくなっちゃうよね」と肩を落としていました。
また、私の師匠のおかげさま農場の高柳さんの恩人が先日亡くなったのですが、その際の言葉を紹介します。
「御年97歳。先月9月までは畑や田んぼに通い、死ぬまで頑強な人だったのですが、、、。大往生です。老いてなお野良に足を運び、野菜の荷作りや田んぼの見回りなど働き通した人でした。先月9月までは働いていたのですが、自宅で転んでから急に様態が悪くなり、入院。10数日で息を引き取ったとのことでした。病院から自宅に戻りお見舞いに行ったのですが、家人の話すところによると、『先月、じいさんから【田んぼの肝を教えておく】と言われた』そうです。田んぼの暗渠がどこになるのか水口はどこにあるのかなど最後の伝承とも言えます。(と言うことは直前まで田んぼのことは故人がやっていた!)自己の最期を知っていたのかどうか、しっかりした人なので後に続く人に困らないよう伝えたのだと思います。」
狭い国土で田畑を耕し生きてきた日本人にとっては、田んぼは「先祖が苦労して開墾し、引き継いできた家宝で、後世に渡していく必要があるもの」という考えがあり、田んぼを持っている農家さんはこういった思いで、採算度外視で田んぼを守ってきましたが、高齢化と機械化で耕作放棄地が増えていっています。
しかし、それ以上の米離れが進んでいます。
フランスは「我が国は農業国であり、国民の食糧は国内で自給する事が最も大切だ」と考え、「農業は国民を守るための産業」という事で、手厚い保護をします。
国民も「食べる事は生きる事、農業は自分の事」という国民的合意があるそうです。
また、スイスは山なので畑が小さく放牧地域を管理するのも大変ですが、「我が国の観光産業を支える農村を守っているのが農家だ」というこれまた政府と国民的合意で、補助をだしています。
アメリカは「穀物は経済競争作物だ」と捉え、膨大な補助金を出す投機対象です。
ところが、「日本人は農業は農家の事、と考える国民で自分の命に関わる事だと思わない」と高柳さんは嘆いている通りです。
私は農村コーディネーターという仕事をしていますが、もっと田畑の事を、農家さんのことを知ってもらいたいと思います。
それは命を守る食だけでなく自然や歴史、和を大事にしてきた日本人としての生き方を学ぶ事にも繋がりますし、これからの時代の指針にもなると思います。