駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

救急車に乗る

2010年02月22日 | 診療
 あなたは救急車に乗ったことがあるだろうか。ほとんどの人はないだろう。私は何度も乗ったことがある。
 救急車は年に四、五回呼ぶのだが、よほど患者が重症でない限り、診療に差し支えるので同乗は容赦してもらっている。それでも十回に一回くらいは患者が重症のため、同乗せざるを得ない。今日は暇でもう少しで終診だなあと診察室でぼんやりしていたら、急に受付がざわつき仮死状態の爺さんが担ぎ込まれてきた。昼飯を食べようとしていたら、崩れ落ちたとのこと。意識が無く呼吸も微かだ。手首の脈は触知しない。頸動脈の拍動は触れる。ショック状態だ。医院でできることは限られているので、直ぐ百十九番に電話する。
 診察をすると全身に浮腫のある後期高齢者。呼びかけに反応無く呼吸が弱く浅い、四肢冷感はなく心拍動は80くらいで不整はない、麻痺はなさそう。血圧は60/、血糖は145。浮腫んでいて血圧が低いので血管確保が難しい。
 N病院に前立腺癌で通院中とのことで、電話して救急の受け入れをお願いする。「どうぞ」というありがたい返事。そうこうするうち、7,8分で救急車が到着。血圧が70に上がり、呼びかけに微かに応答するようになる。早速、救急車に乗せさあ出発と思いきや、なんだかいろいろ無線連絡が必要らしく交信をしている、直ぐに出発しないのでイライラする。どうもだんだん搬送手続きが煩雑になっていくらしい、貴重な一分を使う。
 一般車だと20分くらいの病院に5、6分で着いた。さすが救急車、といっても信号で徐行急発進の繰り返し、その上一般車を避けるために蛇行するので結構揺れる。同乗医師は患者を診るどころではなく、取っ手に捕まりずり落ちないように座っているだけ、下手に動けば酔ってしまいそうだ。救急隊員は慣れたもので揺れながら血圧を測定器のスイッチを押したりしている。病院に着く頃には血圧は80まで上昇、呼びかけに便が出そうと答えるまで回復してきた。
 今日の救急担当医は二十台後半の研修医(上級医はどこかに待機しているのだろう)、失礼ながら研修医が多少頼りなくてもベテラン看護婦が三人居れば心配ない。あちこちから手が出、患者に声掛けしながら点滴採血心電図と準備が整って行く。「胸の写真も撮ろうか」と云えば、すぐ看護婦が放射線技師に電話しあっという間に技師が装置と共に現れる。私の出る幕はないので、懐かしい病院の動きを感知しながらお礼を言って帰途に付く帰路に就いた。
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