駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

有り難くないお中元

2012年07月14日 | 医療

      

 病診連携は開院時から22年やっており、別に目新しいことではないが、最近では官民挙げて病診連携と喧しい。ここで病診連携の現実をお知らせして、賢い受診をお願いしておこう。

 昨日の午後は患者数は十六名で多くはなかったのだが、入院が必要な方が四時過ぎに二名来院され気忙しい思いをした。八十代の男性と七十代の女性で、お二人共数日前から殆ど食事が取れていない状態だった。

 男性の家族は食べないからと全く食事を与えていなかった。爺さんは舌も乾き蚊の泣くような声で漸く返事をする。女性の家族は何とかして食べさせようと頑張ったが、一口二口で拒否されてしまうとのことだった。婆さんはうつろな目をして「食べたくない」。の一点張りだ。連休前なので、通院や往診での対応が難しく入院させることになったのだが、病院は土日祭日の三連休前で外来も終わっており、午後の日直医を頼らなければならない。

 院長や副院長はどんどんいつでも患者を送ってくださいと言うけれども、連休前の駆け込みで忙しい末端の救急外来は大歓迎ムードではないのだ。他人がしていると滑稽に見えるが、自分も受話器を持ったままで「宜しくお願いします」。と何度も頭を下げていた。頭を下げるとそれが声に表れるのか、どうぞと受けてくれほっとした。

 病院と医院の連携は対等だろうというのは建前で、病院勤務の経験がある医院の医師は救急外来の混雑の大変さが分かっているだけに、どうしてもどうぞ宜しくと頭を下げてしまう。このお中元の時期、鰺の干物ならよいが、「A先生、又干物(脱水の子供や老人)を送ってきたわよ」。と看護師達が話していたのが三十年後も耳に残っているのだ

 連休前はぎりぎりまで様子を見たり頑張ったりせず、昼前に受診するようにお願いしたい。

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