駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

介護の相互作用

2011年01月24日 | 医療

 

 介護は身体だけでなく心にも負担がかかり重労働である。最近は所謂老老介護が多く、88歳の爺さんを83歳の婆さんが面倒を見てるような例は多い。個体差はあるけれども腰が曲がり始めた婆さんと身体は不自由でも口うるさい爺さんのような組み合わせがよくある。

 傍から見ていると気難しい人をよくこまめに面倒を見られるなあと感心するのだが、婆さんばかりに負担が掛かって可哀相に見えて微妙に違うのが夫婦の面白いところだ。実は婆さんがある程度元気なのは爺さんを面倒見ようという覚悟だか、愛情だか、義務感だかよくわからないが、使命感のようなものがつっかい棒というかエネルギー源になっているのだ。

 中には、口はうるさくても身体は不自由のため遂に主導権は妻側に移り、爺さんをコントロールできる楽しさ?が出て来たように見える婆さんも居る。

 例外はあるけれども、七十代までだと爺さんを送って、やれやれと羽を伸ばして何年も否数十年も元気に余生を楽しまれる方も多いのだが、さすが八十代だと面倒を見る対象が居なくなって、つっかい棒が外れたか、急に認知が始まったり、歩行が覚束なくなる婆さんが多いという印象がある。

 思うに難儀なようなことでも、仕事と云うかやらなければならないことがあると人はどこからか活力が出てくるものらしい。だから婆さんは大変そうに見えても、そのことによって元気で居られるという側面もあるのだ。

 勿論、だから負担を掛けてもよいと言っているわけではない。

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6 コメント

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Unknown (cake)
2011-01-24 13:31:16
一見やっかいな仕事に見えても、自分が必要とされているのは、幸せなのかも知れません。
愛情の有無は判りませんが、口うるさい爺様の言葉も、案外上手に聞き流しているのでしょう。

随分と昔になりますが、若い人にアンケートを取った事があります。将来誰に介護して貰いたいかでは、男性は大方が奥様や娘さんでした。自分が介護側に廻ることなど、これっぽちも考えていないのが印象的でした。
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多分そう (arz2bee)
2011-01-24 17:56:27
 必要とされていると感じると人は元気が出るのかも知れません。
 男性に介護に廻る頻度は五分の一以下と思います。駄目な人も居ますが、やられる方は本当にきっちりと介護をされます。そうした人は几帳面な方が多いようです。
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本質的なもの (柳居子)
2011-01-24 19:46:43
 男性は仕事を離れると、完全余生モードになる人が多いようですが、女性は幾つになっても其の歳なりの現役の仕事があるので、心構えとか、使命感の様なものが 本質的に男性より色濃く残るのではと思います。しかし老々介護は、見ていて辛く思う事も有りますね。
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女性の仕事 (arz2bee)
2011-01-24 20:17:01
 女性は家庭と家族が役割的な仕事と云うとクレームがつくかもしれませんが、そういうところがあると思います。
 老老介護で大変なのは夫が大柄で妻が小柄な時です。
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介護の違い (Mrs.W)
2011-01-25 03:41:05
日本では義務感、伝統的な考えで、
介護は家族が看るものと言う意識ですが、
コチラは違いますね。
お金を出せば、ホテルの様な養老院も有りです。
昨年里帰りした時に思ったのですが、
もっと手軽に街の機関を利用出来たらと感じました。
ま、家の父は頑固ですから、
「拒否」も有りでしたけど。(笑)
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文化の違い (arz2bee)
2011-01-25 09:00:57
 かなりデイケア介護施設の利用は進んでいますが基本は未だ家庭での介護ですね。施設の充実度、費用の問題、感覚の違い。背景は複雑です。
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