駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

穏やかな朝に

2016年07月13日 | 小考

       

 今朝は薄日が差しているが比較的涼しく、鳥の声が気持ちの良い朝だと言っているように聞こえた。微かに蝉の声も聞こえる。地球の運行に滞りはないようだ。

 然るに地表では人が何やら騒がしく慌ただしく動き、こうしてゆったりと時間の流れを感じる機会は減った。テレビ、ラジオ、インターネットで発信すれば、瞬時に世界に伝わる。人間の感覚を変容させた一番のものは情報通信の変化だろう。果たして今の若い人も、試験勉強の一環としてではなく、自らの感覚として清少納言の春は曙を肯うことができるだろうか。こうしたつかの間を味わう感覚が無いと、大切なものを見失う気がする。

 人間は年を取れば取るほど、変化について行けなくなるし、遺伝子レベルで変化するには何十世代も掛かる。畢竟、生まれ育つ中で身に付けた感覚を縁とせざるを得ない。自分の仕事に関して言えば、日進月歩の医療技術のただ中でも問診の重要さは失われておらず、最前線で働く老医にも活躍の場が残されている。臨床の奥は深く、何十年やっても未だ麓の感じがするが、患者との会話の中に手がかりを捜す毎日だ。

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