駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

固有の誤差を知る

2008年11月19日 | 診療
 何かを測定したり予想する時には必ず誤差が生じる。ファイブナイン(99.999%)とか、ものすごい精度を誇っても、誤差なしとはゆかない。
 まあ臨床医学の世界では疾患によって異なるが、95%程度の確かさが妥当な線?で、これを99%まで高めるには患者さんの痛み(懐を含め)を伴う検査が必要になる。
 臨床医の大事な仕事の一つに予後(病気の経過と結末)を見極めることがある。数多くの末期の患者さん、癌や老衰、を診てきた。本当の終末になると家族にあと何日くらいの寿命かを告げなければならない。私はやや希望的に長めに告げる傾向があるようだ。あと一週間くらいと告げて、数日で亡くなるようなことがよくある。死期を予想するのは非常に難しいのだが、私は家族の希望に引っ張られるのかどうも長目に予想してしまう。傾向が分かっているのだから、修正ができそうだが、なかなか難しく今もある程度修正できた程度だ。
 これは人間に由来する偏りで、天体観測などでも観測者に固有の誤差の原因となる偏りがあることが知られている。機器そのものの持つ偏りもあり、銃の照準などもそれを考慮すると聞いている。
 自分の持つ偏りを知ることは臨床医には非常に大切なことで、何時総合病院へ送るか、どちらの薬を使うかなど、日々数多い判断を下す時、結論を出す前に一息入れて見直す手がかりの一つになる。そして、これは、大きな声では言いにくいのが、一人一人の医師が上手くいかなかった自らの経験から身に付けてゆくものだ。
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