脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

アルツハイマー型認知症が進行するスピードは?

2011年07月17日 | 二段階方式って?

北海道のS保健師さんから、ケースの相談がありました。

「地元のドクターに相談したら、認知症が進行したので、精神科受診ということですが・・・
H21年の検査と比較してみると、MMSの結果からも通常の認知症の進行とは違うパタンが読み取れます・・・」

「生活面から見ると、6月7日ころよりおかしな言動が目だつようになったのです」
・ボーとしていて、朝昼の時間がわからない。
・食事をとったことを忘れ、何度も確認する。
・ところが食事内容や尋ねに行ったことを覚えていたりする。
・パジャマのままで、着替えない。
・別の日には着替えて公民館に忘れ物を取りに行ったり、買い物に行ったりする。
・トイレのふたを開けずに排尿してしまう。
・居眠りが目立つようになった。
・ここ数日、鍵穴とずれた場所に鍵を入れようとする。

今日は、富士花鳥園でのスナップ(6/13)
ベゴニア大きいのが雄花、ひっそりと小さいのが雌花!2011_0613_092600p1000043 2011_0613_092900p1000045  

このように日より」、急におかしくなるアルツハイマー型認知症はありません。
もちろん、今まで徘徊はしなかったけれども、初めて山狩りをしてもらうはめになったとか、今まで排便の失敗はなかったのにとうとう・・・というように重度症状を
日に初めてしめすことは当然あります。その時には、その症状に先立って、もう少し軽い症状を長期にわたって示しているものです。2011_0613_092700p1000044

徘徊ならば、
よく知っている場所に行くのに迷う。(小ボケ)
危なっかしくて、1人でバスや電車に乗せられない。(中ボケ)
自宅の近所で迷う。(大ボケ)
自宅なのに帰らなくてはと言い張る。(大ボケ)
このような症状が、小ボケから数えると数年にわたって見られた後に徘徊という事件に到達するのです。

このケースの場合、経過の報告もありました。
「H18年5月、妻が急病死。何でも相談してきたのでショックが大きかったが、くよくよしても仕方がない。いずれ自分もあの世に行くのだから。
ゲートボールを楽しんでいたが、H21年5月から、玉が見えなくなり止めた。
その代わり夏場は毎日パークゴルフへ行き、1時間半も歩く。
老人クラブは毎週参加。
朝の散歩30分。
野菜作り、家事全般。
日記、新聞は毎日。
子どもたちが交代で顔を出してくれる。
近所に住む妻の弟との交流もある」
九輪草2011_0613_101800p1000078                                                                                         

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この町では、「脳のいきいき度チェック」として希望者の方に対して二段階方式を実施しています。
このケースはH21年10月に、二段階方式を実施していました。その時の結果は。MMSが合格。前頭葉テストが不合格という典型的な小ボケの状態でした。
ちなみに30項目問診票では、自己評価が①③⑤⑥⑦⑧/⑭という結果で、これも小ボケ状態ですね。
もちろんここに至った原因は、3年半前に起きた妻の急死が大きく影響していることは明らかです。独居になった後は、上記のように「ナイナイ尽くし」とは言えない生活ぶりではありました。けれども妻相手に二人で仲良く暮らしていた時に比べると、生きる意欲には欠ける、つまり前頭葉が活発に働くような生活ではなかったのでしょう。2011_0613_101900p1000082

食事作りの負担が大きくなって、今年4月より、共生型住まいの場に入居。
入居後は人間関係はじめ生活全般で適応もよく、表情も明るく楽しそうに生活していたそうです。

そして2か月後、急に上記のような症状が出始めたという経過です。

そして、ドクターは、「認知症の進行」と診断されたのです。

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左がH21年10月実施分。右がH23年6月実施分。
確かに右の方が、脳機能が低下していることはよくわかりますね。
・キチンと書けていた文字が不ぞろい。
・文もややおかしい。
・五角形の模写がほとんどできない。
・立方体透視図模写の崩れが激しい。

これを認知症の進行と、エイジングライフ研究所二段階方式では考えません。
理由は
1.あまりにも急激な変化だからです。
ここまで確に生活実態を観察できていたからこそ「急激」と断定できます。たまたま、共生型住まいの場に入所していたことと、二段階方式ではケースを理解するためには脳機能テストとともに生活実態を的確に知るという条件があることを認識されているということでしょう。

2.生活実態に、認知症で見られる全般的な脳機能低下でない症状が起きていること。ギャップが大きい。

3.MMS下位項目を検討すると、老化が加速された場合と低下順が異なっている。想起が1/3できるのに、見当識が不安定。図形の模写が全くできない。模写不能は強く右脳障害を示唆している。

4.脳機能としては中ボケレベル(実際的には小ボケの可能性もある)を保っているのに、30項目問診票で30(大小便を失敗し、後始末ができない)に丸が付いている。

二段階方式では、このように、2011_0613_094300p1000055
・MMSの低下順に問題がある場合。
・脳機能レベルと生活実態にずれがある場合。
・あまりにも急激な変化の場合は、脳機能の老化が加速されたアルツハイマー型認知症とは考えずに、「専門医受診」と判定します。

私たちは、脳の老化が加速されたアルツハイマー型認知症だからこそ、生活改善指導が奏効すると考えていますから、それ以外は「専門医受診」となるのです。
このケースの場合は、正常圧水等症、慢性硬膜下血腫、脳内病変などが考えられますから、精神科ではなく脳外科受診につなげることになります。
そしてその結果は???画像診断で「異常なし」と言われることは、残念ながらとても多いです・・・2011_0613_094200p1000054

「脳腫瘍」

「続ー脳機能は悪いのに生活実態はいい」

「器質と機能ー形と働き」

「器質と機能ー形と働き(続)」

「器質と機能ー形と働き(続々)」


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