半農半X?土のある農的生活を求めて

「生きることは生活すること」をモットーに都会から田舎へ移り住み、農村の魅力を満喫しながら、日々、人生を楽しく耕しています

自然栽培・自然農法と有機栽培

2016年05月25日 | 自分の時間
私は「朝採り野菜ボックス」というのをやっているのですが、そこのお客さんにレターを毎回入れています。

今週は「自然栽培」の認知度が急速に高まっていっていることを受け、レターを書いたのですが、それを以下、肉付けして書きますね。


最近、自然栽培に関心を持つ人が増えてきたな~と思います。

自然栽培の本が普通に本に出回るようになったし、身近なお友達家族から「自然栽培をやってみたいと思うのですが、どう思いますか?」と聞かれることもあり、また知り合いの農家さんのところに「自然栽培で作らないか?」とか「卸してもらえませんか?」といった声がかかる、なんて話を良く聞くようになってきたのです。


 自然栽培については、私も自分で畑をやるようになった最初の1~2年は強い関心があり、実践していました。
特に「徳野雅仁さん」という方の本はとてもわかりやすく、愛読していたのを思い出します

また有機農業より自然栽培の方が良いと思っていました。

例えば「動物性たい肥」は良くない、なんていう情報を頭に入れると、最初の頃は「そうなんだ」と頭でっかちになっていたものです

しかし、いろいろこの業界を知り、自分でも畑をやっていると考え方が変わってきました。

結局、「有機」「自然」という区別は人間が勝手にしていることであって、「理屈や言い方の問題に過ぎない」、ということが分かったからです。


その考えを、以下かいつまんでまとめてみます。

自然栽培、あるいは自然農法と言われるものには歴史があります。

古くは「わら一本の革命」の福岡正信さんから始まりました。
この福岡正信さんは世界的には「泥団子」で有名な方です。
日本では自然農法に関心がある人や哲学に関心がある人しか知りませんが、結構有名な方で、砂漠の緑化にあれこれ苦労していたところ「自然に任せればいい」ということで、いろいろな種類の種を混ぜ込んだ泥団子を使うことで、その気候、土地にあった種が発芽して根付く、というので成果を出しました。

もともとは、農とは何か?いきつくところ自然にゆだねればいいのだ、ということで、麦、レンゲ、稲を直播して自然に任せる、という「自然農法」を編み出した方ですが、農家というより哲学者みたいな人です。

また、世界救世教の岡田茂吉さんも「自然農法」を広めました。
その後、川口由一さんが実践し、最近では「奇跡のりんご」の木村さんという流れがあります。


私は「奇跡のりんご」の木村秋則さんにも会ったことがありますし、木村さんのお話も大好きです。
木村さんは「農業はそもそも人の手がかかるから自然ではない。だから自然農法とは言わず自然栽培なんです」と言っています。

木村さんが「自然栽培」という言葉を有名にした立役者ですね。

でも、それが広まった理由の1つには、「有機の野菜は腐るけど、自然の野菜は枯れる」と言った、現状の否定も入っているからです。
実際はそんなことは無いのですけどね。。。

とにかく、自然農法、自然栽培というのは「聞こえが良い」んです。


この20年ぐらいで、「農薬や化学肥料は良くない」といったイメージが広がり、「無農薬栽培」「無農薬野菜」「有機野菜」という言葉が乱立したので収拾をつけようと国が動いた(実際は、外圧なのですが)ので、「有機JAS法」が制定されて、「有機農業」「有機栽培野菜」という言葉が広がりました。

しかし、さらに「有機栽培より自然に任せた方がもっと良い」といったイメージがここ最近、広がってきているのです。


でも、実際はそんな簡単な話じゃないんですね。

まず、「自然農法」「自然栽培」といった言葉があやふやです。

火曜日に「2年前に自然栽培を始めた」という方にあったのですが、その方の発言にびっくりしたのです。
その方は、最初の2年は無肥料、不耕起でやっていたのですが、収量が上がらないというので、肥料もあげ、耕してもいるというのです。

「それって、自然栽培じゃなくて普通の無農薬栽培、有機農業のことじゃない」と思ったので、て私が「有機農業に近い自然栽培ですね」と言うと「えっ、違いますよ。有機農業は農薬を使いますよね?私は使わないのです」と答えたのです。

いわゆる「有機農業」というのは、一般的にはたい肥を入れ、土作りをし、化学農薬や化学肥料を使わない農業です。

ただ、あいまいなので国が有機JAS法で「有機栽培野菜」の定義を作り、その栽培方法の条件の1つに「指定農薬」として、例えば油とか硫黄といったものは使ってよい、という定めをしたのです。

たぶん、この方は「有機農業は指定農薬は使っているから自然じゃない」と思っているのでしょうが、「有機栽培野菜」というのは、厳密に管理がされていて、例えば基本的には種への農薬も不可、苗の化学肥料も不可といったように、化学物質に関していえば、もっとも規制されている農法で作られた野菜です。

例えば、農薬を使った畑に入ったトラクターは使っちゃいけない、なんていう規制もあるんですね。

また、結構業界では有名なナチュラルハーモニーという自然農法・自然栽培の草分け的存在の販社の社員だった方の話も聞きましたが「トップは信じていますが、現場はそんな甘いものじゃないんですよ。家庭菜園に毛が生えたような野菜とかがほとんどなんです」という愚痴を聞いたことがあります。

神崎町で不耕起田んぼの岩澤先生にも少しお世話になったことありますが、実際は手で草を取らないと田んぼの草が抑えれることはできない、ということを知りました。

木村さんが始めた自然栽培のショップが東京にできたのですが、その店舗責任者の方が私の知り合いの農家を訪ねて野菜を卸して欲しいという相談に来たそうです。

というのも、「自然栽培だとなかなか安定して作られず、またできたとしても農家さんは本当の旬のピークだけしか出してくれない、だから店の8割は有機野菜になってしまっていて、地産地消どころではなく、全国から野菜を取り寄せている状況で、慢性的に品が足りない」というのが現状だそうです。


また、私の経験ですが、自然栽培だろうが有機農業だろうが、現場に行くと、私は「あっ、この人の栽培って、、、」と思う人がいるのです。
結局は行きつくところは人柄だというのが私の結論です。
人柄が育て方にそのまま反映されているんですね。


有機農業、自然栽培、自然農法、いろいろな言い方がありますが、農家さんはそれぞれが「信念」を持っているので、決して間違ったものは1つも無いと思います。

結局は、その人の人生の経験、その人が使った畑で実践された結果なんですよね。


そして、買う側、食べる側に立つと、「有機」だろうが「自然」だろうが、結局は実態は現場に行って触れてみないとわからない、というのが私の経験上の考えです。


ただ、大きな話でいえば、本当に良いものであれば広く普及しているはずです。

それが広がらないのは経済合理性に合わないから、つまり農業としては成り立たないからです。

有機農業についても、要するに「昔からやっていた農業」であり「昔から今まで継続していた農業」であるから、あえて「有機」という必要も本来はないのですよね。

本来、土に還る作物を収奪するのだから、その分はたい肥などで土に取った分を還すこと。消費者が「おいしい」と言うような品種や育て方をすること。

病気や虫に食べられないよう健康に育つ環境を整え、安定的に収穫ができるようにすること。

それを実現できている時点で、それは自然ではないかもしれませんが、自然な状態よりも健康に野菜が育っている証拠なのかもしれません。

木村さんも言っていますが、そもそも人間の都合に合わせて食べ物を収穫しようというのが「農業」である以上、それが全くの自然の状態で成り立つことはあり得ないのですから。


ちなみに、私個人の意見としては、自然栽培は「家庭菜園」としては面白いですよ
私の畑は、ほぼ「自然栽培」です。
草もいっぱい生えているし、手が回らないからほとんど耕していませんからね

コメント
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