半農半X?土のある農的生活を求めて

「生きることは生活すること」をモットーに都会から田舎へ移り住み、農村の魅力を満喫しながら、日々、人生を楽しく耕しています

本:教えることの復権

2014年10月06日 | 素敵な本
土曜日の幼稚園の場所取りの時間を中心に、「教えることの復権」という本を読みました。

これは、教育界では有名な国語教師「大村はま」さんと、そのかつての教え子で今は教育者となっている苅谷夫妻の対談を中心にまとめられている面白い本です。

何が面白いかと言うと、まず、大村はまさんの「教え子」の苅谷さんの奥さんが、当時、大村はまさんの授業をどう感じたのか?思い出しながらかつての恩師に語り、あの時私はこう思ったのですが、そういった狙いはあったのですか?どういった準備をされていたのですか?といった質問をし、大村はまさんが「あ~そうだったわね。あれはね・・・」と当時のことを思い返しながら、どれだけの思いをもって教えていたか、どれだけの準備をしていたか、どういった意図があってそういった授業にしたのか、などを語る、という前半。

また、現在、大学の教授である旦那さんの苅谷さんが、この本が出版された当時の「総合学習・・・いわゆるゆとり教育」について触れながら、教えることというのは、ただ生徒に「考えなさい」と任せてしまうのは教育ではなく、何をどこまで学ばせるか、教える側が「目当て」とそこに導くための教える側の「意図」があり、どこまで達したか「評価」が必要であり、そのための「準備」をきちんとするべきだというお話を、かつての大村はまさんの授業を振り返ったり、自分の授業のやり方を述べながら意見を述べている後半もなかなか面白いです。



前半は、何より、かつての教え子が大人になってから、恩師と議論することで、先生の当時の狙いや思いを聞くというところが面白いです。
大村はまさんは、「単元学習」というものを考え出し、それこそ寝る間を惜しみながら、1つ1つの単元ごとに参考資料を集めたり、時にはチラシや広告を集めたりしながら、1つ1つの単元に「学習の目当て」と補助となる「手引き」を手書きで作り、必要に応じて小冊子1つ分を手書きで写して(当時はコピーが無かったため)、教科書はあくまで教材の1つで、「どこまで学ばせるかの目当て」とそれを達成させるための「手引き」を作っていたという、凄い先生です。

テストも「あくまで学習の評価をするもの」ということで、1つ1つの問題で「これは◎◎ちゃんがひっかかるかも」「これは○○君が間違うかも」といった1人1人の顔を思い浮かべながら、評価の判断としてテストを作るという徹底ふり。

こういったことをした背景には「戦争で何もかもなくなってしまい、戦後の日本の復興にあたって、自分が教師という職を全うさせてもらえるならば、教えるということで、その復興に貢献したい」という時代背景とそこに一度は何もかも無くした1人の強い決意があったからだそうです。


「愛なんてものじゃないわ。もちろん生徒は可愛いけど、そういったものではなくて、教育に対しての決意がそうさせてのだと思う」と言っています。

大村はまさんの決意と授業に対する徹底した準備を当時の生徒との記憶が交差する議論は、「大村はまさんの授業のレベル」「授業に対する姿勢」「教えることの意義」「教え方」がとても伝わってくるし、それは感動するレベルでした。


また、後半の旦那さんの苅谷さんは、自分の体験を踏まえながら、「子供に何も目当ても手引きも無く考えさせるのは、それは教えるということでは無いのでは?」ということを大村はまさんと語りあっています。

確かに大村はまさんの授業、苅谷さんの授業の中身を見ると、「あ~、1つ1つ目当てをもって、そこに達するためにプログラムを組んで、そしてそこにどれだけ到達したかチェック(評価)するのが、授業だよな~」と思ってしまいます。

国語については、漢字のように書けたかどうか、でチェックする以外は、評価は難しいと思います。


ただ、先生が「この単元では、こういったことがわかってもらいたい」という思いを自分で持って授業を構成すると、確かに評価は出来なくははないとは思います。もちろん、この本で書いてあるのは現在の学校で単元ごとに共通で決まっている目当てとは、また違った次元のお話で、あくまで「教師が生徒の顔をみながら、生徒1人1人のわかっていること、わかっていないことを考えながら、授業を作りこむ」という前提での目当てと評価なのですが。

過去の偉大な先生の1人である、大村はまさんのような教え方を今の時代では、そうは出来る時代ではありません。
その上で、最後の締めくくりで苅谷さんは、「教えることで、生徒が学ぶ喜びを体験し、笑顔になる。それを感じてまた頑張ろうと思う」、それが教えることの復権の解答の1つではないか、と提言しています。

私が読むより、教える現場の先生が読むと刺激的な本だと思います。


でも一般人の私も十分面白く読めました

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