今年は大変なコロナ一色の年でしたね。
私は2009年に東京のビジネスマン生活を終え、農村を仕事場に変えたのですが、この10年、毎年、干ばつや長雨が続き、農家さん達からは「こんな年は初めてだ」という嘆きを聞いてきました。
第一産業に関わっていないと、春の干ばつ、夏の干ばつ、秋の長雨など「こんなこと、過去には無かった」という事を、心から思うことはなかなか無いと思います。
1990年代から世界各国で大干ばつ、大豪雨、ハリケーンなどが起きていましたが、遠い国の事でした。
しかし、日本でも何十年も農業をやってきた農家さんからすれば、既に10年以上前から「こんな年は俺の人生で無かった」という年が毎年続いていたわけです。
ところが、3年ぐらい前から、西日本を中心に大豪雨災害が頻発し、関東では昨年の超大型台風でついに都市部の方々にも「未曾有の大災害が起きるほど、地球環境がおかしくなってきたんだな」という共通認識が広がったと思います。
そして今度はウイルスの脅威が広がりました。
都市部は自然界からしたら異常な密集状態であり健康を保つ環境としてはリスクが高いという認識が広がり、今まで以上に農村部への移住が増えた年でもありました。
私も東京で10年以上暮らしていたわけですが、その時であったら「そんなこと言われても仕方ないでしょう」と言うしかなかったと思います。
小さな話では、食品関係の仕事をするようになって「あ~、まともな食べ物は市販品の中にはほぼ無いんだ」と知った時、「でもそんなこと言ったら食う物が無くなっちゃうな」ということで、スルーしていたわけです。
生活の軸というのは、周りの環境次第ですから、やはり都市部と農村は生活の軸が違うわけで、食べ物は作る物では無く買う物でしたからね。
ところが、農村を軸足に置いた生活をすると「やっぱり異常だったんだな~」と言うことが思えるようになりました。
みんなわかっているけど、目の前に危険がつきつけられないと、そう簡単には心、仕事、住処を動かすことは普通は出来ないと思います。
ただ、今回のコロナは今まで以上に命の危険をつきつけられたようなもので、私の知り合いも田舎に移住しましたが、世の中的にも今まで以上に地方への移住者が加速した年となりました。
そして表面化した今までの社会問題に向き合おうとする若者が今まで以上に増えてきていているな~、というのも実感する年でした。
例えば、私の師匠の髙柳さんはファームステイを受け入れてのですが、今年の春に高校を卒業後、あえて大学に行かずに半年ほど住んで今後の進路を思索していた18歳の女の子がいました。
話を聞くと「農業が環境問題や社会問題を解決する何かになると思って」ということで、農家さんの所をいろいろ回ったそうです。
ただ、「100%有機という農家のステイ先は思ったより無いんです」とのことで、髙柳さんのところに半年ほど住み込みしながら農に触れていたわけです。
そして、結論としては来年、「農村ツーリズムを学びにイギリスの大学に行く事を決めた」そうです。
凄いですね~。私の若い頃とは大違い
また、大人向けの「食と命の教室」に昨年に続き今年も女子大生が学びに来ました。
学生は学割で半額にしているとはいえ、自腹で参加する自体、凄いな~、と思いますが、「社会福祉学部でコミュニティーの活性化を学んでいます」とか「SDG’s達成に関わる仕事をしたいです」と今時の学生は普通に言えるのです。
私の学生時代はまだ受験→就職、が当たり前のレールだった時代でした。
就職は超氷河期の始まりでしたが、それにしても大学に行ったら思いっきりサークルに打ち込んでいた青春時代で、社会問題をどうしようか、など考えていませんでした
しかし、その後、環境問題が多発し、インターネットが出始めました。
大人は今の子供を「デジタルネイティブ」と言いますが、私から言わせれば「環境問題ネイティブ」だとも思うのです。
最初からITと環境問題にさらされながら育ってきたわけで、私の子供時代とは全く違う時代を生きてきたんですよね。
成田では来年から小中学校に1人1台タブレットが配布され、今の中2の子が大学受験の際には「情報」が受験科目に加わります。
経済を考えればますますIT系などテクノロジーを進化させていく分野を進めていかざるを得ないのは事実ですが、一方で、生き方や暮らしを考えると、第一次産業に関わる体験や仕事も大切だという認識も広がっていると思います。
私は日本の学校教育は「凄いな~、素晴らしいな~」と思います。
もちろん問題点もありますが、それは学校ではなく社会の問題が縮図となっているだけで、やっぱり「凄いな~」と思うのです。
しかし、どうしても公教育というのは「国が求める人材を育てる」という前提があります。
1960年~70年代の高度経済成長時代には中学生には「簿記」などが必修科目でした。
それは国が「これからは経済の時代」として、必修にしたからです。
当時は中卒後、すぐ会社員として即戦力にしないといけない、という教育思想だったわけです。
しかし、子供が爆発的に増えてきて、人手が余る、という事がわかった時に、「子供達を大学に行かす」と国が決めて、大学進学を推奨しました。
もちろん、「エリートを養成する」という意味でも大学進学を国策で勧めました。
企業も「大卒」というのを一つの担保としたので、受験戦争が始まりました。
でもですね、今って違うんですよ。
この前、NHKの引きこもりのドラマをみて、「良い言葉だな~」と思ったのが、就職活動をしていた子が「学校の時は協調性を大事にしなさい、と言われたのに、就職になったら、とたんに個性が無いと言われる。どっちなのよ」って。
そうなんです。
大きな組織で言われた通り動く人を欲する時代はもう終わっていまして、企業側は「個性」を求める時代です。
「個性」というのは、自分の意思でやりたい事を描ける子、描いてやりたいという意欲がある子、その突破力がある子、ある意味ちょっとわがままでも良いから何か特徴を持っている子の方が、仕事の場では使える、と思っているのですね。
でも、中学・高校・親御さんの環境は未だに「テストの点数」第一主義です。
そして「協調性が良い」というのは「内申点の評価項目」なのです。
「ちょっと場を乱すこともあるけど、やりたいことはやり抜くという強みはある。だからその強みをどんどん伸ばしなさい」という教育は、まだ公教育ではそうはされていないと思います。
でも、それも企業側からしては「個性」を求める時代に入っていますし、否が応でも日本の環境が変わってくるので、学校現場も親御さんの意識もあと5年ぐらい経てば変わってくるんでしょうね。
私が2011年の原発事故をきっっかけに、自分の事ばかりを考えて生きてきた事を猛省し、「都市部と暮らし豊かな農村をつなく架け橋を作ろう」と「農村コーディネーター」という仕事を自分で創り、今年で10年目になりました。
あの頃と比べると時代はどんどん変わってきています。
あと30年で団塊世代のほとんどがお亡くなりになり、私のような団塊ジュニアは老人になり、日本を動かすのは「デジタルネイティブ」であり「環境問題ネイティブ」の今の若者達になります。
日本に人口のボリュームゾーンの大きな山2つが現場から退くわけですが、一方で少子化で子供が増えていない分、日本の人口は約半分になります。
日本国内は十分大きなマーケットだったのですが、それが無くなることで、一部の会社を抜かすと、頑張っても経済成長というのはあり得ない時代がもうそこに来ています。
都市部の大きな会社のサラリーマンとして働く人は1/3ぐらいになるでしょうし、会社を求める人の半分は非正規雇用という立場の人が増えるでしょう。今でさえ、1/3が非正規雇用と言われていますからね。
一方で、今まで以上に自然災害が多発する時代になります。
そう考えると、これから大人になる子供達へ何を学ぶ事として提示すべきかが見えて来ると思っています。
それを提示出来る立場に自分はいるとも思えている今日この頃です。
と、長々と書きましたが、「みんなの農村ネットワーク」を設立して10年目を無事に迎える事が出来ました。
これもみなさまの支えがあってのことです。有り難うございます
ただ、私もご多分に漏れず、コロナの影響で今までのような仕事が出来なくなってきております
飲食店さんほど大変ではありませんが、それにしてもこのまま、という訳にはいかない状況になってきています。
まあ、環境が変わることは自分が変わるきっかけにもなるので、来年はまた違うチャレンジをしていきたいと思います。
とはいえ、まだ今年も半月ぐらい残っています。
とにもかくにも、みなさん、健康第一で過ごして参りましょう。
健康が一番です。
元気な体があれば、人間、生きていけるのですから