駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

紐付きと目にはさやかに見えねども

2008年09月18日 | 世の中
 医学は日進月歩で、医師はいつも新しい知識を取り入れなければならない。どういうわけか医学の教科書や雑誌には病態診断のことは詳しく記載されるが治療薬のことは微細には解説されない傾向がある。同類の薬はひとまとめに解説されてしまう。 
 車に例えればコンパクトカー、スポーツカー、RVというようにまとめて解説されるわけだ。実際には同じコンパクトカーでもメーカーによって細かい差があるように、薬効が同種と分類される高血圧の薬でも、例えばカルシウム拮抗剤と分類される十数種類の高血圧の薬には個々に微妙な違いがあり、メーカーは違いを強調して自社製品を売り込もうとする。セールスが売り込むだけでは、医師はなかなか納得信用せず、簡単には売り上げが伸びない。そこで各薬品メーカーは高血圧の勉強会や研究会などを後援して、微妙に自社製品の売り込みを図る。微妙にと言うのは露骨な自社製品の売り込みでなく、できるだけ客観的なデータを元にして、最新の高血圧の治療で自社製品に言及して貰ったり、勉強会のあとに情報交換会と称する立食会を提供して、メーカー名、薬品名とセールスの顔をそれとなく売り込む戦略のことだ。
 こうした講演会は頻繁に開かれ、医師会主催の勉強会より多いくらいだ。医師には最新の知識を一流の講師(ほとんどが著名な大学教授)から得て、しかも美味しい食事とタクシー券が付いているので一石二鳥の会なのだ。勿論、随所に後援メーカー寄りの内容があるが、それは織り込み済みで理解すればよいのでほとんど問題にならない。 
 果たしてこれを接待というのだろうか。接待とは感じないが特定の薬品の売り込みを受けたとは心の隅に感ずる。私が公務員であれば接待と言われてもやむを得ないとも思う。なぜなら、私はセールスマンではないが、直接売り込みをしなくても、顔見知りになることと食事の提供したことはやがてボディブロウのように効いてくるのを知っているからだ。

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