梅雨が明け夏の日差しが降り注いでいるが蝉の声にもう一つ元気がない。十年くらい前までは朝中学校の脇を通ると猛烈な蝉の声で頭がくらくらしたのだが、数年前から騒がしいなくらいでがんがんと耳に響くことはなくなった。以前にも書いたのだが、聴力が弱ったのか、本当に蝉の声が小さくなったあるいは数が減ったのかよく分からない。
しずけさや岩にしみいる蝉の声
斎藤茂吉がこれはアブラゼミだと書いて論争が起き、実証的に立石寺に赴きニイニイゼミということになったらしい。しかし、何度も書くが私は茂吉支持でアブラゼミだと感じる。頭がくらくらするような音声こそ炎天下岩にしみいる。尤も、アブラゼミでもニイニイゼミでもない、ヒグラシだと主張する人も居るようで、さまざまな連想を呼ぶ句だ。もとより結論などでない論争だが、美的感覚には大いにかかわる問題で、アブラゼミというのが宇宙的感覚と書いておきたい。