3月に食料自給率(カロリーベース:現状39%)の目標を50%から45%に下げる発表がありました。
TPPの条件交渉参入の時でさえ経済産業省VS農林水産省という戦いを表面上はやっていましたが、内々では農林水産省側及びJA側が「一度、反対の声はあげたけど、さてどこで上げた拳を下ろそうか」という感じで、建前は守った上で、調整をしたことがありました。
今回の目標修整も、実質無理だということもあるし、農林水産省が上げた拳を政府の意向に沿って下げた流れなんでしょう。
しかし生産額ベースの自給率は70から73%に目標を上げています。
そもそもカロリーベースの目標を立てること自体、世界的にはあまり意味がないといるわけですが、ある時から自給率がカロリーベースになったんですよね。
その頃は「自給率が低い」ということを声高にあげるためにやったようですが。。。
そして今回のように、一般的になったカロリーベースの自給率目標は下げ、一方で生産額ベースの自給率目標は上げる。
縦割り行政の表れかと思いますが、ややこしいですよね~。
そんな中で政策として掲げられているのが「大規模集約化・企業参入」です。
農村を守っているのは小さな農家ですが、特に今回は稲作については15ha以下の農家は辞めてしまえ、という方針です。
この政策はもう何十年も掲げられているのにも関わらず、全く成果が出ない政策です。
というか、明治維新で「西洋のやり方を取り入れろ
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法人が農地を開拓するんだ
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」という大号令がかかった時、得のある農業指導者などが「日本には大規模化は向かない」と頑として反対した人もいるぐらいで、それを無理やり推し進めた結果、北海道の牧畜と岩手の小岩井農場(といっても、一回破綻しかけて、三菱か三井が救済したから生き残ったそうですが)ぐらいしか残らなかったという経緯があるんです。
そして、昭和の戦後に、再び「近代化・効率化・機械化・単一化」が叫ばれ、「産地形成」というのがされ、群馬の嬬恋キャベツだの、銚子のキャベツだの、単一作物を対規模に作り産地間競争力を持つ、ということが進められていきました。
でも、これは所詮、日本内での話で、世界規模には遠く及びません。
だって、例えばアメリカの農民全体の畑の平均面積は日本の100倍なんですから。
日本の大規模農家なんていうのは、アメリカの平均農家にも及ばないんですね。
ということで、戦後も、そして1970~80年代も、それからずっとたった現在も「大規模化・企業参入」は政府が叫んでも、実際はそうなりません。
なんでか?
農業というのはそういうものだからです。
農業は儲からないのです。
それでも儲ける農業をするには、今までの農業とは違った農業をしなくてはいけません。
それは、投資をし、少ないコストで出来るだけ収穫して、回収をする、という視点に徹底的に立った農業です。
そのためには、世界各国のように、安い国の土地を買って、低賃金で労働者を雇い、何百へクタールもの土地でトウモロコシや大豆など相場があるものを単一的に作り、その土地がやせたら捨て、次の土地を買い求めていく。
そして、その投資は国から助成金をもらい、かつ、作った作物の買い上げも政府が補助金を出す。
そういった流れにのれば、儲かるとは思います。
でも、日本の農業はそうじゃないですからね~。
テレビで色々取材されいる農業生産法人も、20年~30年も前に投資をして、ブランドが出来上がって、その後に優秀な経営者がまわして安定しているところがわずかにありますが、それ以外は、大概が表面上は立派でも、膨大な借金を抱え続け、補助金もとんでもない量をひっぱってきていて、一度止まったらお金が流れなくなる、というところが多いです。
日本にあった農業は、世界の儲かる農業とは違うんですよね。
ただ、今の日本は朝食はご飯よりパンの方が多い時代になってしまい、米の「消費量」を上げるのはもう難しい時代です。
一方で「自給率(カロリーベース)」を上げるためには家畜の飼料を国産にするのが一番です。
飼料はほとんどが海外産であるため自給率を下げているからです。
そして、今回、人が食べる主食米ではなく牛さん達の飼料米の作付けを今より10倍に増やす目標が設定されました。
今や主食用のお米では1反8万円弱にしかなりませんが、飼料米だと補助金で1反10万円が出ます。
ちなみに、日本では850万トンのお米の生産をしていますが、それに対しアメリカから毎年約77万トンを義務として輸入しています。
TPPではさらに20万トン追加しろとアメリカは言ってきています。政府は5万トンとか、この追加量をいかに少なくするかで折衝しているそうですが。
日本では小麦も90%以上が輸入に頼っていますが、今の子供が大人になる時代は、米農家は激減し、お米も輸入が基本になるかもしれません。
更に厳しいのが乳牛です。牛屋さんは儲からないのに、飼料の国際的高騰で千葉県では1300戸あったのがこの10年で700戸までに激減しています。
このままでは、いわゆる「成分無調整生乳」は高価なもので、海外からの輸入の脱脂粉乳を水で薄めたものが主流になってしまうかもしれないそうです。
これらは政府の方針ですし、「高ければ競争をさせ、足りなければ輸入すればよい」という考えです。
でも、現実はそんな甘いことではなく、「食料争奪戦」が世界的に繰り広げられているわけで、このままでは韓国のようにズタボロになってしまうのではないか?と危惧しています。
以前、「ランド・ラッシュ」という本についてブログに書きましたが、改めて読むと、良い本だったな~、と改めて思います。
→こちら
ブログを見直して、この本の最後に、青森の農家の木村さんが言っていた言葉に目を通すと、改めて色々思いますよね。
「海外から大量の食べ物を取り寄せ、その半分を捨てている日本。飢餓であえでいる人のことなどイメージすらできず、勝手なことばっかりやっている国民だから、いずれ世界から見捨てられる日がくるよ。食べ物の恨みは恐ろしいんだから」
地球の裏側のブラジルで作った大豆や鶏肉などで食料を満たしている今の日本ですが、その傾向は毎年加速しています。
国内でさえ、作られた食べ物の1/3が生産地で捨てられ、食卓で1/3捨てられる国。
私達の子孫が国産を食べれなくなってしまう政策を続けていて、本当に良いのでしょうかね?