昨年の8月、成田市の公津の杜の「もりんぴあ」というところで「日本と原発」という映画の自主上映会がありました。
とてもわかりやすい内容で、特に、「大飯原発運転差止訴訟の判決文」は、痛快そのものでした。
そのことを書いたブログがありますので、よろしければご覧ください。
→こちらから
今日はその続編というか、総集編という感じの「日本と原発 4年後」を観てきました。
公式HPは→
http://www.nihontogenpatsu.com/news/4yearslater.html
前回と同じ内容もかなり盛り込みながら、「昨年の映画以降にあったことも含め、伝えたいことを網羅されている」内容でした。
私は根っから「原発で人生が変わった一人」なのですが、久々に心熱くなりました。
色々あるのですが、今回知ったことを中心にざっくりまとめますね。
■原発は人災であった
まず、福島の事故は、大津波による自然災害によるものだった、と未だに思っている人はいませんか?
今回の映画で知りえた情報としては「天災ではなく人災だ」ということを明確に言えるようになった、ということです。
原発事故の問題は、結局は「地震」の問題なのですが、ただ、地震による「津波」の問題、というのも大きな原因です。
この2つについて、そもそも論で、危険があるかどうかを予知し、対応すべきところを「予知できなかった」というのが、当初の東電の言い分でした。
しかし、それが「予知していた」のです。
そもそもは、福島原発告訴団が東電の役員に対し、「大地震やそれによる津波によるリスクはわかっていたはずなのに、対応をしてこなかった元役員には、業務上の過失がある」ということで、告訴をしたのですが、検察からは不起訴とされてきました。
しかし、抽選で選ばれた検察審査会の人たち、つまり一般市民からランダムに選ばれた方々が、検察の不起訴が妥当か調べていくと、福島原発告訴団でさえ見つけられていなかった隠された資料を見つけたのです
どういった資料かというと、それは「東電役員は明らかに地震や津波の問題をわかっていたのに、対応をあえて先送りした」という証拠資料だったのです。
この資料により、2回も不起訴とされていた告訴が、起訴となったのです
その資料とはこんな内容です。
・そもそも東電は、2006年に10mを超す津波が来ると、全電源喪失になる、という資料を原子力関係の合同会議で出していました。
・そして、2007年に国の調査から福島沖で地震が起きた場合に「バックチェック」をするように提言されていました。
※「バックチェック」=「原子力施設の耐震基準を定めた耐震設計審査指針などの改定に合わせ、施設の設計・建設で活断層の調査を強化したり、その都度、最新の知見を耐震性に反映することを総称してバックチェックと呼ぶ」
・これを受け東電では、2007年12月時点では、バックチェックをすることを方針として決めていた。
・2008年3月には、東電のシミュレーションの津波の高さが従来の予想を上回る7,7mを超すことが示され、さらに最大15,7mに達することも報告された。
・国の報告を受け、バックチェックを2009年には終わらせ国に報告する予定にしました。しかし、これをやると莫大な費用と補強工事をしている間に原発の運転を止めなければいけないため、武藤副社長(当時)を中心に、途中で方針転換をし、バックチェックを見送り、関連グループ会社の土木調査グループに再調査を依頼した
・同時に「バックチェック工程が遅れることの公表は、地元に悪影響を与える。耐震工事が完了していないことを地元が問題視する」ことを受け、このことの情報統制を社内で行いました。
・2011年3月7日、東日本大審査の4日前に「15,7mの地震が来る可能性がある」という報告が社内で共有された。
・その4日後、東日本大震災が発生。。。
このことが資料として明らかになったのです。
つまり、15,7mの津波が来た場合のことを想定したバックチェックを2009年までに行い、耐震設計や防波堤などを作って入れば、あの津波でも福島原発はあの事故を起こさなかった確率が高いのです。
ちなみに、私は原発のことを書く時、必ずと言って書くのが東海村の原発のことです。
福島原発事故後の新聞で、「東海村の防波堤が1日ちょっと前に完成していた。もし、それがあと1日遅れていたら、福島と同じ状態になっていた」という記事をみて、背筋が凍る思いをしたのです
茨城と千葉は目と鼻の先です。おそらく、東海村が福島のようなことになっていたら、風評被害どころか、千葉県や東京も大変なことになっていたのです。
その時の東海村の村上村長のお話を、おそらく知っている人はほとんどいないと思います。
「大震災で、東海村は震度6強で、5.4mの津波を受けました。
原発の電源は断たれ、非常用電源3台のうち、1台が津波でダウン、原子炉内が高圧になり危険でしたのでベント(原子炉内の高圧ガスを抜く)を170回行いました。
幸い海辺に6.1mの防護壁を1日半前に完成していました。
70cmの差で津波を防ぐことができて2台の非常用電源が動き出しました。
防護壁の完成がなかったら福島原発同様に爆発したでしょう。
危機一髪でした」
このことは、茨城の東海村が危機一髪だった、ということと同様に、福島も同様のバックチェックを行っていれば、危機一髪で今回のような大惨事にならなかった、ということです。
これが人災といわず何と言うのでしょうか?
そして、検察は不起訴をしたのを覆す資料を見つけた市民の検察審査会の人は、本当によくやったな~と思います。
■テロや戦争に狙われる危険性
今回追加されたのは、北朝鮮など日本に戦争を仕掛けるとしたら、真っ先にミサイルを原発にぶち込むだろう、という話です。
もっともなことです。
北朝鮮からは発射後7分でミサイルが到達するそうです。
迎撃用のパトリオットミサイルなどがあるかもしれませんが、戦争となれば、真っ先にそういったものが破壊されるのは当たり前、という話も出ていました。もっともだと思います。
また、物理的に武装集団が入り込み、自爆テロや破壊をされる危険も提示されていました。
これももっともなことです。アメリカはでは、実際に1原発につき150人ぐらいの戦闘部隊が配置されているそうです。
普通に考えればそりゃそうですよね。
日本を本気で沈めたい、あるいは何か世界に大きな打撃を与えたいと思っている輩からみれば、日本ほど安全保障がなされていない国はないのですから。
私が思い出したのは、2012年の3月、つまり原発事故から1年たったあと、1カ月で2回も福島で電源喪失があったのです。
それが何が理由か知って驚き呆れました。
ネズミです。。。
ネズミに配電盤の線を噛まれたのです。
まずもって、そんなものが屋外にあるのがおかしい、そしてそれがネズミなどに噛まれるような程度の管理なのがおかしい、それが2回も。。。
びっくり呆れたことを思い出します。。。
また、サイバーテロによって、中央制御室がコントロール不能になったり暴走させられるリスクが一番高いという提言もありました。
実際、イランでもサイバー攻撃でウイルス感染し、施設の1部機能を停止させた、ということが2010年に起きたそうです。
■今、すぐ起きる地震への危機
今回、最も刺激を受けたのが、この映画を作った1人の海渡弁護士の講演会でした。
映画の後に40分ほど講演会をしてくださったのですが、特に「地震大国日本で原発を進める理由が1つも見つからない」ということや「熊本地震で川内原発と伊方原発が福島と同じことになってしまう可能性がある」とういう危機感がひしひしと伝わってきました。
この方は、30年来、原発訴訟をされてきた方です。
特に、日本で最も危険と言われる静岡の浜岡原発の訴訟中、2007年に起きた新潟中越沖地震では柏埼原発は300か所も壊れ、冷却水漏れ、放射性廃液の海への漏洩、放射性気体漏れ、ダクトのずれや最大1メートル以上の地盤沈下など、重大な事故が多発しました。
40年以上前から、地震の危険性を訴えてきた団体もいるのですが、東電は「想定外の地震」とういう見解でした。
本当に危機一髪でした。
その「危機一髪を反省し、同じことが起きた場合に備えるのがふつうなのですが、なぜかこの危機一髪の状態が、大丈夫だろう、という解釈にされてしまったのです。このとき地震学会の先生は「こんなバカげた話はない。我々は必ず自然によって今回の判断が間違っているということを知るだろう」というコメントをされたんです」と海渡弁護士は言います。
そして、浜岡原発訴訟も棄却。
その後、東日本大震災、そして福島原発事故。
「あの時、地震による原発の危険性を司法が認めていれば、福島の事故も防げたはず」というのが、強い思いとして残っているそうです。
そのような海渡弁護士が今一番危険を感じているのが「鹿児島川内原発」と「愛媛県伊方原発」です。
ここは「中央構造線」という大活断層上にあり、以前から「危険」と指摘されてきました。
また、川内原発運転差止訴訟では、中央構造線という大活断層上にあり、さらに桜島などは比にならない火山の大爆発の危険性があることなど、川内原発が大惨事を起こす危険がある地域に建っていること1つ1つを司法は認めたそうです。
例えば、原発側は「火山の大噴火の予兆は出来るから、その予兆が見えたら、使用済み核燃料を運び出す」としたことを、司法も「そんなことは不合理である」と認めたそうです。
にも関わらず、結論に至って「もし事故が起きたら、影響が著しく重大かつ深刻なことになるが、万が一のことを考えて住宅や建物を立てることは社会通念になっていないから、万が一のことを原発の事だけあてはめるのはおかしい」とトンデモナイ判断で、川内原発を稼働してしまいました。
そして、熊本大地震が起きたのです。
みなさん、ご存知のとおり、熊本の地震が移る時には、意図して川内原発と伊方原発が映し出されていないんですよね。
海渡弁護士も「熊本の大地震はちょうど川内原発と伊方原発の中間で起きているんです。そして、中央構造線上に川内原発と熊本と伊方原発はあるんです。そして余震は熊本から川内原発と伊方原発の方に広がっていっているんです。このままでは、福島と同じことが起きてしまうかもしれない。何としてでも運転を中止させなくてはいけない、いやさせます」と熱く語っていました。
前回の映画にも出ていましたが、福島原発は、津波到達時刻より前に放射能は漏れ始めていました。
つまり、地震そのものによって福島第一原発は破損をしていたのです。
地震大国日本、そして火山大国日本で、原発を持つリスクはあり得ない、と言われ続けてきました。
それが、新潟中越地震という自然からの警鐘にも私たちはあまり真剣に受け止めませんでした。
そして東日本大震災で、ようやく目を覚ました人たちが増えてきました。
しかし、再稼働、推進する人たちがいまだに多くいます。
それに対し、これでもか、と熊本大地震が発生しました。
以前見たNHKスペシャルでは、「福井」周辺が、今後危険という警告がされていました。
福井は世界で最も原発が集中しています。
もんじゅもあります。
そして、国もまじめに取り上げている「南海トラフ」があります。
浜岡原発も、高さ22メートルの防波堤を作りましたが、最大60メートルを超す津波が来るという指摘があります。
千葉県民や東京都民であれば、東海村、そして浜岡原発、福島原発が身近に感じると思います。
九州・中四国の方なら熊本地震を身近なことと感じているでしょうから、川内原発、伊方原発が福島のようになったら、、、というイメージがわきやすいとおもいます。
我々はどうしても身近なことでないと、真剣には考えにくい生活を送っているのですが、ここまで大きな地震が日本全国に広がってくると、「日本は地震大国だ」ということを、当然と思うようになってきますよね。
「東日本大震災で、そもそも日本の近くは大きく変わってしまった」という新聞記事が2011年~2012年にはよく出ていました。
そして、「首都家直下型大地震は70%以上の確率で3年以内に来る」と書かれていました。まだ来ていませんが。。。
そして、「震度5ぐらいの余震は60年ぐらいは続いてもおかしくない、そのぐらい日本の近く構造は変わってしまった」とも書いてありました。
一般市民と企業のトップや政治のトップなどは、生き方や物の見方がそもそも違うので、かみ合わないことが多々あると思います。
しかし、国そのものが滅ぶ可能性がある、あるいは、莫大な経済損失だけでなく、人命をないがしろにする国策は、どうであろうと止めるべきであることは、わかるはずです。
インテリジェンスというか、こういったことを敏感に感じ取る知識や頭を、政治家であろうが経済界のトップであろうが一般市民だろうが、全国民が持つべき、と思う今日この頃です。